【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里

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◆Stay with me◆「高校生編」

「拒絶」*彰

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「……っ……」

 ……キスする、とか……。
 それだけだって、いけない、と思ってた。


 ……だめだ、オレ……。
 仁が愛しくて……全然ちゃんと、拒めなくて。

 こんなのおかしい、こんなの、普通じゃない、
 父さん母さん達に後ろめたいとか……。

 もう、死ぬほどに色々思ってたのに。


 仁の事…… 愛しすぎて……とか……。
 一番やばいのは、オレな気がする。


 そもそも、オレ、なんでキス、拒めない?
 寛人にも何度も言われた。普通はもっと拒否するって。
 寛人のキスは…… 全力で、拒否れたのに。


 仁にも今、同じこと、言われた。

 ……ほんとは……自分でだって、思ってた。

 ……仁が、可愛くてって、なんだよ、それ。

 高校生になった和己にキスされても、オレ、おんなじこと、言えるか?
 ……そんなの、絶対無理。


 じゃあ、仁は、なんでいいんだよ……。
 そこはもう……。

 それ以上、深く考えては、いけない気がする。


「…………仁……っ!」


 その瞬間。 仁の体を、初めて本気で、引き離した。


「……っ……あきら……?」

 傷ついたみたいな、仁の顔に、胸が締め付けられるみたいに痛い。


「もう……これ以上は、絶対、無理」
「……あき」

「お前のものになんて、なれない……っ」


 言った瞬間。感情が溢れすぎて……。
 我慢してた、涙が、あふれ落ちた。

 ただ、切なくて…… 痛くて。
 止められなかった。 
 けど構わず、続けた。


「……っ……絶対、なれない……!」


 そんなことしたら……。
 仁が、普通に生きていけなくなっちゃうじゃんか。

 オレなんかと、ほんとにそんなことになったら。
 
 幸せな仁の姿が、何も見えない。


 もう……絶対、だめだ。

 ……自分の気持ちは、分からない。

 なんで仁ならいいのかとか、抱き締められて感じる、苦しさも。
 もう何も分からない。

 もう、分からないけど……。
 とにかく、これ以上は、もう、絶対ダメだ。


「オレは、仁のものになんか、絶対、ならない」


 強く言ったオレに、仁は、辛そうに、顔を歪めた。


 胸が痛くて痛くて、 どうしようもないけど……。
 今、この仁を抱き締めちゃ、ダメなんだ。

 自分に言い聞かせるように、強く、ダメだと唱えて。


「絶対に、無理だから。 二度と…… この話は、しないで」
「……」

「今度キス……したら…… 一生、口きかない」
「……」

「オレは お前のこと、弟として……大好きだから」
「……」

「……これで、こういうことは、終わりにしてよ……頼む、から……仁……」

 俯いて、そう言ったら。
 そのまま、仁は、何も言わなくて。


 しばらくして。仁が手を、離した。
 俯いたオレの、視線の先で、仁がその手をぎゅ、と握りしめたのが見えた。



「……それでも……」
「……」


「……彰が無理だとしても、オレは…… 彰しか、好きじゃない」


 仁の言葉が、突き刺さるみたいに、痛い。


「……仁……ごめん……」

「……謝るなよ。オレが彰を好きなだけだから。……彰は、悪くない」


 言われて、切なすぎて、胸が苦しすぎて。
 もう、何も、言葉に出ない。



「……話は分かった。もう、彰には言わないから。……安心して」


 そう言うと、仁は、オレをドアの前から少し離して。
 部屋を、出ていった。


 力が、抜けて。
 その場に、しゃがみこんだ。



 彰が無理でも、彰しか、好きじゃない。
 もう、彰には、言わない。

 仁は、そう言ってた。


 オレしか好きじゃないけど、もうオレには言わない。

 ……それって……また隠したまま、生きてくってこと……?



 涙が、あふれ落ちてくる。


 不意に浮かんだ、ある決意は。
 

 このままここには、居られない。
 もう、それだけ、だった。












◆ ◆ ◆ ◆ ◆

次から、大学生編になります。
ここからは、基本、彰視点になります。
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