81 / 236
第2章
◇1人で*圭
しおりを挟むドキドキしながら、高瀬のマンションの鍵を開けて、中に入った。
「お邪魔します……」
誰も居ないのは分かってるのだけれど、何となく口にする。
とりあえずシャワーを浴びさせてもらった。
部屋着に着替えて、コンビニで買ってきたお茶を飲んで、ソファに腰かけた。
高瀬が居ないこの部屋に、1人で居るのは初めて。
だってないよね、家主が居ない、人の家にいる事なんて。
大体いつもは、楽しすぎて酔っぱらい、連れてきてもらって。
楽しく話した後、わりと早めに、寝ちゃう事が多くて。
で、週末は、高瀬とずっと一緒に居るし。
こんな夜の早い時間に、シラフで、しかも1人で高瀬のうちに居る。
ものすごく、不思議な気分。
「――――……」
なんか居心地が悪くて、テレビをつけたけれど、全然面白くなくて、数分で消した。
今、19時か。
さっきは鍵預けてくれて浮かれてたけど、やっぱり、一緒に居たいなあ、なんて思う。
早く帰って、こないかなあ……。
静かな部屋で、ぼー、と見回す。
いつ来ても、キレイな部屋。
――――……几帳面なんだろうな。
高瀬って。ほんと、ちゃんとしてる。
オレの部屋……まあある程度は片づけてるけど、ここまではキレイじゃないし。そういえば、高瀬まだオレんち来た事ないな。……今度来てもらおう。
それまでに、もうちょっと、片付けとこ。
ここは、キレイすぎて、生活感、無い。
家具は、黒や白で統一されてて。
なんか、インテリアの見本にのってそうな部屋。
余計なものが、無い。
うちに、ごちゃっと貼ってある友達との写真とか、ちょっと可愛くて買った派手なクッションとか。面白い絵が描いてあるマグカップとか。
……てか、オレの部屋にある物の8割位、高瀬にとっては要らないものなんじゃないだろうかと思ってしまう。
高瀬って……。
なんでオレを好きかなあ……?
ぼー、と高瀬の事を思う。
ぱっと見は……クールな超良い男。黙って立ってるだけで、人目を引く。
バカ騒ぎしたりするタイプじゃない、と思う。
人によったら最初は、冷めた口調が、苦手な人はいるかもしれない。
……仲良くなると、全然違うんだけど。
優しいし。気が利くし。でもオレには最初から優しかった、かなあ……。
――――……あんなに、可愛いとか、好きとか、言ってくれるとは思わなかったし。
高瀬の事を好きになる子は、これから先もいっぱい居るだろうし。
……女の子、の方が、高瀬に似合うとは思うのだけど。
……でも、オレ、ずっと高瀬と居たいと思っちゃってる。
高瀬にも、ずっとオレと居たいと、思っててほしい。
高瀬が、オレと居て、楽しそうにしてくれてるのが、嬉しい。
高瀬に抱かれるのは――――……まだ全然慣れないけど。
……めちゃくちゃ丁寧に、大事に、してくれてるのが、分かるから……。
オレに――――……興奮、してくれるのも。
なんか、すっごい、恥ずかしいけど、嬉しいし。
オレの上にいる高瀬は、すごい、男っぽくて、かっこい……。
ぴんぽーん!
急にチャイムが鳴って、びくう!!と震えた。
ドキドギドキドキ。
うわ、オレ、何、思い出してんだ。
あやしい事考えていたので、もう、心臓が、壊れそう。
……高瀬かな?
全然ドキドキが収まらないまま、インターホンを覗いた。
通話ボタンを押そうとしたけれど、映っている姿に、ぴた、と止まる。
女の子、だった。
「……だれだろ」
……えっと。
……か……彼女、とかじゃないよね……。うん、無い無い。
……オレ、勝手に出て良いのかな…… どうしよう。
出られないで居ると、もう一度、ピンポンが鳴り響いた。
それでも戸惑ってると、再度ピンポン。
もう、仕方なく、通話ボタンを押す。
「……はい?」
「あたし。入れて?」
……あたし。
で通じる仲なのは分かったけど……。誰かな。
「あの……今、高瀬居なくて」
オレがそう言うと、え?と不思議そうな顔。
「……じゃ、あなたは、どなたですか?」
そう聞かれて、何と言うべきなのか、本人居ないのに、ここに居るのおかしいし、とか色々考えた挙句。
「友達……なんだけど……」
そう言うと。
「えーと…… あたし、拓哉の妹です」
「え?」
「絵奈って言います。お兄ちゃん、いつ帰ってくるんですか?」
絵奈、ちゃん。
――――……さっき、高瀬のスマホに名前が表示されてた子だ。
68
お気に入りに追加
1,501
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

からかわれていると思ってたら本気だった?!
雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生
《あらすじ》
ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。
ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。
葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。
弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。
葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる