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第2章
◇いつもよりも。
しおりを挟む翌朝。
朝ごはんを終えて、一緒に洗いものを済ませた。
窓から外を見ると、すごくいい天気。
「な、高瀬、どこか出かける?」
「ん、いいよ。どこ行きたい?」
「ぶらぶら―と歩きたい。いい天気だし」
「駅の方行く?」
「あ、服も、ちょっと見たい」
「いいよ」
快く頷いてくれて、すぐ出発することになった。
割と広い歩道で、高瀬と並んで歩き始める。
空は青い。白い雲、綺麗。
何だか、空気も冴えてて綺麗な気がする。
スーツ姿をみることの方が多いから、私服はいっつもカッコよくてキラキラして見える。さすがにちょっと気持ち悪いので、その言い方はできないけど。
なんか眩しく見えてしまう。すごいよな、高瀬。オレちょっとは、見慣れてきてる筈なのに。
「高瀬と居るとさ、なんかすっごいウキウキする」
「そう?」
「うん、そう!」
笑顔で頷くと、クスクス笑う高瀬。
「でも、それはオレもだから」
「ほんと?」
ついつい聞いてしまったら、高瀬は、ほんとだよ、と笑う。
「あんまりオレ、ウキウキしては見えない?」
「んー。見えないかなあ。ていうか、高瀬に、ウキウキっていう言葉が似合わなくて、今びっくりした」
「まあ分かる……自分でも思う」
二人で顔を見合わせて、クスクス笑ってしまう。
「オレは? ウキウキして見える?」
じっと高瀬を見つめると、高瀬は可笑しそうに笑って頷く。
「織田は結構いつでもウキウキして見えるけど」
「そう?」
「うん。いつも楽しそうだよ。周りの人もそう思ってると思う」
「んーそうかな。……あ、でもオレ的にはさ、高瀬と居る時は、普段とは全然違うんだよ」
そう言うと、高瀬は、そうなの? と笑って、オレを斜めに見つめてくる。
んー、流し目が。カッコよすぎると、感動しながら。
「何だろ。楽しいっていうのプラスで、ドキドキもしてるから。なんか……余計ウキウキしてる」
「……そっか」
頷いて、クスクス笑う。
「あ、でもそっか。高瀬は、高瀬と居るオレしか見てないから……だからいっつものオレが、いつもだと思ってるんだよね」
「オレが居ないと、いつもの織田じゃない?」
「うーん、同じといったら同じかもだけど……でも、なんかこう……ドキドキしてすっごく楽しいのが、もうちょっと少ないかも……? 分かる?」
「分かるよ」
「あ、分かる?」
分かってくれる? と高瀬を見つめると。
「オレも織田が居ると、楽しいって思うから――――……織田が居ない時のオレより、少しは楽しそうに見えてるかも、と思う」
「オレが居ない時の高瀬はどんななの?」
「んー……オレ基本的に、あんまり興味無さそうで冷めてそう、みたいに言われてたし、まあ、それ言われても、別にそう思われててもいいやと、確かに冷めてる部分もあった。昨日のあいつらだって、会った頃は怖かったとか、なんか好き放題言われるしな」
「クールって感じだね」
「……良い方にとるよな、織田って」
高瀬はそう言って、クスクス笑う。
「無関心とか興味なし、とか、カッコつけてるとか、そっちだったと思うけど」
「カッコつけてるって……もともとカッコいいから、カッコつけてないよね。やっかみだな、きっと。高瀬がカッコよすぎるから」
言いながら絶対そうだろうなー、と思って、ウンウン頷いていると、高瀬は、ぷ、と笑った。
「ほんと、どこまで良い方にとってくれんのかな」
「良い方に取るとかじゃなくて、絶対そうだと思うし」
「そう?」
高瀬はクスクス笑いながら、オレを見つめる。
「織田と居るようになって、笑うことが増えたのは絶対だな」
とか。
高瀬が、めちゃくちゃ嬉しいことを、ぽそ、と言ってくれる。
「ほんとに?」
「ん? ほんとだよ」
「それって、すごく嬉しいかも」
オレはもうとにかく、すっごく、ご機嫌。
高瀬って、オレを嬉しくさせるの、ほんと上手だと思う。
(2023/8/20)
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