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第2章

◇九十九パーセント*圭

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 高瀬と一緒に、オレのマンションに来た。

「そんなに荷物ないと思ってたんだけど……引っ越すってなると、やっぱりそれなりにたくさんだね」
「まあ、そうだよな……」

 二人で、色んな部屋見回しながら、要る家具と捨てる家具を考える。

「収納は結構あるから、服は入ると思うけど……」
「大きいのは、なるべく処分するね。……でも家具はそんなに無いかな。備え付けだから」
「な、ベッドなんだけどさ。どうせ寝ないから、折りたたみの簡易ベッドみたいなのを買う? 誰か来るとき広げれば」
「あ、そうだね。そうする。じゃあベッドも処分だね」
「まとめて色々買取とかしてくれるとこが無いか、後で探してみよ」
「うん」

 頷いてから、ふー、と息をつく。

 引っ越しかぁ。
 ――――……今年の三月に入社前に一人暮らしを始めた時は、考えもしなかったなあ。男を好きになって、一緒に暮らすためにこの部屋を出るとか。


「高瀬ー」
「ん?」

「一緒に暮らすようになってさ」
「ん」

「なんかオレのやなとこあったら、ちゃんと言ってね」
「――――……」

「良く言うじゃん、一緒に暮らし始めたら、何か違うとかさ」

 まっすぐ高瀬を見つめながら言うと、高瀬は、何も言わずにオレをじっと見つめてる。

「なるべく、直すようにするから」
「――――……じゃあ、オレもそーして」

「……うん。分かった」

 ……分かった、とは言ったけど。
 ――――……高瀬に嫌なとこ?? うーん。……高瀬に嫌なとこ……。

 考えながら、じっと高瀬を見つめてしまう。


「何?」

 クスクス笑われて。あは、と笑ってしまう。

「高瀬に嫌なとこなんて、無いかなーって思って」

 言うと、高瀬は、ふ、と笑って。
 「織田おいで」と言われて腕を引かれて、すぽ、と抱き締められた。


「……オレも、そう思ったけど」

 クスクス笑う高瀬の唇が、髪の毛にキスしてる感覚。

「まあ、何かあったら、て話だろ?」
「うん、オレにあったら言ってね。嫌いになる前に」

「……バカだなー、織田。嫌いになるって思ってる?」
「いや。なんか……すっごい嫌なとこがあって、続いたら……」

「あるの? すっごい嫌なとこ」

 高瀬は可笑しそうに笑いながら、オレの顔に触れて、上向かせて見つめてくる。吸い込まれそうな、綺麗な瞳を受けとめて、ちょっと言葉に詰まる。


「――――……」

 ほんとオレは。
 入社式に一目惚れした時のままの気持ちで。

 びっくりする位、好きなままだなあ。


「分かんない。……あったら、言って?」
「……分かったけど――――……」
「……けど?」

 けど、何だろ?
 高瀬の言葉を待っていると。

「プログラムだと、どっか違うと駄目だけどさ」
「……?」

「九十九パーセント好きなら、一パーセント嫌いでも、そんなのどうにでもなるだろ」
「――――……」

「だから、絶対平気」
「――――……」

 そんな風に言って、またすっぽり抱きしめられてしまうけど。

 ……九十九パーセント、好きって。
 今言ってくれたってこと、だよね。


 ……嬉しすぎるんですけど……。

 当の高瀬は、それを言ったことには、気づいてないのではないかなと思うと、余計に嬉しくなる。無意識にそんなこと言ってくれるとか。

「……高瀬」
「ん?」

「……オレ、高瀬、めちゃくちゃ、好き」
「――――……」

 腕の中から見上げて、多分超笑顔で言ったと思う。
 するときょとんとしてオレを見て、それから、ふ、と笑う。


「こっちのセリフだけど」



 そう言って、ゆっくりゆっくり、キスしてくれた。




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