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第2章

◇天職*圭

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 公園について、しばらく池の周りを歩いた。
 天気がいい土曜日、公園は人がたくさん。

 ――――……そんな中でも、なんか高瀬と歩いてると。
 視線が飛んでくる。
 本人は全然気にしてないし、もうスルーが身についてるのかなぁ、それとももう気づかないのかな? 
 すれ違う女の子たちの視線が、ふ、と向かうんだよね。
 まあ、すごーく分かるけど。
 目立つもんなぁ、高瀬。
 華があるって、こういう人のことを言うんだろうなぁと思う。
 好きっていう感情を抜きにしても、なんか目がいっちゃうんだと思う。

「高瀬さ」
「ん?」
「モデルとか、もうやんないの?」
「んん? 今から?」
「ん。なんかもったいないなーって」
「もったいない?」

 高瀬は何だか面白そうな顔で微笑んで、オレを見つめる。

「カッコいい奴っているけど、高瀬みたいに目立つ人って、あんまり居ないからさ」
「目立つ?」
「うん。立ってるだけで、目を引く、ていうか。通ってく人が、高瀬を見てくからさ」
「んー……モデル、ねぇ」

 高瀬が少し考えるそぶりをしながら、ちら、とオレを見やる。

「いいの?」
「ん?」
「オレがモデルやっても、いいの?」
「いいのって……」

 いいのってなんだろ、その質問。
 えーと。

「オレが他の人に見られてて、もし万一すごく人気者になっちゃったりしても、いいの?」
「え」

 ……すごく人気者。
 むむ。今でもそうなのに、いっぱいの人に見られて、超超超人気者の、スターとかになっちゃって、俳優の話が来ちゃったりなんかして、そんでめちゃくちゃキレイな女優さんとかに言い寄られちゃったりして……。
 あわわわ。

「あ、やっぱり……一般人がいいかな……」
「――――……」

「……あ、えーと……別に、信じてないとかじゃないんだけど……」

 えーと、と困っていると、高瀬は、ぷっと笑い出して、オレの肩を抱いて、引き寄せた。

「何想像したの?」
「え。あの……」

 わー、近い―。
 高瀬がめちゃくちゃ楽しそうに笑ってると、すっごく瞳がキラキラしててなんかやたらカッコいいのに可愛く見えてしまうし、しかもこんな外なのに近くて、なんかちょっと焦るし、わーわー。

 内心超じたばたしてるけど、全然離してもらえず、考えてたことを仕方なく話すと、「綺麗な女優さんかぁ……」と呟いた後。
 オレの肩から手を外したと思ったら、ぷ、とまた笑い始めた。

「織田の妄想って、瞬間的に遠くに行くよな?」

 クックッと笑って、そんなことを言う。

 ……まあ確かに、そんなような自覚もあるけれど。
 もう高瀬さんは、笑いすぎ。

「だって、なんか、それっくらいさ」
「んー?」
「万一、とかじゃないと思うんだ」
「何が?」
「万一人気者になったら、じゃなくてさ。始めたら、絶対そうなっちゃうなーと思って」
「……なんか、織田の、オレに対する評価って、いつも高すぎるとは思うんだけど」
「そんなことないよー、だって、高瀬って、ほんと目立つしさ。皆が高瀬のこと見るし。華があるっていうかさ。ただカッコいいじゃないから。そういう仕事したら、もう、天職なんじゃないかなーって」
 
 オレがそう言うと、高瀬は、クスクス笑いながらオレを見つめる。

「オレは嫌で早々にやめたんだから、天職じゃないんだよ。だからしないし。ていうか、オレ、言わなかったっけ、あんまり見られるの好きじゃなかったって」
「うん。言ってた、けど」
「織田だけ、見ててくれればいいよ。オレは織田にだけ見ててほしいし」
「――――……」

 その言葉がオレの中にすとんと届いた時の。
 嬉しい気持ちといったら、もう、高瀬ってば、分かってやってるのかなあ。

「うん!」

 めちゃくちゃ、頷いてしまうと、高瀬は、また楽しそうに笑う。

「見る見る。ずーっと見てるね、ずーっと」
「ん。そーしてて」
「うんうん」

 なんかこんなにカッコイイ人、オレだけが見てるのもったいないなとか思っちゃったんだけど。
 高瀬が、オレにだけ見ててほしいって言うなら、もう。

 オレが皆の分もずーっと見てよっと。
 と。現金すぎるなオレ、と思いながらも、ウキウキ感が半端ない。
 




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