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第2章
◇今から*圭
しおりを挟む会ってからずっと楽しく遊んでた真宙が何だか段々ぐずりだして。
俊兄の腕に収まって、数分。寝てしまった。
「うわ、可愛いーすぐ寝ちゃった」
「ほんと。遊び疲れたんだな」
俊兄の肩に顔を突っ伏して眠っている真宙を、オレと高瀬で後ろから眺める。
「限界まで遊ぶんだね」
クスクス笑いながらそう言うと、高瀬がぷ、と笑い出した。
「え、何?」
「そっくり、織田」
「え? 真宙の寝顔?」
「ん」
「え、オレこんなに、ほっぺた無いはずだけど」
クスクス笑いながら顔を見合わせていると。
「そろそろ、オレらは帰ろうかな。真宙は車で寝かせて帰ればちょうどいし」
俊兄がそう言った途端。「ええー! やだー!」と、来海が即座に反応した。
「でも、真宙がこれじゃもう遊べないし。来海もそろそろ疲れたんじゃないか? それに、圭ちゃん達も用事があるんだよ」
俊兄が来海にそう言うと、「そうなの?」と、来海がオレ達を見上げて聞いてくる。
「……うん。そうだね」
しゃがんで、来海に目を合わせる。
「また、遊ぼう、来海」
「――――……いつ?」
「いつでもいいよ。土曜日曜は仕事お休みだから」
「……拓ちゃんも遊べる?」
来海が高瀬を見上げると、高瀬も、来海の前にしゃがんでくれて。
「いいよ」
そう言って、高瀬が笑うと、来海はしばらく、幼いながらも色々考えたみたいで。
それから、うん、と頷いた。
「またすぐ遊んでくれるって約束!」
ちっちゃい小指が目の前に出てくる。
オレと、高瀬と指切りをして、それで納得したみたい。
あぁ、可愛いなー。ほんと。
オレがめちゃくちゃ癒されながら。
「俊兄、車まで送るよ」
オレが俊兄に言ってる間に、高瀬が来海に。
「来海ちゃん、手、つなご。 あ、抱っこする?」
そう聞いたら。当然のように、抱っこになってるし。
ひょいと抱かれて、来海は高瀬を見つめてる。
「拓ちゃん、絶対また遊ぼうね」
「ん、良いよ」
クスクス、優しく笑ってる高瀬。
そんな高瀬を見てると、ほんと好きだなぁなんて思ってしまう。
駐車場までの道のり、高瀬に抱っこされて、気持ちよくなってしまったのか。
ふと気づいたら。来海が目を閉じて寝息を立てていた。
「あ、来海、寝てるよ、高瀬―」
「え。本当に? どうりでしゃべらないと思った」
「うん。すごい可愛いー」
2人で、クスクス笑ってしまう。
「オレ、子供寝かせたのは初めてかも」
高瀬が笑いながら言うので、なかなか無いよねえ、なんて話しながら、俊兄の後を歩いて、駐車場の車の所にたどり着いた。
「高瀬君、ごめんな、その後ろのチャイルドシートに来海を乗せてくれる?」
高瀬が頷いて、車に乗り込んで、来海を乗せた。
「ベルトは? こうかな……?」
「うん、多分……俊兄、これでいい?」
ぱち、と固定させて、オレと高瀬は車を降りた。同じように真宙を乗せてた俊兄も一度車を降りて。
「ありがとうな。今度夕飯奢るよ」
「あは、いいよ、昼奢ってもらったし」
「いやいや。どっかで飲もうぜ」
「あー、うん。いいよ」
「高瀬君も良かったら一緒に奢りたいな」
「はい。ぜひ」
ふ、と笑んで、高瀬が頷いてる。
「ほんと助かった、ありがとうな」
俊兄はそう言って、車に乗り込むと、「じゃあな」と笑って、車を発進させていった。
見送って、何となく、ふ、と息を吐く。
「……兄弟の子ってさ」
「うん??」
「似るんだな? なんか織田に似てて可愛かった」
「似てるかな??」
「真宙くんは、そっくり。目の感じとか。来海ちゃんは、素直なとこ、そっくり」
「――――……そう??」
幼い子達にそんなに似てると言われると、ちょっと恥ずかしいけど。
「……なんか、高瀬、ありがとうね」
「ん?」
「2人でデートもしたかったけど。なんか、すごく楽しかった、オレ」
そう言うと、高瀬は、ふ、と笑って。
オレの頭をポンポン、と撫でた。
「オレも楽しかった。それにまだ16時前だし。 今から、2人でデートだろ?」
「――――……うん!」
優しい言葉と笑顔に、嬉しくなって、頷く。
すると、何かますます、高瀬の瞳が緩む気がする。
「まず何したい?」
「んー……とりあえず、お茶飲む?」
「そだな。コーヒー? 紅茶?」
「たまには、紅茶にする?」
「じゃ行こ」
背中に置かれた手に、ぽんぽん、と叩かれる。
「お茶しながら、お揃い、何にするか考えよ」
笑み交じりに言われて、オレは、うん、とまた笑顔で頷いた。
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