43 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「問題ないのに」
しおりを挟む「あのさ、寛人」
「ん?」
「―――……オレ、敢えて、考えなかったんだよ」
「……ああ」
「よく分かんないけど……もうあれ以上考えたらまずいって思ったから」
「……ん」
「……それでも考えろって言う?」
そう聞いたら、寛人は少し黙って、それから、うーん、と唸った。
「彰に任せるけど……でも、二年たってもお前、そんなだろ。考えずに、綺麗に忘れられるならいいけど」
「――――でも、もう今更だし……仁にとっても過去のことだし」
「仁のことは関係ないだろ?お前のことじゃんか」
「そうだけど――――だって考えろって、二年前のことなら、どうしたって仁が絡んでくるじゃんか……」
「まあでも……そこがスタートだろ、今のお前……」
今のオレって――――。
具体的に、どのオレのこと言ってるんだろう。
ずばり聞いて、ずばり言われたくなくて……それを寛人に聞くのは躊躇う。
「……寛人はさ、仁は大丈夫ってさっきから言ってるけどさ……」
「ん」
「……それは、何で?」
二十分位、話しただけだし。
それで、そんなに、仁のこと、全部分かるの?
……大体何を話したんだよ。
じっと寛人を見つめて聞くと。
「――――仁は逃げずにちゃんと考えて、その結果ここに居るんだって分かったから。もう崩れない気がする。まあ、まだ高校卒業したばっかのガキだし、何があるかは分かんねえけど。でもよっぽどのことがない限り、あのまま行くんじゃねえかな」
それを聞きながら、再会してからの仁を、思い浮かべる。
「……仁が来た時に話してくれた通りにさ……今オレ達ちゃんと兄弟なんだよ。仲良くやってるし」
「――――」
「毎日一緒にご飯作って、バイトも一緒で――――なんか今はずっと一緒にいる気がするけど……でも、仁、違うバイトも始めるし、春休みが明けたら学校も始まるから、そしたら今より離れると思うから……適度な距離で、普通に仲良くやってけると思う」
「まあ…… そうだろうな……」
「今何も、問題ないんだよ」
「――――」
言ってから、オレはため息をついた。
「―――……特に問題もないのに、オレ、何がダメで……何がおかしいのかな……」
ずっとあった、モヤモヤしたものと……。
――――向き合わないと……いけないのかな。
仁は、あの時の事を勘違いだったって、言ってるのに。
オレが今から考えたって、何かできるとも思えないのに、今更……?
……正直、すごい、嫌だな……。
はー、とため息をついていると。
しばらく無言だった寛人が、オレをまっすぐ見つめたまま言った。
「今週どっかで飲みにいこうぜ」
「ん……?――――あぁ。 飲みに……ん、分かった。……じゃあ……それまでに少し考えとく……」
「おう。あとで連絡する。日を決めよう」
言いながら、寛人が立ち上がった。
「うん。あ、帰る?」
「ん。夕方からバイト」
「あそっか。わかった」
「そうだ、仁、夕飯の材料は買って帰るからいいって言ってたぞ」
「……うん、分かった」
その言葉で。
――――仁は、ほんとに普通に寛人と話して、普通に帰ったんだな。
そんな風に思って、少しほっとしながら。
寛人と駅まで一緒に歩いて、別れた。
48
お気に入りに追加
687
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる