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プロローグ
しおりを挟む出会いは、近所の幼馴染の家だった。
柴犬の赤ちゃんが生まれたから見に来てと誘われて、遊びに行った。
私は社会人で接客業。お客様至上主義の会社。何を言われても笑顔がモットー。ちょっと疲れていたのかも。仕事にも。……恋愛にも。
大学から付き合ってた、大好きだった彼とは、小さい喧嘩みたいなのが多くて、すれ違いばかり。仕事が忙しくなって、思うように会えないし、お互い飲み会も増えた。同期には異性も居る。嫉妬して、素直になれなくて。なかなか会えないのに、会っていても楽しくない。
仕事は二年目を迎えて、任される仕事も増えて、ますます忙しくなっていた。
そんな時。
軽い気持ちで、柴犬の赤ちゃんを、見に行った。
正直なところ、犬は、全般、嫌いだった。
すごく小さい頃は田舎に住んでいた。まだ、犬を放し飼いにしてる人も多くて、野良犬も捨て犬も多かった。
追いかけられたこともある。繋がれていても、長い鎖で、自由に動けるようになっていて、かなり近くまで来て、吠えたりする。
怖い、生き物だった。
ポメラニアンとか、チワワとか、最近よく見かける、可愛らしい犬種よりは、精悍な顔つきの犬が多かったように思う。あれから長い時が経っているのに、ずっと怖いまま。しかも、今も、ちっちゃい可愛い犬でも、吠えられると怖い。
「赤ちゃんだから、噛まないよ、可愛いよ」
中学からの幼馴染の恵ちゃんにそう言われたけど、うーん、でも、だって、犬でしょう? と、密かに思っていた。
「今寝てるから、静かにね」
ふふ、と笑う恵ちゃんに頷いて、和室のゲージに近づいた。
恵ちゃんがたまに散歩をしている、柴犬のココが、丸くなって眠っていた。
よく会うココですら、私はちょっと怖い。
可愛い顔をしてるとは思うのだけれど、急に、ワン! と吠えられたらと思うと、内心、ビクビク。
早く赤ちゃんを見て、帰ろう。
そう思いながら、近づいた。
◇ ◇ ◇ ◇
プロローグ、読んでくださってありがとうございます。
わんことの思い出をベースにした「小説・フィクション」です。
ほっこりじんわり大賞に参加します。短篇の予定です。
ブクマや感想、エール、投票で応援頂けたら嬉しいです。
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