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第2章
◇本気かな?*圭
しおりを挟む「多分全員でやる必要はないんだろうけど。同期多いしさ」
「うん。そっか」
「先輩達に、歴代なにしてたか聞いた方が良いかもな。ちらっとマジック大会した代があるっていうのは聞いたんだけど」
「マジック―!なんかオシャレ! 腹踊り全然違った」
はは、と高瀬は笑って、オレを見つめる。
「でも、ちょっとほんとに織田のは見たい」
絶対可愛いよね、なんて笑うけど。
死んでも高瀬に見せたくないオレは、ぷるぷる首を振る。
「良かった、腹踊りとかやる世代じゃなくて……昔の人達はやってたんだよね?」
「ん、聞くもんな、映画とかでは見たことある気がするし」
「は―良かった」
心底ホッ。
「あっ! 高瀬が超カッコいい服を着てファッションショーみたいなのやるっていうのはどうでしょう?」
「――――……」
不意に思いついたものを提案してみたら、高瀬が珍しく真顔でオレを見る。
あはは、と笑ってしまいながら。
「女子はみんなキャーキャー盛り上がるからもう、つかみはそれでオッケイにして、後の皆は、バックダンサーみたいな、面白い仮装して踊るとか」
高瀬の真顔にめげず、思いつくままずっとしゃべっていたら、高瀬が、口元に手を当てて、クッと笑い出した。
「どんな余興なの」
「盛り上がるよ~! 特に女子が悲鳴をあげそうだから」
「織田織田、オレらの会社、女子少ないの忘れてる?」
「あっそうだ! 会社のフロアーとかじゃなかった、うちの会社の子たちかー。七対三、いや……八対二で男子が多いね。無理か」
「無理だろ」
「あっじゃあ、女装しちゃうっていうのは? 可愛くダンスする!」
「――――……」
「高瀬はエスコートするカッコいい役とかで良いよ、女装はオレ達その他大勢がする」
それなら盛り上がるかもしれない。高瀬がカッコいいなら二割の女子も喜ぶし。
これはいい案なのでは。
ウキウキしながら高瀬の答えを待っていると。
「女装ダメ」
「えー、何で―??」
「織田はダメ。他のやつらは何してもいいけど」
「えー………… え?? 何で?」
「可愛いって、狙われたら困るから」
「――――……」
予想外の心配に、目が点状態のオレ。
何ならちょっと気持ちわるいと退かれるくらいの女装でノリノリでやろうかと思っていたのだけれど。
高瀬、これは本気なのかな??
マジで言ってるのかな??
「えと……」
高瀬をじっと見つめて、その真意を計りながら。
「本気で、心配してますか……?」
そう聞いてみると。
「もちろん」
「……」
「本気」
「えーーー?」
思わずぽかんと口を開けてしまうと、高瀬がクスクス笑った。
「まあどんな女装するかによるけど……ほんとに可愛いやつはダメだよ」
「オレ、ほんとに可愛いには、ならないと思うんだけど」
「なっちゃうと思うから。んーやっぱ、女装は却下で」
「……なんかあれだね、宴会の余興って、大変だね」
色んな意味で、なかなか決まらなそうな気がしてきた。
「マジックってできるのかなあ?」
できるのか分かんないけど、脱がなくていいやつを考え始めたオレ。
「あとで、同期に連絡してみようか」
「だね、そうしよ。女子も居るし、なんか良いの考えてくれるかもね」
「あと先輩も聞いてみるか」
「ん、だね!」
笑顔で言いつつ。
……高瀬のファッションショーはやりたいなぁ、なんて思ってて、女子がそれで盛り上がって、やろうってなってくれないかなーなんて思ってるのは内緒。
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