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第2章

◇こりゃもうだめだ*圭

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 衝撃的だった土曜日の朝。
 オレは、高瀬のマンションを出て、何とかかんとか自分のマンションに帰ってきた。
 
 ベッドに倒れて、何となく枕を抱える。
 最近悶える時、いっつもこうしてしまうのは何でなんだか。


 ――――……帰ってくる間にも、どんどん、記憶はよみがえって、もはや金曜の夜の事は、ばっちり思い出してる。
 セリフとかも、全部。

 高瀬が、言ってくれた言葉も
 オレがいっぱい言っちゃった、恥ずかしい言葉も、

 ……夜ベッドの中で、めちゃくちゃ煽るような事言って、抱き付いた事も。


「~~~~っっ!!!」

 最後の所で死にそうになって、声にならない声で枕に沈む。


 ダメだ、オレ、ほんと、とりあえずベッドの中、どうかしてた。
 いや、ちがう、泣きながら、もう高瀬んち、来ないって。あそこらへんも。
 何なの、オレ、小学生なの?

 恥ずかしすぎるんだけど。
 ううううー…。

 あのカッコイイ高瀬の前で、どんだけ醜態晒して、
 でもなんでそんなアホなオレを、高瀬は好きだなんて……。


 ていうか、高瀬を泣かせてしまった。

 ……オレが、高瀬を好きでいるのが嫌、とか。
 勘違いさせてたみたいで。

 ……結婚したいとか 子供が欲しいとか、
 そうしなきゃって思いながらのオレの発言を、高瀬はマジで受け取って、しかも、それで、泣いてくれた??

 …………え、何で??

 …………オレが、高瀬を好きでいるのが辛いって、思ってた高瀬は。
 それが辛くて、泣いた、んだよね……?


 高瀬の事、知り合ってからずっと見てたけど。
 絶対泣くようなタイプじゃない。
 辛い事があっても、押し殺して、絶対人前で出すようなタイプじゃない。
 高校生の時の親の不倫ですら、自分の中で……ってタイプの人なのに。

 ……高瀬の涙なんて。
 ――――……超貴重だったんじゃ。


 とか、いやもう、オレ、訳わかんないから!!


 ……で。
 ……自分でも泣いたのびっくりした高瀬が。
 オレを好きって、言ってくれて。

 ――――……酔ってて、馬鹿素直になってたオレは、もう。

 何も考える事もなく、好き、わあ嬉しい、オレも好き、と言って。抱き付いて。……エッチできるかみたいな事を自ら聞き。
 ……一緒にスマホなんかで調べ。高瀬に上で良いかとか、聞き。

 …………キスして、抑えようとしてくれてる高瀬に、止めなくていいと、誘い。甘えまくって、最後まで――――……。



 …………え、昨日のオレ、馬鹿なの?
 何してくれてんの? 高瀬に。


 付き合おうって言うのが後になったとか、高瀬、今日言ってくれたけど。

 完全にオレのせいだと思う。

 なんか、高瀬が好きって言ってくれたのが嬉しくて、
 すごい浮かれて、キスしたくて、触れたくて。


 ――――……好きって言ってはくれてたけど、高瀬は、きっとオレが聞かなかったら、スマホで調べてなんか無いし、絶対、昨日、あんなことまでしてなかったと思う。

 高瀬の好きが、どの程度だったのか、分かんないけど。
 付き合うとかの話もしない内に、オレが……。


 うわーん、馬鹿―!!
 何してんの、ほんと、昨日のオレー!


 誰か。
 神様。
 時を戻してくれないだろうか。


 戻してくれたら、高瀬が好きって言ってくれた時にもどって。
 オレも好きって言って。
 ちゃんと2人で、色々話して。
 付き合うとかも、もっとちゃんと2人で考えて。

 もしも付き合う事になるなら……
 ちょっとだけキス、したり、してみたりして。

 なんなら、いっしょに寝ちゃったりなんかもしたりして。


 ………………昨日の所は、それで、良かったんじゃないだろうか。
 
 
 絶対そうだよね、それが良かったよね。
 オレ達男同士なんだし、もっと色々話す事だって、あったんじゃないのかな。なのに、頭ふわふわしてたバカなオレが……。





 ――――……良かったのかな、高瀬は。

 オレを好き、とは言ってくれてた。
 今まで、めちゃくちゃ優しくて、意味深だった高瀬のセリフが、全部、そういう好きだったんだって思えるなら、なんかすごく、納得も出来る気がする位。好きって、言ってくれて、見つめてくれた。


 好き、ていう気持ちがあるっていうのは、なんか、昨日の高瀬を思い出せば、信じられる。


 …………でも、好き、なのと。
 男と寝ちゃったりって、ちょっと、大分、違くない……?

 何かオレ、ほいほいとそちらに持ってって。
 抱かせてしまった、ような……。


 いやいやいやいやいやいや……っ。
 朝起きた時から、そんな気がしてて、死にそうだったけど、
 こうして考えてると、ますますそんな気がしてきて。



 こりゃもうだめだ。




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