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第2章
◇プロポーズ*圭
しおりを挟む「圭、お前どーした?」
「――――……え?」
圭ちゃんという響きに、どこか遠い所に思考が飛んでいたオレは。
俊兄に、思い切り目の前で首を傾げられた。
「大丈夫か?」
「あ、うん……」
いや。大丈夫じゃないかも。
これ、もう一度「圭ちゃん」なんて言われた日には、この場で転がってしまうかもしれない……。
全然大丈夫じゃないけど、「大丈夫」と俊兄に伝えながら、オレは、真宙に連れていかれる高瀬を見つめる。
「なんか、高瀬君って、すげーイイ男じゃねえ?」
「そうなんだよー……」
「――――……」
「――――……」
あ。やば。
「そ、そうなの。うん、すげえモテるしね」
「ふうん。まあ、あれはモテるだろうな」
「うん。昨日も合コンみたいな飲み会に高瀬が遅れてきたら、なんか女の子達がきゃあきゃあ言っててさ」
「へえ」
「あ、でも。今、真宙や来海と一緒に居る高瀬って、普段よりもっと優しいから、多分ものすごく、イイ男に見えるかも」
「ふーん……」
「あれを女の子達が見てたら、皆、結婚してって言うんじないかな。普段会社での高瀬は、もっとクールだよ」
……クールっていうか。
まあカッコよすぎだから、黙ってるとそう見えるので。
――――……いつも優しいかー。うん。
「お前、ほめ過ぎ。大好きすぎだな?」
俊兄はクスクス笑って、高瀬に目を向けてる。
「……うん。そうだね」
否定すんのもおかしいと思って、普通の友達としてでもおかしくないようにと、頑張って話してると。
来海がオレの元に走ってくる。
ぎゅ、と足にしがみついて、抱っこして、という。
「お前と高瀬君が居ると、ふたり、オレに抱っこって言わないな」
俊兄がちょっと寂しそうに苦笑いを浮かべながらそんな風に言うので、オレは来海を抱き上げながら。
「そんなのオレ達がいつも居ないからに決まってるじゃん。物珍しいんだよ」
「そうかなー?」
「そうだよ」
クスクス笑いながらそう返してから、じっとオレを見てる来海に。
「どうしたの?」
と聞くと。
「圭ちゃん、あのね」
「うん」
「来海決めたよ、圭ちゃん」
「うんうん。何を?」
来海はオレをじっと見つめて、その可愛い顔を、笑顔でいっぱいにした。
「拓ちゃんと結婚するって決めたー!」
「ん??」
「良いでしょ?」
「――――……あ、うん。そっか」
えー、と、と思って、俊兄を見上げると。
固まってるし。
でも内心、もっと固まってるのはオレだけどね。
恋敵になっちゃった。
「圭ちゃんとしたかったんだけどね、来海」
「うん?」
「圭ちゃんとは出来ないみたいだから、拓ちゃんとするね」
「そかそか」
ふふ、と笑ってしまう。
まっすぐな瞳が、可愛い。
さすがに来海に嫉妬したりはしないけど。
そっかー、こんなちっちゃい子にも、こんな短期間で結婚したいとか言わせるとか、高瀬ってすごいなあ、なんて、変に感心してしまったりしていると。
真宙を連れて高瀬が戻って来た。
「真宙くんはハンバーグが良いみたい。来海ちゃんは?」
と、結婚宣言を知らない高瀬が、来海にそう聞くと。
「拓ちゃん、来海と結婚しようね」
なんて急にプロポーズしてる。
「来海って超積極的だな……」
なんて、俊兄が娘のプロポーズに、ビックリしてる中。
高瀬も、数秒止まって、それから、オレを見て。
オレが、ぷ、と笑い返していると。
「んー……」
「してくれる?」
「そうだなあ。嬉しいけど……結婚は無理かなあ?」
「どうして?」
来海は、まあ、分かんないで言ってるのか、特にショックそうでもなく、あれ?どうして?と無邪気に聞いてる。
「オレ、すごく好きな人居るから」
「えーそうなのー? 可愛い人ー??」
「ん。すげー可愛い」
「むむむーー。 じゃあ、来海やっぱり、圭ちゃんと結婚しよっと」
まあ、当然だけど分かってない。
オレは、むぎゅ、と抱き付いてる来海を、よしよし、としながら。
て。いうか。
――――……高瀬、今のって。
…………オレのことなのかな……。
……って聞いたら、そろそろ怒られそうな気がするけど。
「来海ちゃんはハンバーグ、どう?」
「いいよー、ハンバーグ!ポテトもー!」
「ハンバーグの横についてるんじゃないかな」
オレが抱っこしてる来海に向けて、なんか優しい口調で話す高瀬が。
近いし。
だめだ。もうオレ。
この場で枕もって転がりたい。
(2022/1/8)
◇ ◇ ◇ ◇
まだ、悶えてます(笑)
……書くの、楽しい(*'ω'*)♡
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