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第2章
「呼ぶ声」
しおりを挟む一ゲーム終了。
うちの勝ち。
「やっぱこれって、現役のスタミナに負けた気ぃする……」
志門たちが苦笑しながら、どか、と体育館の真ん中に座った。
熱いし疲れてたしで、オレ達もそれぞれ横になったり、座ったり。
オレは大の字に転がった。
「……すげー真剣に走った」
そう言ったら、隣にいた志門に、くすくす笑われた。
「雅己が、けーすけ、て呼ぶのが聞けて、感動した」
「……感動って変だけど」
オレが苦笑すると、志門の周りの奴らも、「ある種、感動」と笑う。
「あ、なあなあ、チーム、シャッフルしない?」
「シャッフル?」
「そう。適当に入れ替えて、遊ぼう」
「はは。面白そう。いいね」
ね、と寝っ転がったまま、皆に視線を向けたら、「良いけど、もうちょっと休憩~」と苦笑してる。
「雅己、オレと一緒になろうよ」
志門が不意に言ってくる。ん?と顔を見上げながら、体を起こした。
「いいけど。え、指名制なの?」
「いや? なんか雅己に、名前呼んで欲しい」
「志門ー!って?」
「あ、オレもー!」
「え、名前、何?」
「そうし!」
「そうしね」
「オレもー」
「は? オレそんな名前覚えらんないし! つか、チーム決めてからにしようよ」
オレがしかめっ面で言うと、良たちが、不思議そうな顔でオレを見てくる。
「何で、雅己に名前呼んで欲しいとか、なってんの?」
「ああ……」
啓介がすごい苦笑いでオレを見てくる。
わーわー、言うな言うな、と思ったら啓介は、ぷ、と笑って口をつぐんでる。はー、よかった、と思った瞬間。
志門が、良たちに笑い出した。
「高校ん時の大会でさ、オレら、雅己が「啓介!!」ってめっちゃ呼んでるの、すごい見てたの。なー?」
「そうそう、あの感じで呼んで欲しいなって思っちゃうほどだったよなー?」
と。志門その他が、楽しそうに、オレのチームメイトたちにあれこれ話してる。
なるほどね、確かに呼んでた呼んでた、と大笑いの皆。
「他のチームにまで認識されてるとか、すげーな、雅己」
「うるさいなーもー、オレの声がよく聞こえるって話だろ。ていうか皆も名前呼んでたでしょ」
むー、と膨らんで言うと、志門たちが可笑しそうに笑う。
「そうそう、そんでもって、オレら、次の試合相手として、結構真面目に見てたから。余計だったけどね」
クスクス笑ってる志門たちに、もー言うなよーと文句を言うと。
「ていうか、今更じゃん」
「そうそう、今更。皆知ってるし」
仲間たちの言葉に、はーと、ため息。
啓介は可笑しそうに笑いながら、「どーやってチーム分ける?」と志門達に話しかける。
もー……結局皆にも、オレの「啓介呼び」が、全然知らないチームの中で有名だったの、バレたー。超恥ずかしいし。もー。
今更と言って、皆が特別気にしてないのも、なんかそれもまた逆にどうなの?って感じがするし。
はーやだやだ。はず!
ぷんぷんしてると、啓介がちょっと近づいてきて、オレに何か言いたげ。
「ん?」
耳を寄せると。
「オレを呼ぶみたいに、他の奴呼ぶなや?」
「え」
「えーな」
言いながらオレをじっと見つめてから、啓介はまた離れていって、何やら話しているけど。
もー、なんなの、ほんと!
笑ってたくせに、妬くなよー! もー!
意味分からん。もう。
(2024/3/27)
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