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第2章
「楽しかったね」
しおりを挟むたくさん水遊びをして、シャワーを浴びて、休憩所でご飯を食べた。
それから、バスに戻って、帰途につくことに。
バスに乗る前のところで、「一番前、座っといて」と、啓介にそう言われて、運転手さんの後ろ、一番前の窓際に座る。
啓介の席には、ペットボトルを置いといて、確保。
全員が乗ったことを確認した啓介は、バスに乗り込むと、前に立って皆の方を向いた。
「お疲れ様でしたー。これで全部終わり。後は、高速のパーキングで降りて、おみやげ買うて帰る。それで大丈夫ですかー? なんかある人居たら、手ぇあげて」
啓介の呼びかけに、誰も手を挙げない。
「ほしたら、それで。運転手さん、お願いします。皆、シートベルトしてや」
皆、口々に、はーい、と言ったところで、啓介がオレの隣に座った。
「お疲れ――部長に戻ったみたいだね」
そう言ったら、啓介が、ふ、と笑って肩を竦める。
運転手さんが、出発します、とアナウンスして、車を走らせ始めた。
外側からアスレチックを見ながら、「楽しかったね」と啓介に言うと「せやな」と笑う。
駐車場を出て、車道を走り出すと、とたんに眠くなってくる。
ふわ、とあくびをしたところで、啓介も同じタイミングであくびをしてて。二人で、顔を見合わせて、くすくす笑う。
「水遊びした後って、なんか眠いよね……」
「プールの後とかも眠いもんな」
「なんでだろうね」
話していたら、ふと、後ろがやたら静かなことに気づいた。
腰のシートベルトはつけたままで、後ろを振り返ると、早くも寝てる人がいっぱい。
「結構寝てる」
「そうやろな」
ふ、と笑い合う。
「――啓介が一番、疲れたよなー?」
くす、と笑ってそう聞くと、啓介はオレをちらっと見やって、首を振る。
「オレより絶対お前のが疲れとると思う」
「そう?」
「何でも全力やもん」
「ちーがーうー。そういう意味じゃなくてさぁ。啓介はとりまとめとかしてたでしょ」
「オレは別に、そういうの、苦にならんから」
むむむ。涼しい顔してそんなこと言って。
隣でクスクス笑ってオレを見ている啓介を見返すと。
「オレは、雅己が楽しそうなの見とると、めっちゃ元気になるから」
「――」
「全力で全部遊んでくれて、おーきにな」
クスクス笑いながら、啓介がオレに囁く。
くすぐったいのと。
――なんか嬉しいのと。
なんか顔が綻ぶ。
「じゃあオレが一番疲れてるなら……」
「ん?」
「肩かして」
言いながら、啓介の肩に、少しよりかかる。
すぐに、ふ、と笑う気配。
「えーよ」
優しい声がして、逆の手で、頭をポンポンされる。
すぐに、うとうと、してくる。
――瞼、とろけそう。
くす、と笑う啓介の気配。
めちゃくちゃ、好き。――楽しかったなぁ、と思いながら。
ふ、と体から力が抜けていった。
(2024/11/24)
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