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◆Stay with me◆「高校生編」
「覚悟」*彰
しおりを挟むどうしよう。いつ話そう。 夕方からずっと、和己が居る。
仁はさっき道場から帰ってきて、風呂中。いつもだと、そのまま夕飯を食べに行く。そしたらこのまま遊び終えて、もう和己も寝ちゃうし、この部屋で仁とは話せないかな……。
「……」
一応勉強はしてるのだけれど。全然集中できない。
「――――ねーねー……あき兄?」
「え? どした?」
「なんで今日、そんなチラチラ見んの?」
「……見てる?」
「うん、見てる。……ゲームの音、うるさい?」
「全然大丈夫。気にしなくていいよ」
「んー……オレ、二十一時まで、下でゲームしてくる。ごめんね、あき兄」
可愛い弟は。
何かを察知したのか、ゲーム一式を持って、さっさと階下に降りていった。
何て……話そう。
仁と……これからも、兄弟で居たいって、どう伝えるのが良いんだろ。
正直今日はもう無理かと思って、逆にすこしホッとしていたせいで。
急に、ドキドキしてきた。
どうしよう。
思ったその瞬間。
ドアが開いて、仁が入ってきた。
「あれ……和己は?」
「下で、ゲームするって」
「なんで? 珍しい」
「……オレの勉強の、邪魔になるって思ったみたい」
「ますます珍しいけど」
髪の毛の雫を拭き取りながら、仁が、少し笑った。
「仁、夕飯は?」
「今から食ってくる」
「……ん」
「そうだ、彰」
仁が部屋の中に入ってきて、自分の机に置いてある鞄から辞書を取った。
「辞書、ありがと。助かった」
「あ、うん」
机に置かれた辞書を手に取って、頷く。
「……彰って、やっぱりいつもあいつと居るんだな」
「……」
「……頭撫でられたりして、いっつもあんな?」
「……」
寛人の言ってたことが、脳裏によみがえる。
あー……これ、大丈夫じゃなかったのか……。
寛人はすごいな……ていうか。……オレが、鈍いのか。
……オレが何にも、分かってなかったから……。
こんな事になっちゃったのかな……。
「いつもじゃないよ……今日はたまたま……」
「……ふーん」
少し、何か言いたげではあるけれど、何も言わない仁。
今しか、話せない。 和己が戻る前に。
覚悟を決めて、彰は、くる、と振り返って、仁をまっすぐに見つめた。
「……仁、ごはん前に悪いんだけどさ。和己が居ない間に話して、いい?」
「……何?」
「……お前が言ってること……なんだけど」
「……彰が好きって?」
突き刺さるみたいな、視線。
「……うん。それ、なんだけど……考えたんだけど……」
「……」
「……オレ……仁の事は……弟、としか、見れないから」
「……」
「だから……諦めて、くれないかな……。オレ……普通の兄弟で居たい」
そう言って、仁の答えを待つ。
数秒して。
「……嘘」
「え?」
「彰がオレを、弟だとしか思ってないなんて、嘘だろ」
「……嘘じゃない……」
何、嘘って。
……嘘なんかじゃ、ないし。
仁が、近づいてこようとするので、がたんと椅子から立ち上がった。
「……今日は、触んないで。……オレ、ちゃんと、話したいから」
「……」
苛ついたみたいな仁の顔。
……ダメかも。話せないかも。
「……落ち着いて話せないなら……また今度にする」
この部屋を出てしまおうと思って、ドアに向かうけれど。
ドアを開ける手前で、仁に腕を掴まれた。
「っ」
「……逃げんなよ」
ドアに、背を、押し付けられた。
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