【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里

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◆Stay with me◆「高校生編」

「自覚」*仁

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 あき兄が、中学を卒業する日。

 一年生は式の後すぐ帰って良かったのだけれど、オレは門の所に立って、三年生が外に出てくるのを待っていた。式に出席していた保護者達も出てきて、昇降口の周りはすごい人。しばらくそこに立っていたら。

「仁!」

 オレに気付いて、駆け寄ってきたあき兄。
 第二ボタン争奪の儀式がいまだ残っているせいで、全部のボタンを取られた状態。

「一年生は帰ってて良かったのに――――……わざわざ居てくれたの?」
「うん。最後だから」
「ありがとな。 ――――……これで、お前と別の学校になっちゃうな」
「――――……」
「それが一番寂しいかも」

 何の含みもなく、ただ純粋にそんなことを言ったあき兄を――――……。
 オレは、ぎゅ、と抱き締めてしまった。


「うわ…… ちょ ――――……仁?」

 あき兄の戸惑った声。

「彰が弟に抱きしめられてるー」
「兄弟で何してんの」

 あき兄の友達たちが、笑いながらひやかしてくる。
 「ほっとけ」とあき兄は言って、そっとオレの二の腕に手を置いて、少し距離を置いた。

「高校、お前が頑張れば、同じとこ行けるかもだし」

 オレも寂しがってるとでも思ってるんだか、そんな台詞。
 あき兄がそう言うと、周りのあき兄の友達が一斉に笑った。

「彰の高校、超難関校だぞー、ひっでー」
「うちの中学から、生徒会長と彰しか行けなかったじゃんか」

「仁ならできるし。なめんな」

 べーーっと、舌を出して、周りに言い、あき兄はオレに向けて、笑った。

「な?」
「……それは分かんないけど。…卒業、おめでと」

 全然、めでたくねえけど。
 ずっと、ここに居てほしかったけど。

 学校で、会えなくなってしまう。
 ――――……家で、朝と夜しか、会えなくなる。

 心の中で愚痴りながら、何とか言ったおめでとうの言葉に、あき兄は、物凄く嬉しそうに笑った。


「ありがとな」


 ぽんぽん。

 すでに、あき兄を追い越して、少し高い位置にあるオレの頭を、優しく撫でる。


「彰ー、写真とろーぜ」

 あき兄の友達たちが、あき兄を呼ぶ。

「あ、うん! 仁、オレ、行ってくる」
「ん。先に帰ってる」 .
「ありがとな」

 綺麗に笑って、手を振って。 
 くるっとオレに背を向けて、あき兄を待ってる何人かの中に、走って行った。

 その背中を見ながら――――……。


 湧き上がる、焦燥感。

 オレは、その時、自分の中の感情を思い知った。
 あき兄に対する気持ちを、恋愛感情だと、初めてちゃんと認めてしまった。


 何の淀みもない、澄んだ明るい瞳と、笑顔。


 抱き締めて、キスしたい。

 誰の所にも、行かせたくない。


 強く――――……そう思ってしまった。
 もうそれ以上、自分をごまかすことが、出来ない位に。


 ただ、そんな想いを本人にぶつけることは、とてもじゃないけど出来る訳が無かった。

 あき兄の居なくなった中学では、サッカーと勉強にひたすら打ち込むと共に、日々強くなる感情を、女の子と付き合うことで紛らわせた。

 告白してくれた子と、二年と三年の時に一人ずつ付き合ってみた。

 三年の時の彼女とは、体の関係も持った。女の子にも普通に反応するのは分かって、安心したりもした。女の子は抱けるし、その行為を気持ちいいとも思えた。

 ただ、心が焼かれるみたいに恋しいと思うのは、ずっと、あき兄だけで。

 他の子をそう思おうとしても――――……無理だった。

 他の男の体を見ても、全く何とも思わないし、行為を想像しただけで萎えるので、あき兄以外の男は対象外、というのは自認した。

 同じ部屋で、あき兄が、全く意識せず着替えてたりすると。

 ――――…あまりに自分が、やばくて。怖くて。

 本気で、カウンセリングとかを受けた方が良いのかとも、思った。
 けれど、何と相談すれば良いのか。

 兄貴だけを、愛しすぎてて、自分が、怖い。

 他人にそう伝えるのか。

 そんなヤバいことを、この世の誰にも、言ってはいけない気がして、結局は行けなかったけれど、行くべきかも相当悩んだ。


 やっててよかったと心底思ったのは、小学一年の時から続けていた剣道。

 中学に入っても、時間があると、道場に通った。

 雑念を振り切るにはもってこいだった。道場に居る間だけでも、気持ちを鎮められて、何とか、保てた。
 


 あまり側に居てはいけないのではないかと、思いながらも、どうしてもあき兄と一緒の高校に入りたくて、あき兄の高校を目指した。

 超難関校と言われているだけあって、かなり必死で勉強して、やっとのことで合格した時は、あき兄も、物凄く褒めてくれて。


 一緒の高校に行けることを、すごく喜んで、くれた。






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