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第2章
「ドキドキしすぎ」
しおりを挟む手持ち花火が少なくなってきた頃、啓介が、「皆、そっちに行って」と言い出した。言われた通り、啓介と少し離れた所に並ぶ。
「打ち上げとか噴出の、するから。誰か火ぃつけんの手伝って」
「はいっ!」
即、手をあげて、啓介の近くに行くと、ぷ、と笑われる。
「気ぃつけて。火つけて少ししたら、シュワって言って、噴きだすから」
「分かってるー知ってるしー!」
「一度導火線に火つけたら、花火が出なくても、覗き込むなよ?」
「子供じゃないしー!」
もう、と言いながら、着火の道具を受け取る。
皆から離れた所に、噴出の花火を三つ、並べた。
「こっちふたつつけるから、雅己、そこつけて」
「オッケー」
啓介に言われるまま、タイミングを合わせて、花火の導火線に着火。
皆がすこし静かに見守る中、花火に火がついて、火花が散った。
赤や青、白、キラキラした火花が、二メートル位、立ち上って、パチパチと飛び散る。
あたりがぱあっと明るくなる。
火をつけて、少し離れて見ていたけれど、向こう側に並んでる皆の顔が、明るく照らされて、皆、笑顔。楽しそう。
オレは、スマホを取り出して、花火も入れつつ、皆を撮影。
――――……なんか、めちゃくちゃいい写真。
ふっといきなり花火が燃え尽きると、暗くなって、シン、と一瞬静かになる。
「次行くでー」
啓介が言って、また別の花火を下に置いていく。
「雅己、つけて」
「ん」
また、別の種類の花火。
今度は扇状に広がって、それを見てる、皆の顔が青く光る。
結構長かった噴出花火の勢いがだんだん弱まっていって、また、周囲が静寂に包まれる。皆、余韻を楽しむみたいに、誰もしゃべらない。
綺麗だね、と誰かが言ったけれど、それも、なんだかすごく抑えた声で言ってる。
何度かそれを繰り返す。
「これが最後なー? 結構デカいらしいから、ちょっと下がるから」
さっきよりも皆から離れて、啓介が、下にふたつ、並べた。
「都会じゃなかなかできないやろうから、ちゃんと見とけやー」
クスクス笑いながら言う啓介に、皆、なんだかやたら素直に、「はーい」と返事をしてる。
「雅己。そっち頼む」
「うん」
……あーなんかこれで終わりなのかー。
……寂しいなぁ。
あ。そだ。
オレは、最後の火をつけた後。
さっきまでは、なんとなく花火から、離れて、啓介と反対側に散ったのだけれど。火をつけた後、オレは、啓介が下がった方に一緒に下がって、啓介の隣に並んだ。
「座ろ」
オレがそう言うと、啓介は、くす、と笑って、オレと啓介、少し端に、二人で座った。
確かに、今までのより大分、大きく噴き出した。
めちゃくちゃ綺麗。
パチパチ音を立てて、星みたいに光って、キラキラしてる。
「啓介ー」
「ん?」
「すっげー綺麗」
「せやな」
「……楽しかったね。全部」
「――――……せやな」
「なんかありがとねー」
ふ、と笑った啓介。
最後の噴出花火、花火もすごかったけど、煙もめちゃくちゃ凄くて、花火の向こう側に居る皆が全然見えなくなった。
「うわ、煙すご。全然見えないじゃん」
あはは、と笑ったオレは。
不意に、引っ張られて。
「んう」
ちゅ、とキスされて。
えっと固まる。
緩く散った煙が晴れた時には、もう啓介は立ち上がってて、向こうの皆も、煙すごーいとか言ってわーわー騒いでる。
「……オレは、お前がいるだけで、めちゃくちゃ楽しいんやけど」
「――――……」
「そうやって、いっつも楽しそうにしてくれるから、もっと楽しくさせようって、ほんまいっつも思う」
「――――……」
なんか、めちゃくちゃ優しい顔でオレを振り返って、そんな風に言う啓介に。めちゃくちゃドキドキして。
ちょっと悔しいオレだった。
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