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第2章
◇星空と*圭
しおりを挟む車を駐車場にとめて、プラネタリウムの入り口に到着。
「高瀬、チケット買ってくる、待ってて?」
「ん? オレも」
「今日はオレが出すって言ったじゃん。待ってて」
一緒に来られるとまたさりげなく出されてしまいそうで、高瀬には待ってもらい、オレは1人でチケット売り場に並んだ。
どこで待ってるのかなー、なんて思いながら見回すと、宇宙のイラストを見上げてる高瀬を発見。
あ、居た居た。
――――……なんか、一生懸命上見てて、ちょっと可愛い……。
なんて一瞬思ったのだけれど。
「――――……」
なんか離れて見ると、高瀬の周りだけ別の空間みたいに見える。
ただ立ってるだけなのに、カッコいいし。
すれ違う女の子が、振り返ったり。
後ろ姿だけなのに、なんか目立ってて。
漫画じゃなくて、そんな事ってほんとにあるんだなあ……。
……ていうか、オレの一目惚れだって、もう漫画みたいな一目惚れだったから、もう、何も言えないけど。
「――――……あ」
視線の先で、高瀬が女の子達に話しかけられている。
わー、やっぱり一緒に来れば良かった、とオレが狼狽えた時、高瀬は少しだけ笑みを浮かべて、静かに首を振った。
……あ、なんか、大丈夫そう。
案の定、それ以上女の子達は話しかけられなかったみたいで、高瀬の側を離れていく。
――――……慣れてそう。話しかけられるのも、断るのも。
遊んでたという頃は、受けてたのかなぁ。……好みの女の子だったら。
そもそも高瀬の好みの女の子ってどんなんだろ? そういう話した事あったっけ。綺麗な子っぽいなあ。
……まあ、あんまり話したら、ちょっと落ち込みそうだし、聞くのはやめよーっと。
そもそもオレの好みだって、高瀬には全然関係ないもんなー。
ていうかオレは、もはや、女の子の好みが思い浮かべられないレベルになってるし。
そんな事を考えて、可笑しくなってきてしまう。
ちょうどその時、自分の番になって、大人2枚のチケットを購入。
今月のプラネタリウムの特集のパンフレットを貰って、高瀬の元に戻る。
「おかえり。ありがと、織田」
チケットを受け取りながら、ふ、と笑ってくれる。
「うん。もうすぐ時間だから、中入ろ?」
「ん」
チケットを係の人に渡して、中に入る。
独特の、空間。
真ん中にプラネタリウムの機械が置いてあって、天井がすごく高い。
「どこらへん座るのがいい?」
高瀬に聞かれる。
「どこでも大丈夫だよ。映画みたいに見やすいとかそういうの無いと思う」
「じゃあ一番後ろ」
「うん、いーよ」
高瀬に言われるまま、一番後ろの席に座って、上を見上げる。
高瀬も同じように上向いた後、ふと、オレを見た。
「すごい楽しみ」
「……うん」
どき。と、心臓が弾む。
オレも、高瀬と見れるとか。すごい楽しみだし、嬉しい。
幸せをじーん、と噛みしめていると。
始まりを知らせるアナウンスが流れて、出入り口のドアが閉まった。
非常口の説明が終わると、光っていた非常口のライトも消えて、真っ暗になった。
と思うと太陽が現れて、明るくなって、陽が落ちていって、綺麗な夕陽。街に灯りがついていく映像。それから、空が暗くなって。まばらな星空。
これが東京で見える星空です、と説明がされて。
それから、本当の星空は、という説明とともに、満天の星空。
――――……綺麗。
普段も、こんなに星空見えればいいのに。
「キレイだな」
高瀬が、こそ、と囁いてくる。
暗いけど、すぐ近くの高瀬の顔は見える。
優しい、笑顔。
「ん」
微笑んで頷く。
――――……あ、なんか暗いから。
高瀬に触っても、誰にもバレないかも……。
とか一瞬思ったけど。
いやいや、何言ってるんだ、オレ。
なんかもういつでも触りたいってもう。
星に集中しよう、プラネタリウム久しぶりだし。
ちょっと反省しながら。
星を見上げていたら。
「……手、つなぐ?」
くす、と笑って囁く高瀬。
「つなぐ」
即答したら。ぷ、と笑われて。
ゆっくり、手に触れて、軽く、繫がれる。
――――……触れたいって思ってたから。
……嬉しすぎ。
しかも。
なんか。
つなぐ?て、聞いてくれるのとかも好き。
ちょっと触れてるだけの、優しいつなぎ方も。
……全部好き。
一緒にプラネタリウム見れてうれしーなー。なんて。
しみじみ想った。
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