138 / 236
第2章
◇びっくりすぎ*圭
しおりを挟むなんかあれだなー。
皆って、高瀬がオレを構ってるって、すごい言うんだよな。
……そういえば、太一先輩にもなんか言われたしな。
でもほんとは、むしろ大好きすぎて近寄ったのは、オレなんだけど。
高瀬が目立つから、高瀬の方ばっか言われるのかなあ。
そんな事を思いながら、ふと気づくと、隣でメニューをまた見てる須長。思わず苦笑とともに、「まだ飲むの?」と聞く。
「なんか一緒に飲む?」
「もういいよー。つか、強いなぁ、酒」
「織田だって、眠いのは疲れてるだけで、強いんじゃないの? 結構オレと同じくらい飲んでる気がするんだけど」
「昔から、なんかよく飲まされたから。強くなったかも……」
「はは、分かる。飲ませたくなるよね、織田」
「……分かんなくていいし」
苦笑いしながら言うと、須長が可笑しそうに笑う。
「……さっきから聞いてるとさ。高瀬とそんな仲いいの?」
「んー……まあ同期で唯一、同じチームってのもあるけど」
んでもって、一目惚れの相手で。
……今は、付き合ってるから。とっても、仲良しだけど。
「ふうん。ていうか、そういうのさ、モデルの頃のあいつと、なんかイメージ違うんだよね」
「ん? なにが?」
「そんな。男の世話やくようなタイプじゃなかった。とにかくすげー女にモテてたけど」
「……そうなんだ」
……まあそうだと思うけど。
――――……会ってみたかったなあ、高校生の高瀬。
絶対カッコいいに決まってる。
でもなんか、このままだとまた、高瀬がモテてた話になってしまいそうで、ちょっと聞きたくないので、逃げる事にして、立ち上がった。
「……ごめん、オレ、ちょっとトイレ、行ってくる」
立ち上がった途端。 軽く、くら、と揺れる。机でちょっと支えると、須長が見上げてきた。
「大丈夫? 織田」
「うん、へーき……」
須長に答えて、トイレに向かう。
用を済ませて、鏡の前に立つ。
はー……顔、ちょっと赤いな。
――――……結構飲んだかもなあ。まあ。久しぶりで楽しいけど。
もうすぐ22時か。お開きんなるな……。
22時になったらタクシーで帰って、お風呂入って、早く寝よ。
で、明日は高瀬に会える。
――――……席に戻ろうと思った瞬間。くら、と視界が揺れた。
うわー、ちょっと……いや、かなりクラクラする。
だめだなこれ。戻ったら、水、がぶ飲みしとこ。
鏡の前に手をついて、は、と息をついてると。
トイレのドアが開いた。
「織田、大丈夫?」
「……? ……あ、須長……」
「さっきふらふらしてたし、戻ってこねーからさ」
「ありがと、大丈夫」
――――……あ。そうだ。
2人になんないで、て言われてたんだった……。
「平気だから。席、戻ろ」
と、急いだせいで、また、ふらついた。
「……わ……」
「っと……」
真正面から、支えられてしまって。
「……っと――――……マジで、ごめん……」
腕に手をかけて、まっすぐ、立ち上がろうとした、その時。
「なあ、織田ってさ」
「……?」
「……高瀬と付き合ってたりしてんの?」
「――――……は?」
「違う?」
「何それ、どこから、そんな……」
びっくりしすぎて、間近の須長を、ただ見つめてしまう。
「その反応って、どっち? ただびっくりしてんのか、当てられてびっくりしてんのか」
「……そんな事を聞かれる事に、びっくりしてる」
言ったら、須長は、ぷ、と笑って。
固まってたオレの腕を取って、よいしょ、とちゃんと立たせてくれた。
「悪い……」
「いーけど。 そんな風になるから、高瀬が心配するのか?」
「……はは。 そうかも。最近酔うと、足に来る…… 年??」
「年って。高瀬と同じ年だろ? てことは同じ年じゃねえの? え、留年とかですごい年上だったりする?」
「……んな訳ないじゃん。そう見える?」
そう言うと、須長は可笑しそうに首を振った。
「見えねー。つか、年下に見える」
「何だよ、それ……」
ぷ、と笑いあった瞬間。
トイレのドアが開いた。
何気なく、そっちを見て、固まる。
「――――……え」
すごくすごく、会いたかった人が。
……高瀬が。
すごく、急いできた、みたいな態で、立っていた。
「……たか、せ……?」
「織田――――……」
オレを見た瞬間、高瀬は、ほっとしたように、笑った。
「……高瀬……? なんで……」
一歩、進んだ瞬間、がく、と足から力が抜けて。
次の瞬間。
――――……高瀬の腕に、抱き止められてしまった。
79
お気に入りに追加
1,502
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる