【やさしいケダモノ*K】~やさしいケダモノの啓介sideです。甘酸っぱい、高校生の頃のお話。

悠里

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第2話◇関西弁

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「けーすけ!」
「ん?」

 昼休みの終わり15分前。
 雅己が走ってきて、オレを連れて、屋上につづく階段の途中に連れてこられた。並んで座らされる。

「何や……??」
「オレ、お前に言っとこうと思ってさ」
「……ん?」

「ゆっくりしゃべれ」
「……は?」

「関西弁、早口でまくしたてンな」
「――――……ああ……」

 今日、ちょっと言い合いになった件がよぎる。
 もう雅己に伝わったんか。


「関西弁、怖いって」
「……別にえーけど」

「良くないっつの。 せっかく皆少し慣れてきてんのにさ」
「……雅己も怖い? 関西弁」

「え。全然。 てか、オレ、カッコいいって言ってんじゃん」
「――――……ほんなら、別にええよ」

「あ、ダメだっつの。とにかくゆっくり喋るだけでいいから」
「――――……」

「……ところで、なんでモメたの?」
「……そこは知らんのか」

 クッ、と笑ってしまう。

「気をもたせんなとか、良いカッコすんなとか……? まあなんか色々。そんなつもりないから、言い返したんやけど」
「ふうん? ……あ、嫉妬か」

 しばらく考えてから、ああ、なるほど、と間抜けな声を出してる。

「まあ……転校生がすごいモテてたら、まあ、悔しいよな……」

 ちょっと分かるけど。なんて呟いてから。

「……あれ、ところで誰とモメたの?」
「そこもしらんのか。……小林」
「小林……誰だろ。サッカー部の奴かな」
「そうみたいやな」
「ふうーん……まあ誰でもいーけど」


 ぷ、と笑ってしまう。


「回ってきた話が、啓介の関西弁が早口で何言ってるかよくわかんねーけど、とにかく怖かった、とか。 そんな感じだったからさ」

 クスクス笑う、雅己。

「……啓介、怖くないのにな?」

 小林に、絡まれるのは初めてじゃなくて。ちくちく何度も嫌味なこと言ってるから、ちょっと苛ついていて、確かにまくしたてた、かも。


「……やめとく」
「ん?」

「アホみたいにまくしたてんの、やめとく」
「――――……いいけどね、オレは別に」
「……ゆっくり話せばええんやろ?」

「ん。まあ。……時と場合によってでいーけど」

 ふ、と笑って、啓介を見上げてくる。


「お前いつも優しいし。 本気で怒ったんならいーんじゃねえ?とは思うんだけど」

 ぷぷ。

「何言ってるか分かんなかったっていう噂が、可笑しくて」

 あははー、と雅己が笑ってる。
 苦笑い、しつつ。


 心配させるから、ゆっくりしゃべろ。
 と。思った。





月日が流れて♡
+++++


「何で啓介さー、機嫌悪い時、ゆっくりしゃべんの?」
「……ん?」

「機嫌悪いのに、ゆっくりしゃべられると、超怖いんだけど」
「――――……」

 ふ、と、苦笑。
 ……まあ、忘れとるんやろけど。


「……何で笑ってんの?」
「……別に。お前、ほんま可愛えなーと思って」

「……今の流れでなんでそーなんの?」

 変な奴……とぶつぶつ言ってる。
 

 いっつも素直で。
 思ったこと、すぐ口にして。



 ――――……ほんと、良い奴で。

 よしよし、と撫でると、雅己は、じ、と見上げて。


「……そーいえばさ」

 ――――…ふ、と笑った。


「うん?」
「……なんか……関西弁、カッコいいなーとか、思ってたこと、思い出した」

「……今は思わんの?」
「……慣れすぎちゃってさ。……だって、毎日、一番よく聞く言葉じゃん」
「――――…………」

 まあ。そんだけ一緒に居る、てだけのこと、を言いたいんやろうけど。

 こういうのに、なんや、オレが、普通にドキ、とするというか。
 可愛えなあて思うの。

 なんで分からんのやろなあ……。
 

 むぎゅー、と抱きしめてると、「急に何」と、雅己がもがくけれど。
 雅己が苦笑いで抱き返してくれるまで、ぎゅ、と抱き締めつづけて。
 


「雅己、好きやで」
「……啓介、そればっか……」


 ふ、と笑う雅己。



 昔も、今も、ほんま、好き。
 







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