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第2章
◇大事*拓哉
しおりを挟むマンションを出て、絵奈と2人、駅まで歩く。
「今度はちゃんと電話繋がってから来いよ? 今日はほんと、運が良かったんだからな」
「はーい」
肩を竦めて、間延びした返事。
ちゃんと、聞いてるんだか。ふふ、と絵奈が笑う。
「――――……ねね、お兄ちゃん」
楽し気な顔で、下からのぞき込まれる。
「織田さんて、仲良し?」
「――――……まあ」
「すっごくすっごく仲いいの?」
「……何で?」
「だって、お兄ちゃんが他人を家に入れるなんて。しかも、先に鍵渡して入れておくなんて、おかしいもん」
「――――……」
――――……まあ、確かに。
オレをよく知ってる絵奈からしたら、不思議なんだろうなとは、思う。
――――……というか、自分でも不思議だからな……。
「……でもね、あたしね。 織田さんなら、分かるかも」
「分かるって?」
「――――……お兄ちゃんが、織田さんを大好きなの、なんか分かる」
「――――……」
「なんか、あの人、可愛いし」
その言葉に、ぷ、と笑ってしまう。
「……年上に可愛いとか、言うなよ…… 織田に言ってないよな?」
「あー……言っちゃったかも……」
――――……やれやれ。
織田、どう思ったかな……。
「……だって、織田さん、好きな人の話する時、すっごく可愛いんだもん」
「――――……織田、何言ってたんだ?」
思わず聞いてしまう。
――――……少し、気になる。
「ん? んと……好きな人がすっごく強烈なんだって。でも優しくてって言って、ニコニコしてたよ。 お兄ちゃん、知ってる人?」
「――――……いや」
……強烈って。
絵奈に、適当に返しながら、それを言ってる織田を思い浮かべて、ふ、と笑ってしまう。
「私だってさ、普通は会ったばかりの知らない男の人に恋愛相談なんかしないんだけどさ」
「?」
「なんか織田さんには、しちゃった。 何でだろ」
言いながら、絵奈がふふ、と笑ってる。
「なんか、ちゃんと聞いて、考えてくれそうな気がしちゃったの」
「……お前、人を見る目はあるかもな」
絵奈が、ふ、とオレを見上げて、ん?とにっこり笑う。
「……織田、同期とかにもよく相談されてるから。本人は、ただ話してるだけ、のつもりらしいけど」
「――――……」
「織田と話してると、和むからかもな……」
そんな話をしていると、織田の笑顔が浮かんできて、ふと微笑んでしまう。
素直な言葉と笑顔に、和む奴がいっぱい居る気がする。
飲み会だとよく、お悩み相談会みたいのが、織田の近くで開かれているしな。
「――――……おにーちゃん」
「……?」
「……お兄ちゃんが人の事そんな風に言うの、それも、初めて聞いた気がする」
「――――……そんな風ってなんだよ?」
「んー……と。 大事そう、かな」
「――――……まあ……大事、かな……」
大事なんて、そんな簡単な言葉じゃ足りないくらい、だけど。
……そばに、いてくれないと、困るし。
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