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第2章
◇おかえり*圭
しおりを挟む「……あー良かった、まだこの店に居て。何で電話出ないの、織田」
高瀬の言葉に、え、と焦る。
「あ、ごめん。全然気づかなかった」
「はあ……飲みすぎんなって、言っただろ」
セリフはそんなんだったけど、声が、優しい笑みを含んでて。
そのままぎゅ、と抱きしめてくれる腕も、とっても優しい。
「……ごめんね……」
言いながらも、そのまま、どさくさ紛れでくっついたままでいると。
「――――……つか、オマエ、埼玉なんじゃなかったの?」
背後から、須長の声がする。
「……さっきの電話の後すぐ帰ってきた。埼玉って言っても東京寄りだから近いし。織田、電話出ねーし。……なにより、お前が居るし」
高瀬が、最後の一言は特に力を込めて、言ってる。
「……あのさー、オレ、男には興味ねーよ?」
須長が、そう答える。
………………んん? どんな会話?
「……お前はわかんねぇ」
ちょっと冷ややかな高瀬の声。
普段オレには使わない声色。
…………ちょっとカッコいい。
……いやちがう。
ときめいてる場合じゃない。
この会話は一体。
「……マジで、オレは男、ないって」
「……つか、お前、昔――――……はー。もういいや。 ……織田、大丈夫か? 立てる?」
「……うん。立てる」
ずっとくっついてたかったけど、須長も居るし、仕方ない、
高瀬の腕の中から、ちゃんと起き上がった。
「……てことは、やっぱ、そうな訳か」
須長が、意味深な言い方で、高瀬にそう言った。
高瀬は否定せず、ちら、と須長を見やる。須長は、ふーん、と言いながら、少し首を傾げた。
「――――……マジで、何で?」
「……何でって。大事だから。――――……絶対ぇ触んなよ」
高瀬がそう言うと、須長はびっくりしたような、面白そうな顔をして、ははっ、と笑った。
「初めて聞いたな、そんなの」
「――――……初めて言ってるし」
2人の言葉に、オレは首を傾げる。
「ていうか、織田、全然意味分かってなさそう」
くす、と笑って、須長が、オレの頬を、ぶにー、と横に引っ張った。
「ぽけっとした顔して」
すると、高瀬がオレを後ろに隠す。
「だから触んなって言ってんだけど …… 分かんねえの?」
「……た、たかせ……???」
またしても、あんまり聞いたことのない、低い声。
思わず後ろから、高瀬の顔を覗くと。
高瀬は、ちら、とオレを見て、はー、と息をついた。
「……織田、こいつ……モデルの頃の知り合いなんだけど――――…… なんかしらねえけど、オレの関係した女とか、関係しそうな女とかに手ぇ出すっつーか…… とにかく、ほんと、超変な奴で」
「失敬だな、お前。――――……ただオレは、対抗意識燃やしてただけ。変な方向に行動が向かったのは、もうよく覚えてねえけど。……そしたらお前、あんなに人気あったくせに、超あっさりモデルやめてくし」
「……人に見られるんの好きじゃなかったし――――……お前みたいな色々面倒な奴が何人も居て、めんどくせえのもあったから、やめたんだよ」
高瀬の呆れたような声。
大体の事情は、何となく分かった。
2人になるな、近づくなっていう意味も、今の会話で、何となく。
でもなー、手を出すとか、その話って、女の子との事だろ。
……オレ男だし。
その心配は、いらないんじゃないだろうか。
思いながら、高瀬を見上げる。
目が合うと、くす、と笑って、高瀬がオレの頭をポンポンと撫でた。
「ただいま、織田」
「――――……」
そんな一言に一気にめちゃくちゃ嬉しくなった。
そうだ、びっくりしすぎて、考えられてなかったけど、
高瀬、帰ってきたんだった……!
「おかえり高瀬!」
めいっぱい笑顔で、そう言った。
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