225 / 236
第2章
◇デジャヴュ
しおりを挟む駅ビルについて、男物の服の店が並んでる階を一緒に歩く。
高瀬が少し止まった店を、オレも覗いて顔を見上げた。
「ここ寄る?」
「ん」
高瀬が笑うので、一緒に入ると、高瀬は迷わず、白のセーターを手にとった。
白って珍しいかも。高瀬は、黒っぽい色が多い。それか、寒色系。クールなイメージにぴったりで超カッコいい。あ、あ、でも、白もたまに着てたかも。いいなあ。何着てもカッコイイから、全部似合うなとか考えていると。
高瀬がその白い服を、オレに合わせた。
「え? オレ?」
「これ似合いそうだと思って」
え、オレに似合いそうって思って、ここに寄ることにしたの?
そう思うと、何だかとっても嬉しい。
「似合う??」
「うん。似合う。どう?」
高瀬が合わせてくれるまま、鏡に映った自分を見る。
うん、悪くない、かなあ。
高瀬がオレに似合うって選んでくれるっていうのが、嬉しくて、ふ、と笑うと。高瀬は、オレが気に入ったんだと思ったみたいで。
「好き?」
と聞いてきた。「うん、好き」とすぐ答える。
「試着しなくても平気?」
「うん。セーターとかは大丈夫。パンツは試着するけど。脚の長さがあわない時あるし」
ふふ、と笑うと、高瀬もちょっと笑いながら、オレからセーターを外して、自分の腕にかけた。ん?と高瀬を見ると。
「オレが買ったら、着てくれる?」
「――うん! 着る!」
いいの?とか思ったけど、あんまり優しく笑うから、嬉しくなって、頷いてしまった。
「あ、じゃあオレも、高瀬の服選んで買いたい。良い?」
そう言うと、高瀬はまた、嬉しそうに優しく笑う。
「何色がいいかなあ……」
いつもと違う色もいいなあ。
思い切って、ピンクとか? ……超可愛いかもしれない!
ウキウキになって、ピンクの服を見ていると、高瀬が近寄ってきた。
「それ織田の?」
「え。あの。高瀬の選んでる」
「オレ?」
クスクス笑って、高瀬がオレの持ってたピンクの服を受け取った。自分にあてて、オレを見る。
「……似合う?」
「うん。すごく。可愛い」
思ってたよりも、もっと似合うー。と思ったのだけれど。
可愛いという表現に、高瀬が苦笑い。
「織田なら可愛いけど……」
「高瀬可愛くちゃだめ?」
しょんぼりしたところで、店員さんが近づいてきた。
「いらっしゃいませ」
「あ。ちょうどいいところに」
「はい?」
「ピンク、どう思いますか?」
「ピンクですか」
オレの問いかけに、店員さんが高瀬の方を見て、おお、と思ったらしい。そんな顔をした。
「めちゃくちゃくイケメンさんなので、なんでも似合いますけど……あれですね、もうすこし、トーンを落としたピンクの方が良いかもしれないですね」
「これだと派手ですか?」
「目立つピンクですからね。こちらはお客様のほうがお似合いだと思います。こちらのお客様、普段は、今みたいな色の服を着られてますか?」
「黒とか青とかです」
オレが急いで答えると、「ですね」と、高瀬がクスクス笑いながら、オレを見る。
「それでしたら、まずは……こういう色はどうですか?」
「おお」
確かに、ピンクって感じのオレが選んだのより、少しくすんだピンクの方が、高瀬には合ってる気がする。
「一枚下に白いTシャツを着て、重ね着風にすると、カッコいいですよ」
「……確かに!」
なんだかものすごく似合いすぎて、めちゃくちゃうんうん頷いてしまう。
高瀬はもう、可笑しそうにクスクス笑ってるだけ。
「今は男の方でも、ピンクを取り入れる方結構いらっしゃいますし。お客様なら、モデルみたいに着こなしそうです」
「元モデルさんなんですよ~カッコいいですよね」
思わずウキウキ言ってしまうと、「あ、そうなんですか」と店員さん。道理で、と笑ってくれるので、めっちゃいい人、と笑い合っていると。
「これでいいよ」
高瀬がとても面白そうにオレと店員さんを見ながら、そう言った。
服をお互い買って店を出ると、高瀬が「なんか、浴衣ん時のデジャヴュが……」と言って、しばらく面白そうに笑っていた。
94
お気に入りに追加
1,475
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる