38 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」
「謎のランチタイム1」
しおりを挟む周りは家族連れで、楽しそう。
なのに、どーして、オレ達三人でご飯……。
……寛人のせいだ。あとで絶対文句言ってやる……。
オレの隣に仁が座って、向かいに寛人が座る。
先に寛人が一人でど真ん中に座ったから、もう、こっち側に仁と二人並ぶしかなかった。
寛人に、二人並べて観察されているみたいな気がして、何だか落ち着かない。
注文してしまうと、メニューを見て時間を潰す事もできないので、思わず、ふぅと小さくため息。
「ドリンク取りにいこ」
仁が言うので、一緒に立ち上がる。
「いいよ。荷物見てるから先行って来いよ」
寛人が言うので、仁と二人で歩き出す。
なんか後ろから見られてる気がして振り返ると、寛人と目が合って、ふ、と笑われる。
……ほんと、何なんだ、寛人。
「――――仁て、寛人とちゃんと喋ったことある?」
「……無い。でも、仁て呼ばれてるけど」
「オレが呼ぶからじゃないかな。小学生ん時から、確かに呼んでた」
「そうなんだ……彰の友達と結構遊んでもらってたけど、片桐さんは記憶ないなー……」
「寛人あんまり公園には居なかったから。仁が遊びに来てたオレの教室とかで、会ってたと思うけど……」
「ふーん……それは覚えてないなー…… ん、ストロー」
ストローを渡されて、受け取りながら、仁を見上げる。
「……寛人と一緒で大丈夫だった?」
「別に。片桐さん自体はすごい人だと思うし」
「……そうなの?」
「二つ前の会長だからさ。いっこ上の会長からも話聞いたし。やってたことも色々すごかった」
「あ、そうなんだ」
あ、そうなんだ。別に、寛人の事、嫌いだったわけじゃないんだ。
良かった。ならいっか。
「――――まあ、色々思うとこはあったけど」
……ん? 今のなに?
仁をぱっと見ると、苦笑して、まーいいや、と歩き始めてしまう。
テーブルに戻ると寛人が立ち上がって飲み物を取りに行く。その隙に、隣に居る仁を見つめた。
「さっきの思うとこって……」
「いや。大丈夫だよ、大したことじゃないから」
「――――」
「あと、彰、ちょっと近い」
「え」
ちょっと詰め寄ってたせいで、確かに距離が近い。
「あ、ごめん……」
少し離れて座り直す。
「謝んなくてもいいんだけど。 あんまり近いと、何か言われそうだし」
「――――」
確かに言われそうだと思うのは、オレは今までの寛人とのやりとりがあるから。
……そこいくと、仁は、何か言われそうなんて、どこから思うんだろ?
やっぱり寛人のこと、警戒してるっぽいのは、昔と変わらない気がする。
「……まだ片桐さんとよく会ってんの?」
「んー……たまに、会うかな」
「ふうん……ほんと仲いいんだね」
まあ。うん。
……仲は、いいかな。
でも、ほんと、こんな意味不明なランチタイムを寄こしてくる、ほんとに、いまだによく分からない奴でもあるのだけど……。
意図が読めなくて、深いため息をついてしまいそうになる。
絶対何かを考えていることは、確かだし……。
寛人が飲み物を持って戻ってきて、目の前に座る。
しばし沈黙。――――それがきつくて、何とか話題を絞り出す。
「寛人、何の研修だったの?」
「ああ――――居酒屋の、接客の研修」
「そんなのもあるんだ」
「うちの居酒屋、接客に超厳しいから」
「うん、それは知ってる。すごい居心地良いもんね、寛人のお店」
何回か行ったけど、接客完璧。店員が皆、酔った人のあしらいもうまくて、すごく感じが良い。
「そのための研修をすげえやってるからな」
「寛人はあれだもんな……酔っぱらいの観察とかで居酒屋バイトなんだもんなー。ほんと、変な理由……」
「酔っ払いっつーか、大人の、観察、な。接客厳しいのも知ってたから、それも良かったし」
「もうそれ以上、人の観察しなくて良いと思う……」
ますます敵わなくなりそうだから。
黙って聞きながら、コーヒーを飲んでる仁に、ふと視線を向ける。
「仁も接客すんだよね。カフェでバイトするんだって。明後日からだっけ?」
「うん」
「へえ。接客のイメージないな、できんの?」
「……愛想笑い、得意だから」
寛人の言葉に、仁はそう返す。
「お前の愛想笑いなんて見た事ねえな」
「必要な時しかしないし」
何か、どうしてこんな感じの、会話しかできないのかなあ。
これから喧嘩でもするのかと、思ってしまう。またまた、オレは、小さくため息……。
寛人は普段から結構口調きついとこもある。偉そうで初めは誤解されるけど、でもすっごく優しくて、面倒見がいい。特に、下には慕われる事のが断然多い。
仁だって、人当たりは良いし、先生とか先輩とかに横柄な態度とったりしないし。むしろ、愛想笑いすらそんなに見た事ない。自然な、笑顔の方が断然、多い。
……のに、何でか、寛人に対しては、なんか、常にこんな感じだった。
「仁、塾ですごい評判いいんだよ」
「……ああ、一緒に働いてんだよな」
「うん。真鍋先生もほめてたよ。飲みこみ早いし、完璧って」
「……そうなの?」
仁が初耳、とばかりにオレに視線を向けてくる。
「うん。今日言ってた」
「……ふーん」
ふーん、とか適当に返しながら、少し、嬉しそう、かな。
表情が緩んでホッとしてたら、寛人が。
「何で、彰と同じとこ行ったわけ?」
と、仁に聞いてきた。
だから……聞き方……。
「真鍋先生が、初めて会った時、誘ったんだって、話したよね?」
咄嗟に、オレが言うと、寛人はちら、とオレを見て、つまらなそうにため息。
「……ああ、そっか。それで彰のサポートから始めたんだっけ」
「うん」
分かってるくせに、そんな風な聞き方しないでほしい。
「なあ……彰の先生姿って、どうだった?」
寛人が、また、仁に視線を向けてそんな風に聞いた。
「……彰の先生――――分かりやすいし、優しいし。良いと思うけど」
「けど?」
「別に。……何が聞きたいのかなーと思って」
ほんとだよ、何が聞きたいんだ、寛人。
仁の言葉に、心の中で激しく同意するオレ。
なんとなく、聞いたらずばりで返ってきて、ろくなことにならない気がするので、言わないけど。
聞いてもないのに、寛人が更に何かを言おうとした時。
「おまたせしましたー」
店員の明るい声が、場を裂いた。
ありがとう、と思うような。
この話はさっさと片づけてしまいたかったような……複雑な気持ちに襲われる。
「とりあえず食おうぜ」
寛人がそんな風に言って、食べ始めてる。
「いただきます」
一応言ったけど、なんだか楽しい食事ではなくて。
大きなため息をつきたいけれど、それは我慢して、オレも食べ始めた。
48
「StayWithMe」を読んでくださって、ありがとうございます。
よろしければ、お気に入り登録&応援感想(好き♡とかでも全然OKです♡)を
よろしくお願いします。
よろしければ、お気に入り登録&応援感想(好き♡とかでも全然OKです♡)を
よろしくお願いします。
お気に入りに追加
697
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる