【FairyTale】 ノンケ同士×お互い一目惚れ。甘い恋♡

悠里

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第1章

◇出逢い&可愛い…?*拓哉

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  何だったんだろ。あいつ。……なんか、笑えた。

  ……ちょっと面白くて。何だかちょっと、可愛かった。

  ……小動物、みたいな?
  つかオレ……男相手に何言ってんだか。


◇ ◇ ◇ ◇

 春。

 オレ、高瀬 拓哉たかせ たくや 二十二才。
 大学を卒業して、ある大手のコンピュータシステムの会社に入社した。


 ……人に言ったら、自惚れと呆れられそうだけれど。
 事実として、女に、そういう目で見られるのは、慣れていた。
 他人から見ると、目立つし、イイ男、らしい。
 街を歩いていて、何度もスカウトされた。高校の時にその話を受けて、モデルとして一時期活動した。一時はかなり雑誌に出て、結構な問い合わせがあったらしく、役者にならないかとか、散々芸能界を勧められた。

 でも、そこまで興味が持てなかった。他の男性モデルとのライバル争いも、心底面倒だったし、そもそもそんなに人に見られる事が好きではなかったみたいで、モデルの仕事を始めてみてから、やらなきゃ良かったと後悔した。

 普通に仕事について、普通に人生を送れればそれで良いと思ったので、芸能の世界とは完全に離別して、プログラマーの道を選んだ。

 その入社式、だった。

 急に頭上から、パラパラと降ってきた書類。
 咄嗟に何が起こったのか、頭上を見上げたら。

 バラまいた奴の表情がツボにはまって。笑いを堪えるのが大変だった。

 新入社員の代表挨拶を押し付けられ、嫌な気分で座っていたのだけれど、急に、気持ちが切り替わった。

 笑いすぎてしまったせいか、そいつが、キッと視線を向けてきたのだけれど。間近で視線が合うと、一瞬で、ぽかん、という間抜けな顔になった。

「――――……」

 すぐに視線を逸らされて。
 ん?と疑問。

 女に見つめられるのは慣れていた。
 出会ってすぐにアプローチしてくる女も結構居るし、一目惚れされる時の視線も、何となく分かる位に慣れていて、それを鬱陶しいとすら、思っていた。

 ……女にされるのは慣れていたけれど。
 いくら何でも、男に、ぽけっと見つめられたのは、初めてだった。

 普通、男はそんな事しない。
 むしろ、男はそれが本能なのか、警戒してくる。

「顔だけ」「ルックスだけ」
 最初から、そんな否定的な目で見てくる奴も多い。

 学校生活でも、アルバイトやモデル時代でも、女が勝手に言い寄ってきてるだけなのに、めちゃくちゃ煙たがられたっけ。正直、女絡みになると、男には嫌な記憶しかない。

 もし仮に、男がオレの事を敵視せずに、「イイ男」と認めたとしても。
 あんな風に素直に、ぽけーーと見つめてきたりする男なんて、当然ながら、今まで居なかった。

 女だったら、まさに、「一目惚れしました」というような視線。
 そんな表情で見つめられたら、もう女ですらウザイと思ってるのに。
 それが男だった訳で、それはもう、心底ウザイ……はずだったのだけれど。

 明らかに狼狽えてるそいつが、何だか面白くて。
 書類を並べるのを手伝ってやってたら、その表情と仕草が。
 ものすごくドキマギ不自然に狼狽えていて。

 ……なんか、ちっちゃい生き物みたいで。
 なんだか、ちょっと可愛く見えて。

 そこまで考えて、オレは一瞬、ん?と止まった。
 可愛いって、何だ?

 書類を整えて、ようやく落ち着いたみたいだった。入社式が始まるのに私語をしている訳にもいかないので、無言で過ごしていたら、すぐに入社式が始まるアナウンスが流れた。社長やら先輩やらの話を聞かされ、それから、新入社員代表の挨拶で名を呼ばれた。指名された時からこの上なく面倒だった。
 正直そんなに仕事というものに意欲があった訳でもなく。ただコンピューターやプログラムを弄るのは比較的好きで、この会社が大手で、給料も良かったから選んだ位で。だから適当に、普通なら言うであろう言葉を並び立てながら、壇上で話していた。

 その途中で、ふ、と、会場を見渡した時。
 オレが座っていた所がぽつんと空いていて、目に止まった。

 そして、すぐにその隣に、「織田圭」。

 他の連中が神妙な顔で聞いてる中。 
 多分「すっげー……」とでも、思ってるんじゃないだろうか。

 そうとしか思えない表情で、何やら瞳をキラキラさせながら、織田は、まっすぐオレを見ていた。
 思わず、笑みが漏れそうになってしまって、慌てて顔を引き締めた。

 何故だかちょっといい気分になり、途中からやる気を含ませた挨拶に変えて、無事挨拶を終えて、席に戻った。

 間もなく入社式が終わって、そのまま退出させられてお開きになった。

 促されるままに会場を出て、いくつかのエレベーターに別れて一階に降りる間に、織田とは離れてしまった。


 少し、話をしてみたかった。
 そんな風に自分が思うのが珍しいことは、誰よりも自分が知っている。

 家に帰ってからも、何故か、織田の顔が浮かんで、不思議だった。



 何か。
 ……面白かったな、あいつ。


 可愛かった?
 ……てのは、違うか?


 明日からの集合研修でまた会うよな。

 つか。
 何でこんなに思い出してんだか。


 書類をざざーと流し終えた時の、顔。
 ぽかん、とオレを見つめてた顔。うろたえて、じたばたしてる顔。
 
 勝手によみがえってきて、その日、何度も、首を傾げた。
 

 明日からの集合研修――――……。
 ほとんど知ってる基礎からだって話だし。面倒くせえと思ってたけど。
 

 ……何だか少し、楽しみになっていて、不思議だった。







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