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第2章

◆番外編◆バレンタインデー🍫

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 うちの会社は、去年からバレンタインデーの義理チョコは禁止になった。

 女子社員も大変だし、返すのも大変だしって事でそうなって、誰もそれに特別異議はないみたいだった。

 けど、本命ちょこは別。そこは社員の自由って事で。別に敢えてそう言われてはいないけど、「義理チョコ禁止」とわざわざ「義理」をつけた文面だったことで、社員達は皆、そこはちゃんと分かっている感じ。


 で。高瀬。朝始業前も呼ばれてたし。今昼から帰ってくる間も、声を掛けられて。オレは、先に机に戻って来た。
 けど。呼び出しから戻ってきても、持って帰ってはこないので、断ってはくれているらしい。

 ちょっと嫌。なのはしょうがないよね。

 高瀬はオレのなのにーって思っちゃうから。

 オレが女の子だったら、思いっきり彼女って言いふらしてるのにー。
 とか、アホな考えが浮かぶ。

 ……いや、女の子でも、言いふらしてはないか。
 アホだな。オレ。

「――――……」

 オレから遅れること数分。席に帰ってきた高瀬が、オレを見て。
 ちょっと困った顔をしてる。

「……おかえりー」
「……ん」

 苦笑い。

 別にオレ、気にしてないよ、というのも、なんかわざとらしいし。
 ていうか、周りに先輩達も居るし。言えないけど。

 気にしてないよと言いたいけど、全然気にしてない訳じゃない。
 すごく可愛い子だったりして、そしたら高瀬が興味を引かれたら?とか。
 やっぱり少しは、気になっちゃうし。

 でも、高瀬はオレの事好きって、ずーっと言ってくれてるから、大丈夫だとは思うんだけど、でも、もしかしてめっちゃくちゃ可愛い子だったらー??

 ……って、こんな心配は、もはやエンドレスな気がする。
 だから、気にしないように、するしかない。

 今日は、一緒にご飯食べに行こうねって、一緒に何かケーキでも買いに行こうねって、朝から話してた。

 だから。気にしない。と思いたいんだけど、やっぱりすごく好きだから、気になってしまう。

 ……でも、高瀬がモテるのは今に始まった事じゃないしなぁ。


 ちょっと悶々としつつも、打ち合わせが入ったり、忙しくなったので、次第に何も考えてる暇もなくなって、あっという間に定時を迎えた。

「織田ー、今日打ち合わせ入ったから、あんま進んでないだろ? 残業する?」

 太一先輩に言われて、はい、と頷く。確かに、本来やりたかった仕事が進んでない。

「オレも、1時間くらい残業して、今日は帰る」
「あ、デートですね?」
「うん。まあバレンタインデーにデートしなくても、別にオレは良いんだけどさー」
「良いじゃないですか、ちゃんとその日にデートしたいとか、彼女さん可愛いです」
「そう? でも一昨日も会ってたから、その日でも良くないかな?」
「そーいう事言ってると、嫌われますよ」

「彼女には言わないよ」

 太一先輩が苦笑いで言う。

「そうですよね。あ、とりあえずオレは、めどがつくまで残りますね」
「ん、分かった」

 太一先輩と話してから、パソコンに向き直ると、隣で渡先輩と高瀬も残業になったっぽい雰囲気。そのまま、1時間仕事をして、太一先輩は帰っていった。

 それからしばらくして、渡先輩も帰っていき、お疲れさまーと言って気づくと、もう周り、大分居なくなっていた。


「あれっ。なんか皆今日早くない?」
「まあ渡先輩もデートらしいから」

「そっか」


 ――――……オレ達は、ずっと一緒だから。別に帰んなくてもいいのかな。
 うん。


 そんな風に思っていたら、高瀬が、くすっと笑って。


「織田」
「……ん??」

 高瀬が、机の引き出しから、ある箱を取り出してきて。


「なに??」
「あげる」


 箱からキラキラした包装紙に包まれたものを取り出して。
 少し開いて、包装紙に乗せたまま、オレの口に運んで食べさせてくれた。


「……ちょこれーと?」
「ん。バレンタイン。美味しい?」

「え。バレンタインなの??」
「ん」

「高瀬が買ったの?」
「うん、こないだ買っといた」

「え。オレのために??」

 オレが思わずそう聞いたら。
 高瀬は面白い顔をして。


「――――……他に誰のために買うの、オレ」


 おかしそうにクスクス笑う。


「すっごい美味しいし……めちゃくちゃ、嬉しい」

 言うと、高瀬もふ、と微笑んだ。


「織田、キリつきそう?」
「うん。30分位」

「じゃ、そしたら飯食いに行こう?」
「うん。――――……高瀬?」
「ん?」

「オレ、バレンタインは、用意してなかったんだけど」
「別に全然いーよ。ご飯食べて、デザート買おうって言ってたし。オレはこないだ、たまたまおいしそうだったから買っただけ」


「――――……じゃあホワイトデー用意しよっと」

 オレがそう言うと、高瀬はクスッと笑って、オレをちょいちょい、と手招きした。

「ん?」

 耳を寄せると。


「お礼にあとで、キスしてくれれば、良いよ」
「――――……っっっっ」


 こそ、と囁かれて。
 咄嗟に対処できるわけもなくて、真っ赤。



「……っっっ」

 バレるから!!
 オレが高瀬の事大好きって、絶対バレるからねっっ!!
 

 高瀬をじっと見つめると。
 くっ、と笑い出した高瀬は口元押さえて、声を殺して笑ってるし。


 もう高瀬からめいっぱい顔を逸らしてパソコンに向かった。
 ……ますます笑われたけど。


 ――――……その後頑張って仕事を進ませて一緒に退社してたら、会社のビルを出る所で呼び止められて。
 高瀬またかー、と思ったら、なんとオレ宛のチョコだった。
 何とか断ったんだけど。
 

「こんな時間まで待ってるとか、結構本気だよな……」

 と高瀬が呟いて。
 ちょっとヤキモチ。妬いてくれたみたいで、えへへ、と、喜んでたら。

 チョコに喜んでるんだと勘違いされたみたいで。



 なんかその夜、めちゃくちゃ――――……。
 好きって、言わされて。

 なんか、すごく。高瀬が甘すぎて。 
 なんか、結構。大変だったけど。



 そんな風に、ヤキモチ妬いてくれて、嬉しかったのは。
 ……高瀬には、内緒。










(2022/3/14♡)


ホワイトデーの日に
……バレンタインデー(*´ω`)



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