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第1話◇出会い
しおりを挟むオレ、杉森啓介。高校1年。
父親の栄転。
大阪から東京へ、4年が任期。
第1志望の高校に入学して、楽しく過ごしていたのに、急に舞い込んできた話。1人で残る訳にもいかず、受け入れるしかなかった。
変な時期に、急遽すぎて、制服も間に合わないし、もう何もかも不満なまま、転入初日。
制服が違う事には、突っ込まれるし、
女子がやたら寄ってきて、男子には敬遠されるし、
関西弁の自己紹介も若干いじられ。
初日からすでに、大阪に帰りたいと思っていた。
気が乗ればバスケ部に体験に行こうと思っていたけれど、今日は即帰ろうと、昇降口に向かっていたら。
「あっ転校生、いた!」
そんな声とともに。走り寄ってくる足音。
「なあなあ!」
「――――……」
走り寄ってきた奴が、オレの前に、滑り込んできた。
……背ぇちっちゃ。
けど、笑顔が明るすぎて、存在感はやたらある気がする。
「なあ、帰っちゃうの?」
「……は?」
「あ、オレ、隣の2組。北条雅己ね。 なあ、大阪で、バスケ部だったんだろ?自己紹介で言ってたって」
「――――……まあ、そうやけど……」
「中学もバスケ?」
「……小学校から」
「まじで? オレも! なあ、バスケ部、見学来ない?」
「――――……」
めちゃくちゃ楽しそうな、笑顔。
「バスケ部さ、1年人数少ないし、経験者、来てほしい」
「――――……」
「今日もう帰る? 時間ない?」
……瞳、デカいな。
まっすぐ、見られると、こっちも、逸らせない。
「もし時間あるなら、オレの着替えのTシャツとズボン貸すから」
「……一応持っとる、シューズも」
……体験に行こうかと、思ってたから。
「えマジで? じゃあ一緒、いこ?」
めっちゃ、笑顔。
つられて、笑ってしまう。
「――――……」
初めて自然と笑った自分。 ふ、と気持ちが上向く。
「ええよ。……行こかな」
思わず、そう答えていた。
「やった」
そんな風に言って、腕を引いてくる。
「更衣室、いこうぜ」
2人で、歩き始める。
「なあ、名前なに?」
「杉森啓介」
「何で、制服違うの? 間に合わなかったのか?」
「……ほんま急な転勤やったから。辞令出て1週間。ありえへんやろ…」
「うわー、大変」
「……お前、名前、何やったけ?」
「北条雅己。 雅己でいいよ」
「ならオレも啓介でええよ」
そう言うと、雅己は、ふい、とオレを見上げてきた。
「――――……なんか……」
「……ん?」
「関西弁て、カッコいいな」
「……そおか? 自己紹介、弄られたで?」
「聞きなれないだけだと思うけど。ていうか、カッコいいから大丈夫」
「大丈夫て……」
「あと、男らが嫉妬してた」
「ん?」
「イケメン転校生、いらねーって」
「……あほらし……」
「まあ、女の子らが超騒いでたし。 分かるけど」
クスクス笑う雅己。
「皆、すぐ慣れると思うよ。バスケ部に啓介のクラスの奴いるし」
「――――……」
「オレも、中2ん時に急に転校したからさ。やだよな、転校ってさー」
そんな風に笑う雅己。
まだ会って、ほんの僅か。なのに。
中身隠さず、全部さらけ出してくるみたいな……。
――――……それが、すごく心地良くて、何だか、すごく、不思議な……。
「啓介、バスケうまい?」
「……まあ」
「あ、自信ある?」
「まあ」
「すげー楽しみ! 早くいこ」
我慢できなくなったみたいで急に走り出した雅己。
ふ、と笑ってしまう。
「啓介、早く!」
呼ばれて。
嬉しそうな笑顔の雅己の後を追った。
◇ ◇ ◇ ◇
「やさしいケダモノ」本編はこちら↓です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/551897599/277503230
本編は大学生・雅己視点です。
こちらは、啓介の一人称で、書きたくなってしまって
ぼちぼち書いています。1話ずつ読み切りタイプです。
お付き合いいただけたら~(*'ω'*)。
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by悠里♡
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