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第2章

◇謎?*圭

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「えっと……絵奈ちゃん、て呼んでいい?」
「もちろん」

「何か飲む? って、高瀬の冷蔵庫だけど。 さっき好きに飲んでいいって言ってくれてたから」

 オレがそう言うと、絵奈ちゃんは、じっとオレを見つめて。
 ん?と首を傾げたオレに、ぽそ、と一言。

「――――……謎すぎです」
「え?」

 ……謎すぎ???

 さらに、ん?と不思議に思っていると。
 絵奈ちゃんがじっとオレを見つめたまま、続けた。

「お兄ちゃんて、私にはなんだかんだ優しいけど……」
「うん??」
「何て言うのかな…… んーと、人をね、自分の領域に入れない人なんですよ、ほんとに」
「――――……そう、なの?」
「謎すぎます。よっぽど仲いいのかなと思ったけど……会社の同期って事は、まだ半年くらいですよね?」
「……ていうか、でも、高瀬、会った頃から、そんなに変わらないよ?」
「え、もうほんと謎です」

 興味深そうに見てくる絵奈ちゃんに、ぷ、と笑ってしまう。

「高瀬、ほんとに最初から優しかったよ」
「――――……織田さんだから、なのかな」

「……さあ……どうだろ。 絵奈ちゃん、何か飲む? 中に、アイスティーと麦茶なら、ペットボトルあるけど」
「アイスティーください」

 絵奈ちゃんにペットボトルを渡すと、スマホを置いたテーブルの椅子に腰かけた。真正面は避けて、斜め前に何となく座る。
 
 謎って。今このシチュエーションの方が謎すぎるけど。
 何してんだろ、オレ……。

 ちょっと面白くなってきてしまう。
 目の前に、大好きな人の妹が、座ってる。

「……高瀬に何か相談?」
「え?」

「一人暮らしのお兄ちゃんを急に訪ねる用事って何かなーと思って。 顔見にきただけ?」
「……ちょっと、男友達の事で聞いてほしくて」
「そっか。……高瀬の事、頼りにしてるんだね」

 まあ。 すごく分かるけど。
 頼りにしたくなる気持ち。
 そんな風に思ってると、絵奈ちゃんは、うーん?と笑った。

「……お兄ちゃんて、すごくドライというか、冷静というか。私がかーってなって何か言っても、めちゃくちゃ冷めたまま聞いてて、ものすごい客観的に言ってくれるので……」
「……」

 聞いてて少し、違和感。
 ……ドライ、冷静、冷めてる……絵奈ちゃんの、高瀬のイメージって……。

 なんか、パッと見の、高瀬のイメージのままなんだなあ。
 中身もそうだって、思ってるのかな。

 笑い出すと止まらなくなったり。
 ……キスしたい、とか。 我慢できない、とか。
 余裕のない、顔してる高瀬も、いっぱい見てると――――……。

 高瀬って、すごく。
 ――――……熱っぽい、人なんだけどな。

 絵奈ちゃんの前では、ずーっと、クールでカッコイイお兄ちゃんでいたって事なのかな……?


「……そうだ。 織田さんに聞いてもらおうかなあ……」
「ん?」
「……お兄ちゃん以外の、男の人の意見も聞いてみたくて。 織田さんがよかったら」

 そんな風に言うので、オレは、ふ、と笑った。

「聞いていいなら、聞くけど。いいの?」

 そう言うと、絵奈ちゃんは嬉しそうな表情を見せる。

 ふふ。可愛い。
 ――――……高瀬の妹だと思うと、余計、可愛く見える。


 そんなこんなで。
 出会ったばかりの、絵奈ちゃんからの、相談タイムが始まった。




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