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第2章

「いまさら」

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 皆で一度宿に戻り、バスケの準備をしてから、昨日の体育館に向かった。
 志門たちのチームももう来ていて、体育館を覗いたら、志門たちが駆け寄ってきた。「よろしくー」と口々に言い合いながら、オレ達も中に荷物を置かせてもらった。

「まだご飯食べだばっかり?」
 志門の言葉に、「一時間くらい経ったかな」と啓介を見上げると、「せやな、それ位は経ってる」と返事。それを聞いた志門達は、「じゃあ少しウォーミングアップしたら試合する?」と聞いてきた。
 そうすることに決まって、オレ達はウォーミングアップを始めた。
 久しぶりの試合にわくわくで、準備運動にも熱が入る。


「啓介!」
 いつも通り、で練習していたのだけれど。
 オレがそう呼んだら、志門たちが、あ、とこっちを見たのが分かった。

 もちろんオレ、他の皆の名前も呼ぶのだけど。
 やっぱり圧倒的に、啓介を呼ぶ機会が多いのかも。

 ――――何回か呼んで、なんだかクスクス笑ってる感じを見て、んー、とちょっと考える。

 ポジション的に啓介と攻撃に行くことも多いし、パスしあうし。
 ……オレの声は、通るって言われることは、他でもあるから、余計聞こえやすいのかもしれないけど。

 うーん、なんか、あれだよね、
 高校生の時にそんなイメージで見られていて、でもって、今も、同じだーとか思われるの、なんかちょっと……嫌、ていうか、オレが呼ぶのは、しょうがないことなんだけど……。

 そんなことを頭の片隅で考えながら、練習時間が終了。
 試合開始になった。


 いつもなら絶対に、啓介! と呼ぶところを、ついつい、要や良とか、違う奴にパスしちゃったりして。パスが甘くなって取られたり、を何回かしてしまった。志門たちのシュートが決まったところで、「五分、水休憩、入れよう」と志門たちが言って、こっちも皆頷いた。
 普通の試合ではそんな休憩は無いけど、かなり暑いし、現役離れてる人も多いので、熱中症対策で、水休憩を入れようと決めていたんだけど。

「雅己、ちょっと来いや」
 啓介に呼ばれてしまい、水を持って体育館のはじっこに座る。
 冷たいタオルを頭に掛けられて、じっと見つめられる。

「練習ん時から思うてたんやけど」
「……」
「オレを呼ぶのおさえとる?」

 ……ですよね。気付くよね。

「……ん。ごめん。だって」

 そこまで言ったオレに、啓介は、クスクス笑いだした。
 あれ。怒ってるんじゃないのか。

「……まあ気持ちは、分かるけど」
「分かってくれる?」
「分かる。せやけど、呼べや」
「――――」

「今更やろ。お前がオレを呼ぶのなんていつもやん。ていうか、オレの調子がめっちゃ狂うし」
「……うん、そうなんだけど」
「負けるで? そんなん気にしてプレーしてたら」

 う。
 唇を噛んで。

 タオルで、顔を拭く。
 ――――……ん、と頷いた。

「ん。いつも通りで行く。ごめん――――ほんと、今更だった」

 もう気にしない、と啓介を見つめると。啓介は、ふ、と微笑んだ。

「オッケイ。皆んとこ行こ」
「うん」


 明るい笑顔でオレを見て、立ち上がった啓介に手を差し出されて、オレはその手を握った。ぐい、と引かれて立ち上がると、二人で並んで、皆のところに向かって歩き出した。


 ……ほんと。
 すぐばれるなあ。練習ん時からって……ほんとに、すぐじゃんか。



 苦笑が浮かんだ。

 

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