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第2章

「しっくり?」

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 当然、するーっと話を流して終わるところ。と思ったら。
 ……啓介が。

「そうなったら、どうします?」

 と言った。
 また皆が、えっと止まる。

「例えばそうなったら、皆どうするんかなーと、突然興味が沸いたんやけど」

 啓介は、冗談っぽく言ってから、皆の顔をぐるっと見回す。……多分、オレ達が今そうだって思う奴は居ないと思う。そう言う感じで軽くその言葉を口にして、啓介が笑う。

 オレは、今は何も言わずに黙ってよ、と心に決める。だってオレが余計なこと言うとバレそうだから。

 変なこと言うなよーと邪魔してもいいとこかも、だけど、それをしないで、オレが黙ってる理由は。
 ……さっき、オレと啓介が付き合ってるって言ったら、皆はどうするんだろうと。ピンポイントで考えてたことだったから、これはちょっと聞いてみたかった。まあ本気じゃなくて、冗談まじりの会話だとしても。

「んー? どうするって言われてもなぁ……」
「んー……そうだなあ?」

 と、皆、突然変な質問をされて、考えているっぽい。あれ、なんか思ったより、まじめに考えてるっぽい?? ちょっと待って、なんかそこまでマジで考えられると、何も言わないのはおかしいような。うーん、どうしよ、と、微妙な気持ちで焦ったその時。

「……あんま、変わんねーかも?」

 要が、のんびりとした口調で、そう言った。皆、なんとなく要の方を見る。すると、要、クスクス笑いながら。

「つか、なんか、しっくりくるかも」

 ははっと笑って言った要に、あーそうかも、みたいに、皆がほわっと、笑う。

「今更って感じかもなー」
 とか、言い出して、なんかその感じの結論に落ち着きそうになった時。

「ほな、しっくりくるて思う人ー?」

 啓介が手をあげながらそう聞いたら。
 はーい、と皆が笑いながら手をあげる。

「そうやて、雅己」
 ふ、と笑いながら啓介が言う。

「……知らない」
 ぽて、とオレは枕に突っ伏して、反応を拒否。

 なんか知らないけど、皆は、変なことを啓介が聞いたから、オレがちょっと怒ったみたいな感じで取ったみたいで、「あーあ、怒っちゃったじゃん」とか、そんな声が、突っ伏してるオレの上を飛んでいる。

「別に、こんなので、怒んないし」

 口元は枕に埋めたまま、顔を上げてオレが言うと、皆はまた、クスクス笑ってる。

 皆、こんな感じで笑いながらだし。全然本気じゃないみたいだし。今、こんなこと言ってて、本気で、付き合ってるって言ったら、実際どうなるかなんて分かんないけど。

 ……でもなんか。
 ここの皆は……。もしかしたら、あんまり変わらず居てくれる人も、多いかもしれない……とか思えて。
 ……なんか嬉しい気がしてしまった。

 啓介が、「近況続けて」とか言ったので、また皆が続きを色々話してく。
 しばらく聞いてる。

「雅己」

 ぽん、と背中を叩かれて。ふと横を見ると、啓介が、隣にうつ伏せに転がる。皆がわいわい言ってるのを見てから、啓介がオレと目を合わせる。

「おもろいなぁ、ここの奴らて」
「……そだね」
「嬉しかった?」

 少し小さな声で、聞かれる。

「……ん」

 顔が綻んでしまうオレに、啓介も、微笑む。


 ここの皆が、部活の仲間で。
 ……良かったなぁ、なんて。すごく、思ったりして。


 ……ていうか、啓介って、オレが思ってたこと、まるで分ってて聞いたみたいな?
 って、たまたま偶然だろうけど。……でもなんか読まれてそうな気もして。こわーい、と、苦笑。
 


 二日目の夜は。
 めちゃくちゃおしゃべりして、過ぎて行った。

 
 
 


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