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◆Stay with me◆「高校生編」
「始まり」*仁
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「彰が好き。ずっと、好きだった」
高一のある日。
オレは、義理の兄の彰に、そう告げた。
戸惑ってる唇にキスして、好きだと迫った。
◇ ◇ ◇ ◇
あき兄に初めて会った時のこと、オレは覚えていない。
オレ、高橋 仁が三才。
あき兄、倉科 彰が五才の時だったらしい。
オレの母さんと、あき兄のお父さんが再婚を考えていて、オレ達を、初顔合わせさせた。
結局、はしゃぎすぎたオレが眠りに落ちる夕方まで一緒に遊んだと、母さんが今でも笑う。
その後、二人は再婚して、オレは「倉科」姓になった。
兄弟になった最初の頃のことは、全然覚えていない。
でも、覚えている限りずっと昔から――――…あき兄のことが一番好きだった。幼稚園の頃には、一番好きなのはあき兄だと言ってた。それは、覚えてる。
いつも優しい。にっこり笑う顔が好き。
時に、かっこいい兄貴として、守ってくれるところも好き。
とにかく、大好きだった。
小学生の頃にはもう、あき兄のことを可愛いと、思っていた。
離れて生まれた、弟の和己を可愛いと思う気持ちとは、別の気持ち。
自分の知る世界の中で一番、あき兄が可愛いと、思っていた。
優しくて、頭もよくて、運動もできて。カッコいいけど、にこ、と笑ってくれる、可愛い笑顔が何よりも好きだった。
周りの皆があき兄のことが好きで、いつもあき兄の周りには友達がたくさん居た。オレの友達も、あき兄を好きだったし、本当に自慢の兄貴だったと思う。
小学生の途中までは「兄貴が大好き」で済んでいた。
高学年になるにつれ、同級生が、誰が好きかという話で盛り上がっている時に、さすがに兄貴が好きというのはおかしいと、何となく分かってはいたので、 一番可愛いと思う女子の名前を言って周りに合わせた。
そうやって、周りに合わせている内に、いつからか、あれ?と不思議に思った。
皆が女子の名前を言って盛り上がる時に、自分は何で、あき兄、と思うんだろう。何で、無理やり、女子の名前を引っぱり出して合わせる、なんてことをしているんだろう、と。
誰に言われる訳では無かったけれど、成長とともに、自然と分かった。
この好きは隠さないといけない、「好き」なんだ、と。
悩んだまま中学に入った。オレが一年、あき兄は三年。
近すぎるのは避けて、部活は別の部を選んだ。
あき兄は陸上だったので、サッカーにした。
理由は簡単。同じグランドに居られるから。
毎日家でも会うのに、学校で会うと嬉しくて。
面倒見の良い、優等生なあき兄は、生徒会の副会長。何かの集まりがある度に、壇上で生徒会長の手伝いをしていた。
いつも一緒にいる会長に、ものすごく敵対心を持ったりもした。
陸上部に付き合ってる彼女も居て、二人の姿を見かける度にモヤモヤした。
そこでも、いつも、疑問だった。
なんで、オレ、中学に入っても。
本当にいつまでたっても、毎日、あき兄ばかりなんだろう、と。
隠した方がいいと思っているこの想いは、
一体、いつ、消えてくれるんだろう、と。
オレは、モテるみたいで。結構女子に話しかけられて、日々周りに女子が居た。それを、あき兄にも見られていて。
仁はほんとモテるな、なんて言うあき兄の言葉に、焦って反論したりした。
学校ですれ違う時、あき兄は、オレを見て、ふ、と笑って見せる。
友達と居ることが多いので、何も話しかけてこない。
友達の一人が、そんな、あき兄を見て、オレに言った。
「いいなあ、副会長が兄貴で。うちの兄貴なんか、ほんと、うざいぜ? 横暴だし、乱暴だし」
それを聞いて、確かに、
あき兄が兄貴で良かったと、一瞬思ったのだけれど。
兄貴じゃ、どんなに好きでも、どうにもならないから。やっぱり、あき兄が兄貴じゃない方が良かった。
と、その後、強く思ってしまった。
オレの好きは――――……家族を好き、な気持ちじゃない。
でもまだ完全に認めたくはなかった。
だから、告白された女の子と何人か付き合った。それなりに可愛いとは思うし、デートしたりして、楽しいとも思えた。
あき兄のことは、特別に好きではあったけれど――――……。
家族としての、弟としての位置を、大事にもしたかった。
そんなことを色々思いながら、あき兄と一緒の、中学の一年間を過ごした。
高一のある日。
オレは、義理の兄の彰に、そう告げた。
戸惑ってる唇にキスして、好きだと迫った。
◇ ◇ ◇ ◇
あき兄に初めて会った時のこと、オレは覚えていない。
オレ、高橋 仁が三才。
あき兄、倉科 彰が五才の時だったらしい。
オレの母さんと、あき兄のお父さんが再婚を考えていて、オレ達を、初顔合わせさせた。
結局、はしゃぎすぎたオレが眠りに落ちる夕方まで一緒に遊んだと、母さんが今でも笑う。
その後、二人は再婚して、オレは「倉科」姓になった。
兄弟になった最初の頃のことは、全然覚えていない。
でも、覚えている限りずっと昔から――――…あき兄のことが一番好きだった。幼稚園の頃には、一番好きなのはあき兄だと言ってた。それは、覚えてる。
いつも優しい。にっこり笑う顔が好き。
時に、かっこいい兄貴として、守ってくれるところも好き。
とにかく、大好きだった。
小学生の頃にはもう、あき兄のことを可愛いと、思っていた。
離れて生まれた、弟の和己を可愛いと思う気持ちとは、別の気持ち。
自分の知る世界の中で一番、あき兄が可愛いと、思っていた。
優しくて、頭もよくて、運動もできて。カッコいいけど、にこ、と笑ってくれる、可愛い笑顔が何よりも好きだった。
周りの皆があき兄のことが好きで、いつもあき兄の周りには友達がたくさん居た。オレの友達も、あき兄を好きだったし、本当に自慢の兄貴だったと思う。
小学生の途中までは「兄貴が大好き」で済んでいた。
高学年になるにつれ、同級生が、誰が好きかという話で盛り上がっている時に、さすがに兄貴が好きというのはおかしいと、何となく分かってはいたので、 一番可愛いと思う女子の名前を言って周りに合わせた。
そうやって、周りに合わせている内に、いつからか、あれ?と不思議に思った。
皆が女子の名前を言って盛り上がる時に、自分は何で、あき兄、と思うんだろう。何で、無理やり、女子の名前を引っぱり出して合わせる、なんてことをしているんだろう、と。
誰に言われる訳では無かったけれど、成長とともに、自然と分かった。
この好きは隠さないといけない、「好き」なんだ、と。
悩んだまま中学に入った。オレが一年、あき兄は三年。
近すぎるのは避けて、部活は別の部を選んだ。
あき兄は陸上だったので、サッカーにした。
理由は簡単。同じグランドに居られるから。
毎日家でも会うのに、学校で会うと嬉しくて。
面倒見の良い、優等生なあき兄は、生徒会の副会長。何かの集まりがある度に、壇上で生徒会長の手伝いをしていた。
いつも一緒にいる会長に、ものすごく敵対心を持ったりもした。
陸上部に付き合ってる彼女も居て、二人の姿を見かける度にモヤモヤした。
そこでも、いつも、疑問だった。
なんで、オレ、中学に入っても。
本当にいつまでたっても、毎日、あき兄ばかりなんだろう、と。
隠した方がいいと思っているこの想いは、
一体、いつ、消えてくれるんだろう、と。
オレは、モテるみたいで。結構女子に話しかけられて、日々周りに女子が居た。それを、あき兄にも見られていて。
仁はほんとモテるな、なんて言うあき兄の言葉に、焦って反論したりした。
学校ですれ違う時、あき兄は、オレを見て、ふ、と笑って見せる。
友達と居ることが多いので、何も話しかけてこない。
友達の一人が、そんな、あき兄を見て、オレに言った。
「いいなあ、副会長が兄貴で。うちの兄貴なんか、ほんと、うざいぜ? 横暴だし、乱暴だし」
それを聞いて、確かに、
あき兄が兄貴で良かったと、一瞬思ったのだけれど。
兄貴じゃ、どんなに好きでも、どうにもならないから。やっぱり、あき兄が兄貴じゃない方が良かった。
と、その後、強く思ってしまった。
オレの好きは――――……家族を好き、な気持ちじゃない。
でもまだ完全に認めたくはなかった。
だから、告白された女の子と何人か付き合った。それなりに可愛いとは思うし、デートしたりして、楽しいとも思えた。
あき兄のことは、特別に好きではあったけれど――――……。
家族としての、弟としての位置を、大事にもしたかった。
そんなことを色々思いながら、あき兄と一緒の、中学の一年間を過ごした。
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