上 下
10 / 128
◆Stay with me◆「高校生編」

「わからない」*彰

しおりを挟む



 仁と少し話して、そのままになったまま、また時が経った。
 麻友と別れた事について、ようやく誰にも何も言われなくなってきた頃。
 寛人に、いきなり、言われた。

「仁のこと、どーした?」
「――――」

 お昼休み、食事を食べ終わって、ぼんやりしてた時。
 あれから一度も、その話、してこなかったのに。

「……何で今?」

「いや。今ちょうど他に誰も居ないし。思い出したから」
「……あんまり、二人になるタイミングがないから…… 変わってない」

「あの後は、話した?」
「……少し話したけど」

「……キスされた?」
「………」

「されたら、ちゃんと拒んでる?」
「…拒んでるけど……」

「拒んでもキスされるとかって。そもそもちゃんと拒んでねえんだと思うけど」
「――――」

 黙ったオレに、寛人は声のトーンを更に低くした。

「……別にさ。ほんとの兄弟じゃねーし。……ていうか、オレ的には、そこもどうでもいいけど。……仁に応えたいなら、そうすりゃいいと思うけど」

「……寛人って、なんか、許容範囲、広すぎない?」

「そうか? ていうか、オレは、お前にあわせてんだけど」
「あわせてる?」

「お前が、そうしたいなら、いいんじゃねえのって言ってんの」
「そうしたいなんて、言ってないじゃん」

「……だってさ、普通嫌だと思うぜ。いくら可愛い弟だって」
「――――」

「お前の、仁に対しての許容範囲が広すぎるんだよ」

 もうなんか、自分が良く分からない部分まで、見透かしてるみたいに話す親友の言葉が痛くて、机にぺちゃんこにつぶれる。

「でも、これに関しては……やっぱり無理だと思う……」
「ふーん……」

「………未来、見えないもん……」
「まあ、言いたいことは分かるけどな」

 深いため息をつく。

「……あ。噂をすれば。彰、下見てみ」
「?」

 窓から見下ろすと、仁が女の子三人に囲まれて歩いていた。
 仁の足は前を向いてて、女子三人の向きは、皆、仁に向かってる。まあ、いつも通り、まとわりつかれてる、て感じかな。

「ほんと、あいつ、モテるな……まあ、モテるか」
「そうだ、ね」

「……なのに、お前がいいって。……よくわかんねーな。良い兄貴でいいじゃんかなあ? そういう対象にしちまうって、何でなんだろうな」
「……オレが聞きたい」

 その瞬間。
 何だか、すごく面倒くさそうな顔をしながら、仁が、急にこっちを振り仰いだ。ばっちり目が合ってしまった。オレと目が合った瞬間。ふ、と仁が笑った。一瞬前まで、ものすごく嫌そうな顔を、してたのに。

 仁のその笑顔を見て、女の子達も、ぱっとこっちを見上げる。思わず、オレは、窓から引っ込んだ。そしてそのまま、机にまた突っ伏す。


「……つかさあ」

 その光景を、すぐ近くで見てた、寛人は。


「……もう諦めて、受け入れれば?」
「それは……無理」

 オレが言うと、寛人はいよいよ首を傾げた。

「何で無理なの? たまたま、親同士が再婚した、他人じゃんか」
「……もう、十年以上も兄弟なんだよ」

「つか、オレには、あいつが、諦めるとは思えないけどな。だって、あいつ、今、視線を感じたとかじゃねーだろ。ここが、彰の教室だから、見たって感じじゃん。いつも見てんのかな? ほんと、執着がすごすぎて、オレには、わからねえなー……」

「……オレにも分かんないよ」

 はあ。
 ほんとに。


 どうして仁は、オレのこと、好きなんて、思うんだろ。

 ただ好きなのと、キスしたりするのとって、
 重ならないよな。

 仁は、オレのことを兄としては、見てなかったってこと?

 もうほんと……分かんないな。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

上司と雨宿りしたら、蕩けるほど溺愛されました

藍沢真啓/庚あき
BL
恋人から仕事の残業があるとドタキャンをされた槻宮柚希は、帰宅途中、残業中である筈の恋人が、自分とは違う男性と一緒にラブホテルに入っていくのを目撃してしまう。 愛ではなかったものの好意があった恋人からの裏切りに、強がって別れのメッセージを送ったら、なぜか現れたのは会社の上司でもある嵯峨零一。 すったもんだの末、降り出した雨が勢いを増し、雨宿りの為に入ったのは、恋人が他の男とくぐったラブホテル!? 上司はノンケの筈だし、大丈夫…だよね? ヤンデレ執着心強い上司×失恋したばかりの部下 甘イチャラブコメです。 上司と雨宿りしたら恋人になりました、のBLバージョンとなりますが、キャラクターの名前、性格、展開等が違います。 そちらも楽しんでいただければ幸いでございます。 また、Fujossyさんのコンテストの参加作品です。

「誕生日前日に世界が始まる」

悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です) 凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^ ほっこり読んでいただけたら♡ 幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡ →書きたくなって番外編に少し続けました。

つぎはぎのよる

伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。 同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

その部屋に残るのは、甘い香りだけ。

ロウバイ
BL
愛を思い出した攻めと愛を諦めた受けです。 同じ大学に通う、ひょんなことから言葉を交わすようになったハジメとシュウ。 仲はどんどん深まり、シュウからの告白を皮切りに同棲するほどにまで関係は進展するが、男女の恋愛とは違い明確な「ゴール」のない二人の関係は、失速していく。 一人家で二人の関係を見つめ悩み続けるシュウとは対照的に、ハジメは毎晩夜の街に出かけ二人の関係から目を背けてしまう…。

処理中です...