【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里

文字の大きさ
上 下
20 / 130
◆Stay with me◆本編「大学生編」

「もう意識しない」

しおりを挟む



 遠くで何か音楽が流れてる。
 あれ――……電話……?

 気付いたら、ダイニングテーブルに伏せていて、目の前のスマホが、鳴っていた。
 とっさに通話ボタンを押して、耳にあてる。

「はい――――……もしもし……」

 声が、ちゃんと出てない。

『……彰? 寝てたか?』
「あ、寛人?」

 あれ――――……仁は……?
 シャワー浴びに行って……まだ出てきてない……?

 目を擦りつつ、見回したら、仁がソファに座って水を飲んでた。

「あ……寛人、ごめん――――……十分位したら、掛け直してもいい?」
『あぁ。オレもう家帰ったから。いつでもいいから』
「うん」

 そこで電話をいったん切った。

「仁、ごめん。オレ寝てたね。 いつ出てきた?」
「ついさっき。水飲んでから起こそうと思ってた」

「じゃあ少しか、寝てたの……」

 背筋を伸ばしながら立ち上がって、仁を振り返る。

「仁、ドライヤーあるとこ、教えるから、来て」
「ん」

 ……なんかすごくだるいなー……。

 仁が後からついてきたのを確認して、洗面台の引き出しに入ってるドライヤーを渡した。

「ここに入ってるから」
「ん。ありがと」

 狭い洗面所で。
 ドアのとこに立ってドライヤーを受け取った仁。
 間近で立つと、余計に身長差、体格差があることに気付く。

「なんか――――……仁、すっごいでかくなった?」
「うん。まあ。背も伸びたし、結構鍛えてたし」
「そっか」

 なんだか、あんまり近いと――――……。 
 少し、圧迫感を感じる。
 
 二年前の仁とは違うと分かってても。 
 なかなか、そんな簡単に、この感覚は、忘れ去れない、というのを、実感。

 少し焦ったのを隠したくて、「乾かしておいで」と言いながら、仁の横をすり抜けた。

 ――――…意識、しない。する意味は、ない。

 ついさっき、仁の話を聞くまでは、仁が、もしかしたらまだ僅かでもオレの事を引きずってるかもしれない、と思ってた。もし、気持ちを引きずってなくても、あんな状態で兄貴が逃げるように出ていったって事に、傷ついたままかもしれない、とも、思ってた。

 だから。
 色んな意味で、罪悪感を感じてたし。
 置いてきた事も、ずっと、つらかった。

 何も言わない、何も言葉が聞こえない、仁の夢も、
 そういう自分の気持ちが、夢に出てきていたんだと思ってる。

 仁がもう、オレのことを吹っ切ってるんだから、オレはもう、何も気にする必要はない。もう違うと分かったなら、きっともうこれから先、徐々に忘れられるはず。

 仁と普通に暮らし続けられれば。
 兄と弟として、仲良く、居られるようになるはず。

 自分の中の気持ちを、そんな風に整理しながらリビングに戻ると、テーブルの上のスマホを手に取った。



しおりを挟む
「StayWithMe」を読んでくださって、ありがとうございます。
よろしければ、お気に入り登録&応援感想(好き♡とかでも全然OKです♡)を
よろしくお願いします。
感想 59

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...