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第2章

◇デジャヴュ

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 駅ビルについて、男物の服の店が並んでる階を一緒に歩く。
 高瀬が少し止まった店を、オレも覗いて顔を見上げた。

「ここ寄る?」
「ん」

 高瀬が笑うので、一緒に入ると、高瀬は迷わず、白のセーターを手にとった。
 白って珍しいかも。高瀬は、黒っぽい色が多い。それか、寒色系。クールなイメージにぴったりで超カッコいい。あ、あ、でも、白もたまに着てたかも。いいなあ。何着てもカッコイイから、全部似合うなとか考えていると。
 高瀬がその白い服を、オレに合わせた。

「え? オレ?」
「これ似合いそうだと思って」

 え、オレに似合いそうって思って、ここに寄ることにしたの?
 そう思うと、何だかとっても嬉しい。

「似合う??」
「うん。似合う。どう?」

 高瀬が合わせてくれるまま、鏡に映った自分を見る。

 うん、悪くない、かなあ。
 高瀬がオレに似合うって選んでくれるっていうのが、嬉しくて、ふ、と笑うと。高瀬は、オレが気に入ったんだと思ったみたいで。

「好き?」
 と聞いてきた。「うん、好き」とすぐ答える。

「試着しなくても平気?」
「うん。セーターとかは大丈夫。パンツは試着するけど。脚の長さがあわない時あるし」
 ふふ、と笑うと、高瀬もちょっと笑いながら、オレからセーターを外して、自分の腕にかけた。ん?と高瀬を見ると。

「オレが買ったら、着てくれる?」
「――うん! 着る!」

 いいの?とか思ったけど、あんまり優しく笑うから、嬉しくなって、頷いてしまった。

「あ、じゃあオレも、高瀬の服選んで買いたい。良い?」

 そう言うと、高瀬はまた、嬉しそうに優しく笑う。

「何色がいいかなあ……」

 いつもと違う色もいいなあ。
 思い切って、ピンクとか? ……超可愛いかもしれない!
 ウキウキになって、ピンクの服を見ていると、高瀬が近寄ってきた。

「それ織田の?」
「え。あの。高瀬の選んでる」
「オレ?」
 クスクス笑って、高瀬がオレの持ってたピンクの服を受け取った。自分にあてて、オレを見る。

「……似合う?」
「うん。すごく。可愛い」

 思ってたよりも、もっと似合うー。と思ったのだけれど。
 可愛いという表現に、高瀬が苦笑い。

「織田なら可愛いけど……」
「高瀬可愛くちゃだめ?」

 しょんぼりしたところで、店員さんが近づいてきた。

「いらっしゃいませ」
「あ。ちょうどいいところに」
「はい?」

「ピンク、どう思いますか?」
「ピンクですか」

 オレの問いかけに、店員さんが高瀬の方を見て、おお、と思ったらしい。そんな顔をした。

「めちゃくちゃくイケメンさんなので、なんでも似合いますけど……あれですね、もうすこし、トーンを落としたピンクの方が良いかもしれないですね」
「これだと派手ですか?」
「目立つピンクですからね。こちらはお客様のほうがお似合いだと思います。こちらのお客様、普段は、今みたいな色の服を着られてますか?」
「黒とか青とかです」
 オレが急いで答えると、「ですね」と、高瀬がクスクス笑いながら、オレを見る。

「それでしたら、まずは……こういう色はどうですか?」
「おお」

 確かに、ピンクって感じのオレが選んだのより、少しくすんだピンクの方が、高瀬には合ってる気がする。

「一枚下に白いTシャツを着て、重ね着風にすると、カッコいいですよ」
「……確かに!」

 なんだかものすごく似合いすぎて、めちゃくちゃうんうん頷いてしまう。
 高瀬はもう、可笑しそうにクスクス笑ってるだけ。

「今は男の方でも、ピンクを取り入れる方結構いらっしゃいますし。お客様なら、モデルみたいに着こなしそうです」
「元モデルさんなんですよ~カッコいいですよね」

 思わずウキウキ言ってしまうと、「あ、そうなんですか」と店員さん。道理で、と笑ってくれるので、めっちゃいい人、と笑い合っていると。

「これでいいよ」

 高瀬がとても面白そうにオレと店員さんを見ながら、そう言った。

 服をお互い買って店を出ると、高瀬が「なんか、浴衣ん時のデジャヴュが……」と言って、しばらく面白そうに笑っていた。





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