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◆Stay with me◆本編「大学生編」

「問題ないのに」

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「あのさ、寛人」
「ん?」

「―――……オレ、敢えて、考えなかったんだよ」
「……ああ」

「よく分かんないけど……もうあれ以上考えたらまずいって思ったから」
「……ん」

「……それでも考えろって言う?」

 そう聞いたら、寛人は少し黙って、それから、うーん、と唸った。

「彰に任せるけど……でも、二年たってもお前、そんなだろ。考えずに、綺麗に忘れられるならいいけど」
「――――でも、もう今更だし……仁にとっても過去のことだし」

「仁のことは関係ないだろ?お前のことじゃんか」

「そうだけど――――だって考えろって、二年前のことなら、どうしたって仁が絡んでくるじゃんか……」

「まあでも……そこがスタートだろ、今のお前……」

 今のオレって――――。
 具体的に、どのオレのこと言ってるんだろう。

 ずばり聞いて、ずばり言われたくなくて……それを寛人に聞くのは躊躇う。
 
「……寛人はさ、仁は大丈夫ってさっきから言ってるけどさ……」
「ん」

「……それは、何で?」

 二十分位、話しただけだし。
 それで、そんなに、仁のこと、全部分かるの?

 ……大体何を話したんだよ。

 じっと寛人を見つめて聞くと。
 
「――――仁は逃げずにちゃんと考えて、その結果ここに居るんだって分かったから。もう崩れない気がする。まあ、まだ高校卒業したばっかのガキだし、何があるかは分かんねえけど。でもよっぽどのことがない限り、あのまま行くんじゃねえかな」

 それを聞きながら、再会してからの仁を、思い浮かべる。

「……仁が来た時に話してくれた通りにさ……今オレ達ちゃんと兄弟なんだよ。仲良くやってるし」
「――――」

「毎日一緒にご飯作って、バイトも一緒で――――なんか今はずっと一緒にいる気がするけど……でも、仁、違うバイトも始めるし、春休みが明けたら学校も始まるから、そしたら今より離れると思うから……適度な距離で、普通に仲良くやってけると思う」
「まあ…… そうだろうな……」

「今何も、問題ないんだよ」
「――――」

 言ってから、オレはため息をついた。


「―――……特に問題もないのに、オレ、何がダメで……何がおかしいのかな……」


 ずっとあった、モヤモヤしたものと……。

 ――――向き合わないと……いけないのかな。


 仁は、あの時の事を勘違いだったって、言ってるのに。

 オレが今から考えたって、何かできるとも思えないのに、今更……?


 ……正直、すごい、嫌だな……。

 はー、とため息をついていると。
 しばらく無言だった寛人が、オレをまっすぐ見つめたまま言った。


「今週どっかで飲みにいこうぜ」
「ん……?――――あぁ。 飲みに……ん、分かった。……じゃあ……それまでに少し考えとく……」
「おう。あとで連絡する。日を決めよう」

 言いながら、寛人が立ち上がった。

「うん。あ、帰る?」
「ん。夕方からバイト」
「あそっか。わかった」

「そうだ、仁、夕飯の材料は買って帰るからいいって言ってたぞ」
「……うん、分かった」

 その言葉で。
 ――――仁は、ほんとに普通に寛人と話して、普通に帰ったんだな。

 そんな風に思って、少しほっとしながら。
 寛人と駅まで一緒に歩いて、別れた。



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