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第2章
◇会えて。
しおりを挟む楽しかったボートタイム終了。
最後、先に降りた高瀬が手を出してくれて、その手を取って、ボートから降りた。
そんなんで手を繋いだだけで、超幸せでご機嫌のオレ。
超良い日だなあなんて思う。
「織田、向こう、芝生広そう」
「あ、うんっ」
指さす高瀬の隣に並んで歩き始める。
たくさん人が歩いてる、週末の公園。子供連れが多いかな。恋人同士も多そうだし。たまに、仕事で通ってるだけかなーという人達もいるけど。
なんだか皆、楽しそう。
見上げると、樹の枝の隙間から、太陽の光。空は青くて、空気は爽やかで。
なんか最高。
「あの樹の下、行く?」
「うん!」
いい感じの大きな樹が見える。何組か、シートを敷いてるけど、場所は空いてる。樹のない芝生の真ん中ではバドミントンやキャッチボールをしてる人も居るけど、すごく広いので、全然ぶつかったりもしなそう。
「あとで、キャッチボールしようねっ」
「そうだな……って、キャッチボール、好き?」
「高瀬とできるのが嬉しい」
「……そっか」
ふ、と微笑んで、高瀬はオレと視線を合わせる。
……多分ね。
これ聞こえる人が居たら、皆、何言ってんのって、思うかもしれないけど。
この公園に居る超たくさんの人の中で、高瀬が一番カッコいいと思う……。
あと優しいし。あと、頭も良いし。あと、仕事できるし。
高瀬が一番だと……。
「織田、そっち持って」
「あ、うん!」
ぼー、と考えてたオレは、さっき買ったシートを広げようとしてる高瀬に気づいて、慌ててそのシートの片方を手に取った。
大きく広げて、芝生の上に降ろす。
「風はないから押さえなくて平気かな?」
「座って、靴と荷物置けば大丈夫そうだな」
四隅、脱いだ靴と荷物で押さえて、真ん中に座ると、さっき買ったお弁当を出して、高瀬との真ん中に並べていく。
「高瀬、お茶どうぞ」
「ありがと」
「ん。あ、お箸ある?」
「ん……あぁ、ここ。はい」
「ありがと」
受け取って、ふ、と笑い合う。
こんな風にシートを敷いて、お弁当食べるなんてどれくらいぶりだっけ。
大学の時そうしたかなぁ。結構前かも。
「久しぶり、外でこういうの」
「織田は似合う」
「そう? まあ学生時代はしてたかも。高瀬は……あんましてない?」
「バーベキューとかはした記憶あるけど、シート敷いてとか……なんか記憶にないな」
「やってみて、どう?」
じー、と見つめていると、高瀬はぷっと笑う。
「楽しくないなんて言ったら、泣きそうな顔してるけど?」
「泣かないけどー。ちーん、て沈むかも」
「はは。――――楽しいに決まってんじゃん」
とってもいい笑顔で言われて、ぱああ、と心の中、花が咲くみたいな気分。
「良かった。じゃあ、いただきまーす!」
「いただきます」
「なんか取り皿欲しいね」
「これ、使う? 蓋」
「あ、使う」
おかずが入ってた丸い蓋を二人でもって、おかずを摘まんで食べてみる。
「なんかすっごく美味しく感じる……」
「な。外もいいな」
「ねー」
ゆっくり食べながら、青い空を見上げる。
「なんか、オレ、高瀬と会えてよかった」
しみじみ言ってしまって。
は。大げさ? と聞いたら、高瀬は少し考えて、ふ、と笑い出す。
「お弁当外で食べてるくらいで大げさ、だけど――――でも、ほんと。そうだな。オレもそう思う」
返してくれる言葉が、すごく嬉しい。
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