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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「仁との話」* 寛人side 1/3

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 ずっと直接、仁と話してみたかった。

 仁と話してから―――― その後、彰と話した。



「―――……オレ、敢えて、考えなかったんだよ……よく分かんないけど…… もうあれ以上考えたらまずいって……思ったから」


 目の前で、力なく呟いた彰を見つめて、正直迷った。

 ――――考えさせていいのか、考えさせない方がいいのか。

 でも、ここ二年、彰を見てきて、セフレなんてらしくない関係を持って、それを楽しんでる風でもない彰も知ってて。

 普段は、昔の彰のまま、楽しそうで明るいんだけれど、ふとした時に、気持ちが落ちる。
 それは間違いなく、二年前に、仁を拒絶した、あの時からで。

 そもそも、仁を振りほどけない時点で、彰も仁のことが好きなんじゃねえのかと、ずっと思っていた。
 でも、オレがそれを言って、オレの影響で一気にそっちにいかれても困るし。自分で気づけばいいのだと思った。
 まあ彰の言う通り、弟が可愛すぎて振りほどけないというのも、彰ならありえるかも、とも思わなくもなかったし。

 本当に弟としてだけなら、その内、嫌でも終わるし、
 もし本当に、お互いが好きなら、それもいいんじゃねえかと本気で思ってたし。だから、どっちに転ぶでも、二人で決めればいいと思ってた。

 だけど、彰が、仁を完全に突き放した、と言った日から。
 何を言っても、もう頑なで。考えることをすべて拒否して、無理、と言い続けて。
 そのくせ、何かが奥に引っかかってるような、言動。

 男のセフレの影にも、やっぱり最初は、少しは驚いたし。
 今はなしてるだけでも、相当こじらせてるなと、本気で心配になる。


 でも、考えないと、このまま、何かをひきずったまま生きてく気がして。
 考えさせた方が、いい、と思ったんだけど――――。


「―――……特に問題もないのに、オレ、何がダメで……何がおかしいのかな……」


 このセリフを聞いて、ますます迷う。
 思ってた以上に、病んでるかもな……どうすっかな。

 とりあえず少し考えさせて、そこでもう一度話そうと思い、近々飲もうと伝えて、別れた。

 やっぱり、二年前のあの時、もっと、ちゃんと、考えさせれば良かった。
 一番近くで話も聞いて、様子がおかしい事も知ってたのに、何でしなかったんだろうと、少し悔やみながら。

 電車に乗って、窓際に立って、流れていく景色を眺めていたら。
 仁が、さっき、話した事が、思い出された。



◇ ◇ ◇ ◇



 彰に席を外させて、仁と二人になると、すぐに、仁が話し出した。

「今から話すこと、彰に話さないでもらいたいんですけど……」
「……内容によるかな。彰を悩ませるようなことなら、隠せないかもしれねえし」

「――――それは多分大丈夫。じゃあ……片桐さんが、納得できないなら、話してくれていいです」

 仁の言葉に、更に興味が湧く。

「いいのか? オレを納得させんのとか、大変かもよ?」
「――――あんたを納得させられないなら、所詮オレの考えが至らないってことだから…… もう、彰に話してもらって、終わりになるんでもいいかもって、今思ったから」

 潔い感じで言い切る仁に、オレは腕を組んで、背中を椅子にもたれさせた。

「――――じゃあ、オレが、納得したら。彰には、話さない」
「じゃ、それでお願いします」

「……つうか、何でオレにそれ話すの? 別に言わなくても良いことじゃねえか? わざわざ不自然に彰を追い出してまで、さ」

 そう聞くと、仁はすごく嫌そうに眉をひそめた。

「……だってあんたのさっきからの態度って――――探ろうとしてるようにしか見えないし。前のこと知ってるって聞いたら、もう話すしかない。なんか、あんたに嘘ついても無駄な気がするから」

「はは。 なんか――――賢明だな。お前」

「嘘とかすぐ見破る人だよね……何で彰、あんたと仲いいの。生徒会とかずっと一緒にやってさ」

「さあ……オレがあいつ、一緒に居てほしかったのかもな。まっすぐで、すぐ人信じて……ほんと「良い奴」で」

 そう言うと、仁はオレをまっすぐに見つめた。

「――――それって、友情?」
「完全に、友情」

 言い切ると、仁は、肩を竦めて見せる。

「……まあ……彰と居たい気持ちは……嫌ってほど分かるけど」

 一度視線を外して、はー、と息をついてから。
 仁はまたまっすぐに、オレを見つめた。

「あんたには隠せないと思うから。嘘は、つかないから」
「……ああ」

「――――オレ……」
「――――」

「――――オレは、彰のことが、前と同じ意味ですげえ好き、で」
「……ああ」

 ――――諦めては、ない、か……。
 まあ……やっぱ、そうか、て感じだけど。


「でも、あの時、何も考えねえで無理やり迫って、すごく困らせて泣かせたし……オレを拒否ったことも、たぶん辛く感じちまってただろうし」
「――――」

「だから、二年間は彰に連絡しないで、もうそれで、ほんとは忘れようと思ってた。勉強とか剣道とか全力でやったし、生徒会をやったのも、彰が頑張ってたことをやりたかったってのもあるけど……何か、自分に出来る限りの事を精一杯したかったっていうか……」
「そんな理由で、生徒会長やったのか? 大変だったろ」

「……まあ…… でも、やることがあった方が、良かったから……」
「――――奇特な奴だな……」

「……あと、何人か女の子と本気で付き合ってみたりもしたけど……でも……結局、ダメだった。好きになれなくて。他の男は、完全に考えるのすら無理だったし。いつも、彰に会いたくて。ずっと、変わらなかった」


 ……なんとなく、そうなんだろうかとは思ってはいたことも、含まれてはいるのだけれど。

 ――――二年経っても結局、全くブレずにそうなんだと思うと、さすがに少し驚く。






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