上 下
52 / 236
第2章

◇待機*拓哉

しおりを挟む


 
 ……逃げられたなー……。


 土曜、織田が帰って行って、1人の部屋で苦笑いと共に、思った事。

 まあ。
 思うに。

 金曜の織田は、多分今までで一番酔っ払ってた。

 酔っぱらって、訳が分からなくなったというよりは、
 めちゃくちゃ素直になってた、て事なんだと思う。

 普通なら色々考えるだろう事も全部とっぱらって、
 感情だけ表に出てたみたいな。

 もう高瀬んち来ないと言ったのも、その後泣いたのも。
 普段の織田ならそんな風にオレにぶつけては来ない。

 それをオレに、言えたのは、きっと、すごく酔ってたから。

 でも、オレとしては、織田がそう言う事を言ってくれたから。
 おかげで、好きだと言えたんだし。

 ――――……付き合う話すらする前に、そうなってしまったのも、別にあの流れなら、全然良かった。

 ……すげえ、可愛かったし、好きだから、抱いたんだし。
 好きだって、言い合った後だったし、織田も、止めなくていいって言ったし。抱いてる間に、何度聞いても、大丈夫、好き、大好き、みたいに。ずっと、言ってたし。


 ……もうほんと可愛くて、これから先ずっと付き合うものだと思って
抱いた。ので、オレの方は、あれで全然良かった。

 のだけれど。

 照れて、恥ずかしがって、多分、進みの速さに戸惑って混乱してて。

 だから、1人で考えたいと言われて、すぐ、いいよ、と言った。
 付き合いたい、という、大事なとこだけは伝えて。
 考えるのを邪魔しないように、土日、連絡も取らなかった。


 ……月曜朝は、まだ良かった、かな。
 
 すっごいビクビクして、赤くなって、まだ、全然ダメそうだなーと思いながらも、可愛かった。

 んだけれど。


 火曜水曜木曜……進むにつれ、ますます、どうしたらいいか分からなくなっていったみたいで。まあそれも可愛いんだけど。

 でも、あんまり無理矢理話しかけても、そろそろ泣きだしそうな気までしてくる位で。
 
 まあでも……そうだよな。
 と、ある程度は納得できた。

 男同士だし。
 織田は、抱かれてしまった方だし。

 ……オレが織田に好きだと言ったのも初めてだから、それを、まだ完全には信じれてないかもしれないし。

 多分、死ぬほど考える事があるんだろうなと思う。


 ――――……んーでもな。
 知り合ってから、織田がオレをまっすぐ見ないのは初めて。
 笑顔も見せてくれないし。ちょっと、辛い。というのか、寂しいというのか。

 恥ずかしがってるっぽいから、嫌悪とかじゃないと信じたいけど。

 ――――……やっぱり、嫌、だったって事なのかなー。
 と、ちらっと掠めたりもする。違うと、思いたいけど。


 ――――……焦って答え求めても、とは思うんだけど。
 んー。

 どうすっかなあ……。


 まあ、その間に、オレも色々考えはしてたから、まあ良かったんだけど。
 オレの結論は、最初と一緒。

 オレは、織田が好きで、織田が良いなら、織田と居たい。
 ……ていう結論は、織田が大混乱してる間に、確立してるんだけどな。



 明日は金曜。
 ――――……あれからもう1週間。

 混乱がドツボにはまって、どんどんひどくなってて。
 もう、逃げられないように、家に連れて来た方がいいと思うんだけど。
 来てくれるかな。



 今日までの姿を思うと、拒否られそうな気もするし。
 なかなか、今までない苦労の仕方に、苦笑いが浮かんでしまう。


 ……まあ。
 …………なんか、そんなのすら苦笑いが浮かぶし。
 ちょっと、可愛い気がしてしまうのは。


 普段の織田が好き過ぎるから、だろうけど。

 さて。今日までは、待機してあげたけど。
 土日まで、待機すんのは、さすがにちょっと嫌だな。



 明日。どう誘うかなあ……。



 ベッドに転がったまま、ふ、と息をついた。







 
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

「今日でやめます」

悠里
ライト文芸
ウエブデザイン会社勤務。二十七才。 ある日突然届いた、祖母からのメッセージは。 「もうすぐ死ぬみたい」 ――――幼い頃に過ごした田舎に、戻ることを決めた。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

【胸が痛いくらい、綺麗な空に】 -ゆっくり恋する毎日-

悠里
BL
コミュ力高めな司×人と話すのが苦手な湊。 「たまに会う」から「気になる」 「気になる」から「好き?」から……。  成長しながら、ゆっくりすすむ、恋心。  楽しんで頂けますように♡

処理中です...