【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

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第2章

「じいちゃん子」

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「今まで食べた魚で、一番おいしかった」
「そらよかったわ」

 クスクス笑う啓介の視線が、ものすごく優しい。
 ……まあいつも優しいけど。

「生餌できたし」
「……ぷっ」
「あー何笑ってんだよ?」
「…………出来てたけどな、顔が……」

 クックッと笑ってる啓介をじっとり睨みつつ。
 先を歩いてる皆の方に、二人で歩いてる。またちょっと置いて行かれた。

「てか、頑張ったんだからいいじゃん。ていうか、あれを平気で出来る奴がおかしいー」
「慣れやなー」
「オレも次にはきっと慣れてて、あと、釣った魚も持てるようになるかも!」
「……そっちはどうやろなー」

 クックックッ。もう腹痛いわ、とか言ってる啓介に、むむむ、となってると。

「めっちゃびびってんやもん」
「……だってなんか、捕まえてごめんーてなっちゃって」
「まあ、分からなくはないんやけど」

 ぽふぽふ、と頭を叩かれる。

「まあそん時もオレが居るやろうから、任せとけや」
「……ん」

 頷くと、ふ、と笑って、啓介は目を細める。


「――――……」

 ふと浮かんだことに、ちょっと、ツキンと胸が痛む。


「……どした?」
「啓介?」
「ん?」
「オレより先に死ぬなよな」
「……はー?? 何やねん、突然」

「オレ、大好きだったじいちゃんがさ。来年も温泉いこうなー、一緒に露店いこうなーて言ってたすぐ後に、病気になってさ。三か月位で死んじゃったの」
「――――……」
「今の啓介の言い方、なんか思い出しちゃった……」

 じっと見つめ合ってると、少し先を歩いてた皆が、「二人おそーい」と言ってくる。

「すぐ行くわ」
 と答えてから、啓介が、オレを見て、苦笑した。

「オレらまだ若いから。病気とかのリスクは少ない気はするけど……まあ、分からんよな。何があるか」
「うん……そうなんだけど」
「――――……約束しよか」
「ん? 死なないって?」
「それは出来んけど」

 くす、と笑う。

「ちゃんと顔みて死ねるなら。できるだけ笑顔で別れよな」
「――――……」
「笑顔、残したいやん? そのあとずっと、その笑顔、思い浮かべて生きたいし」
「……うん」

 こく、と頷く。

「多分、雅己とは、死んでからも会えるから」
「……マジで?」
「ん。オレが会いに行く」
「……絶対?」
「生まれ変わるなら、そっちでも会いに行く気満々やから」
「……」
「安心しとき?」

 クスクス笑う啓介に、オレは、何だかすごく嬉しくなって、ん、と頷いた。


「そんなのほんとかよーて、思うけど……てもなんか嬉しい。ありがと」
「ん」

 ふ、と笑んでから、啓介は、歩きながらオレを見つめる。

「オレ、こないだ法事に行ったやんか」
「あ、うん。大阪帰った時な」
「ん。そこでな。坊さんが言うてたんやけど」
「うん」
「誰にも思い出されなくなったら、そこで本当に「死」なんやて」
「――――……あー……うん。なるほど」
「せやから、たまに思い出してあげて、思い出話とかしてあげて、みたいなこと言うてた。そしたら、心の中でずっと生きる、て」
「……うん」

 なるほど。
 ……そっか。と思ったら。なんだかじんわり。潤む。

「……そう思うとくのもええなーと思うて聞いてた」
「ぅん」
「――――……?」

 オレの声の調子に気づいた啓介が、首を傾げて、オレを見てから、苦笑い。

「泣くなや」
「泣いてないし。ちょっと、うるっとしただけだし」
「泣いてるやん」
「泣いてないし」

 はいはい、と啓介。

「……オレが思い出すたび、じいちゃんは生きてんのかーと思うと。ちょっと嬉しい」
「雅己、じいちゃん子やった?」
「うん」
「そか。じゃあ今頃、めっちゃ喜んでるんやない?」
「……うん」

 ふ、と笑って言う啓介の言葉に、ん、と頷いて。
 オレはなんとなく、空を見上げた。


「空、めーっちゃくちゃ、綺麗」
「せやなー……」


 ……啓介には何でも話せるし。何でも、ちゃんと考えてくれるから。
 やっぱ、すーっごく、好き。だな。


 生まれ変わっても会いに来てくれるのかと。そんなの分かんないけど。
 でも……なんか、嬉しい。




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