44 / 128
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「仁との話」* 寛人side 1/3
しおりを挟むずっと直接、仁と話してみたかった。
仁と話してから―――― その後、彰と話した。
「―――……オレ、敢えて、考えなかったんだよ……よく分かんないけど…… もうあれ以上考えたらまずいって……思ったから」
目の前で、力なく呟いた彰を見つめて、正直迷った。
――――考えさせていいのか、考えさせない方がいいのか。
でも、ここ二年、彰を見てきて、セフレなんてらしくない関係を持って、それを楽しんでる風でもない彰も知ってて。
普段は、昔の彰のまま、楽しそうで明るいんだけれど、ふとした時に、気持ちが落ちる。
それは間違いなく、二年前に、仁を拒絶した、あの時からで。
そもそも、仁を振りほどけない時点で、彰も仁のことが好きなんじゃねえのかと、ずっと思っていた。
でも、オレがそれを言って、オレの影響で一気にそっちにいかれても困るし。自分で気づけばいいのだと思った。
まあ彰の言う通り、弟が可愛すぎて振りほどけないというのも、彰ならありえるかも、とも思わなくもなかったし。
本当に弟としてだけなら、その内、嫌でも終わるし、
もし本当に、お互いが好きなら、それもいいんじゃねえかと本気で思ってたし。だから、どっちに転ぶでも、二人で決めればいいと思ってた。
だけど、彰が、仁を完全に突き放した、と言った日から。
何を言っても、もう頑なで。考えることをすべて拒否して、無理、と言い続けて。
そのくせ、何かが奥に引っかかってるような、言動。
男のセフレの影にも、やっぱり最初は、少しは驚いたし。
今はなしてるだけでも、相当こじらせてるなと、本気で心配になる。
でも、考えないと、このまま、何かをひきずったまま生きてく気がして。
考えさせた方が、いい、と思ったんだけど――――。
「―――……特に問題もないのに、オレ、何がダメで……何がおかしいのかな……」
このセリフを聞いて、ますます迷う。
思ってた以上に、病んでるかもな……どうすっかな。
とりあえず少し考えさせて、そこでもう一度話そうと思い、近々飲もうと伝えて、別れた。
やっぱり、二年前のあの時、もっと、ちゃんと、考えさせれば良かった。
一番近くで話も聞いて、様子がおかしい事も知ってたのに、何でしなかったんだろうと、少し悔やみながら。
電車に乗って、窓際に立って、流れていく景色を眺めていたら。
仁が、さっき、話した事が、思い出された。
◇ ◇ ◇ ◇
彰に席を外させて、仁と二人になると、すぐに、仁が話し出した。
「今から話すこと、彰に話さないでもらいたいんですけど……」
「……内容によるかな。彰を悩ませるようなことなら、隠せないかもしれねえし」
「――――それは多分大丈夫。じゃあ……片桐さんが、納得できないなら、話してくれていいです」
仁の言葉に、更に興味が湧く。
「いいのか? オレを納得させんのとか、大変かもよ?」
「――――あんたを納得させられないなら、所詮オレの考えが至らないってことだから…… もう、彰に話してもらって、終わりになるんでもいいかもって、今思ったから」
潔い感じで言い切る仁に、オレは腕を組んで、背中を椅子にもたれさせた。
「――――じゃあ、オレが、納得したら。彰には、話さない」
「じゃ、それでお願いします」
「……つうか、何でオレにそれ話すの? 別に言わなくても良いことじゃねえか? わざわざ不自然に彰を追い出してまで、さ」
そう聞くと、仁はすごく嫌そうに眉をひそめた。
「……だってあんたのさっきからの態度って――――探ろうとしてるようにしか見えないし。前のこと知ってるって聞いたら、もう話すしかない。なんか、あんたに嘘ついても無駄な気がするから」
「はは。 なんか――――賢明だな。お前」
「嘘とかすぐ見破る人だよね……何で彰、あんたと仲いいの。生徒会とかずっと一緒にやってさ」
「さあ……オレがあいつ、一緒に居てほしかったのかもな。まっすぐで、すぐ人信じて……ほんと「良い奴」で」
そう言うと、仁はオレをまっすぐに見つめた。
「――――それって、友情?」
「完全に、友情」
言い切ると、仁は、肩を竦めて見せる。
「……まあ……彰と居たい気持ちは……嫌ってほど分かるけど」
一度視線を外して、はー、と息をついてから。
仁はまたまっすぐに、オレを見つめた。
「あんたには隠せないと思うから。嘘は、つかないから」
「……ああ」
「――――オレ……」
「――――」
「――――オレは、彰のことが、前と同じ意味ですげえ好き、で」
「……ああ」
――――諦めては、ない、か……。
まあ……やっぱ、そうか、て感じだけど。
「でも、あの時、何も考えねえで無理やり迫って、すごく困らせて泣かせたし……オレを拒否ったことも、たぶん辛く感じちまってただろうし」
「――――」
「だから、二年間は彰に連絡しないで、もうそれで、ほんとは忘れようと思ってた。勉強とか剣道とか全力でやったし、生徒会をやったのも、彰が頑張ってたことをやりたかったってのもあるけど……何か、自分に出来る限りの事を精一杯したかったっていうか……」
「そんな理由で、生徒会長やったのか? 大変だったろ」
「……まあ…… でも、やることがあった方が、良かったから……」
「――――奇特な奴だな……」
「……あと、何人か女の子と本気で付き合ってみたりもしたけど……でも……結局、ダメだった。好きになれなくて。他の男は、完全に考えるのすら無理だったし。いつも、彰に会いたくて。ずっと、変わらなかった」
……なんとなく、そうなんだろうかとは思ってはいたことも、含まれてはいるのだけれど。
――――二年経っても結局、全くブレずにそうなんだと思うと、さすがに少し驚く。
16
お気に入りに追加
654
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
上司と雨宿りしたら、蕩けるほど溺愛されました
藍沢真啓/庚あき
BL
恋人から仕事の残業があるとドタキャンをされた槻宮柚希は、帰宅途中、残業中である筈の恋人が、自分とは違う男性と一緒にラブホテルに入っていくのを目撃してしまう。
愛ではなかったものの好意があった恋人からの裏切りに、強がって別れのメッセージを送ったら、なぜか現れたのは会社の上司でもある嵯峨零一。
すったもんだの末、降り出した雨が勢いを増し、雨宿りの為に入ったのは、恋人が他の男とくぐったラブホテル!?
上司はノンケの筈だし、大丈夫…だよね?
ヤンデレ執着心強い上司×失恋したばかりの部下
甘イチャラブコメです。
上司と雨宿りしたら恋人になりました、のBLバージョンとなりますが、キャラクターの名前、性格、展開等が違います。
そちらも楽しんでいただければ幸いでございます。
また、Fujossyさんのコンテストの参加作品です。
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話
雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。
樋口(27)サラリーマン。
神尾裕二(27)サラリーマン。
佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。
山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。
その子俺にも似てるから、お前と俺の子供だよな?
かかし
BL
会社では平凡で地味な男を貫いている彼であったが、私生活ではその地味な見た目に似合わずなかなかに派手な男であった。
長く続く恋よりも一夜限りの愛を好み、理解力があって楽しめる女性を一番に好んだが、包容力があって甘やかしてくれる年上のイケメン男性にも滅法弱かった。
恋人に関しては片手で数えれる程であったが、一夜限りの相手ならば女性だけカウントしようか、男性だけカウントしようが、両手両足使っても数え切れない程に節操がない男。
(本編一部抜粋)
※男性妊娠モノじゃないです
※人によって不快になる表現があります
※攻め受け共にお互い以外と関係を持っている表現があります
全七話、14,918文字
毎朝7:00に自動更新
倫理観がくちゃくちゃな大人2人による、わちゃわちゃドタバタラブコメディ!
………の、つもりで書いたのですが、どうにも違う気がする。
過去作(二次創作)のセルフリメイクです
もったいない精神
その部屋に残るのは、甘い香りだけ。
ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。
同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。
仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。
一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる