222 / 249
第2章
「高校の時から」
しおりを挟む翌朝。
明るい光に目が覚めた。窓にあるのはカーテンではなくて、障子なので、光がそのまんま入ってきてる。
「……まぶし……」
呟くと。ぷに、と頬を摘ままれた。こんなことするのは、一人しか。
目を頑張って開けると、片肘をついて頭を支えた感じでこっちを向いてる啓介と目が合う。
「……はよ」
なんか静かなので、小声で言うと、啓介がふ、と笑う。
「おはよ」
「……なんじ?」
「七時」
「ん……朝ごはん、何時だっけ……」
「八時」
「……そっか」
目をこすりつつ、聞き終えて、そのまま啓介に視線を向けた。
「起きてんの、啓介だけ?」
「ん、多分。まだ時間あるから起こしてない」
「そっか……」
小声で話し終えて、そのまま、じー、と見つめ合う。
……普段だったら、キスされるとこなんだろうけど。
さすがにしてこないな。ってでも、こんな風に、見つめ合ってるのも変だけど。ふ、と笑ってしまうと、啓介もクスッと笑う。
静かな、変な空間。
「今日さー、試合、出来るといいな?」
「せやな」
頷いた啓介が、ふっと笑う。
「何?」
「昨日も言っとったし。……よっぽど楽しみやねんな?」
「うん。楽しみ。……ずーっとさ、バスケ、できたらいいよな」
「せやな」
「たまにでもいいからさ。皆で集まってさ」
「せやなぁ」
ふ、と笑い合って、なんとなく見つめ合う。
バスケもだし。
……啓介とも、ずーっと、こんな感じのままで居られたらいいなぁ。
「なあ、雅己」
「ん?」
「朝風呂、行く?」
「え……うん、行く行く」
むく、と起き上がると、啓介が「早や」と、クスクス笑う。
「気持ち良さそう、温泉。いこいこ!」
「三十分で戻ればええやろ」
「うん」
こそこそ話しながら、寝てる皆を踏まないように、布団の間をすり抜けて、バスタオルだけ持って、大浴場に向かう。
廊下に出て、二人で歩き始める。
まだ旅館全体が、静か。
朝は気温が低いみたいで、涼しいし、何だかすごく、いい気分。
「なんか、すごくいいね、ここ」
「気持ちええな」
「うん。ほんとに。朝の空気、イイ。明日は、散歩いこ?」
「ええな」
そんなことを話しながら階段を下りていく。
何人かは朝のお風呂を楽しんでる人達が居るみたいで、カゴに服が入ってる。
ささっと脱いで、大浴場への扉を開く。
朝日が入って、すごく明るくて、昨日の雰囲気とはだいぶ違う。
「なんか眩しいねー」
「せやな」
振り返って笑いながら言うと、啓介も楽しそうに笑う。
ちゃちゃと体を洗って、湯舟に入ると、ちょうど太陽が見える。眩しくて、その光で、水面がキラキラしてる。
「んー……」
思わず、ぎゅー、と目をつぶって、そんな声を出して。
「どないした?」
啓介の声に、ぱ、と目を開けて。
「超きもちイイ~!」
そう言ったら、啓介は、ははっと笑って。
「せやなー」
と、また言って笑った。
「……啓介、また、せやなーばっかりだよ?」
笑いながら言うと。
「オレもそう思うんやけど。ほんまそう思うってだけやから」
「……まあ、啓介の、せやなーは、嬉しいからいいんだけどさ」
「嬉しいん?」
「うん。嬉しい」
ふふ、と笑ってしまうと。
啓介も、隣で、そーか、と笑う。
「……なんかオレらって、結局、なんだかんだで二人で居るよな」
「せやな……ってなんやもう、口癖みたいんなってきた」
はは、と笑う啓介。
「まあでもな」
「ん?」
「皆が居っても、結局二人んなるのは、高校ん時からやし」
「――――……そっか」
ちょっと考えたけど。
……確かにそうだな、と思って。
なんかどうしても、笑ってしまう。
(2023/11/27)
60
お気に入りに追加
1,862
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-
悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡
本編は完結済み。
この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^)
こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡
書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^;
こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる