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第2章

「高校の時から」

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 翌朝。
 明るい光に目が覚めた。窓にあるのはカーテンではなくて、障子なので、光がそのまんま入ってきてる。

「……まぶし……」

 呟くと。ぷに、と頬を摘ままれた。こんなことするのは、一人しか。
 目を頑張って開けると、片肘をついて頭を支えた感じでこっちを向いてる啓介と目が合う。

「……はよ」
 なんか静かなので、小声で言うと、啓介がふ、と笑う。

「おはよ」
「……なんじ?」
「七時」
「ん……朝ごはん、何時だっけ……」
「八時」
「……そっか」

 目をこすりつつ、聞き終えて、そのまま啓介に視線を向けた。

「起きてんの、啓介だけ?」
「ん、多分。まだ時間あるから起こしてない」
「そっか……」

 小声で話し終えて、そのまま、じー、と見つめ合う。

 ……普段だったら、キスされるとこなんだろうけど。
 さすがにしてこないな。ってでも、こんな風に、見つめ合ってるのも変だけど。ふ、と笑ってしまうと、啓介もクスッと笑う。
 静かな、変な空間。

「今日さー、試合、出来るといいな?」
「せやな」
 頷いた啓介が、ふっと笑う。

「何?」
「昨日も言っとったし。……よっぽど楽しみやねんな?」
「うん。楽しみ。……ずーっとさ、バスケ、できたらいいよな」
「せやな」
「たまにでもいいからさ。皆で集まってさ」
「せやなぁ」

 ふ、と笑い合って、なんとなく見つめ合う。

 バスケもだし。
 ……啓介とも、ずーっと、こんな感じのままで居られたらいいなぁ。

「なあ、雅己」
「ん?」
「朝風呂、行く?」
「え……うん、行く行く」

 むく、と起き上がると、啓介が「早や」と、クスクス笑う。

「気持ち良さそう、温泉。いこいこ!」
「三十分で戻ればええやろ」
「うん」

 こそこそ話しながら、寝てる皆を踏まないように、布団の間をすり抜けて、バスタオルだけ持って、大浴場に向かう。

 廊下に出て、二人で歩き始める。
 まだ旅館全体が、静か。
 朝は気温が低いみたいで、涼しいし、何だかすごく、いい気分。

「なんか、すごくいいね、ここ」
「気持ちええな」
「うん。ほんとに。朝の空気、イイ。明日は、散歩いこ?」
「ええな」

 そんなことを話しながら階段を下りていく。
 何人かは朝のお風呂を楽しんでる人達が居るみたいで、カゴに服が入ってる。

 ささっと脱いで、大浴場への扉を開く。
 朝日が入って、すごく明るくて、昨日の雰囲気とはだいぶ違う。

「なんか眩しいねー」
「せやな」

 振り返って笑いながら言うと、啓介も楽しそうに笑う。
 ちゃちゃと体を洗って、湯舟に入ると、ちょうど太陽が見える。眩しくて、その光で、水面がキラキラしてる。

「んー……」
 思わず、ぎゅー、と目をつぶって、そんな声を出して。

「どないした?」
 啓介の声に、ぱ、と目を開けて。

「超きもちイイ~!」

 そう言ったら、啓介は、ははっと笑って。

「せやなー」
 と、また言って笑った。

「……啓介、また、せやなーばっかりだよ?」

 笑いながら言うと。

「オレもそう思うんやけど。ほんまそう思うってだけやから」
「……まあ、啓介の、せやなーは、嬉しいからいいんだけどさ」

「嬉しいん?」
「うん。嬉しい」

 ふふ、と笑ってしまうと。
 啓介も、隣で、そーか、と笑う。
 
「……なんかオレらって、結局、なんだかんだで二人で居るよな」
「せやな……ってなんやもう、口癖みたいんなってきた」

 はは、と笑う啓介。

「まあでもな」
「ん?」
「皆が居っても、結局二人んなるのは、高校ん時からやし」

「――――……そっか」

 ちょっと考えたけど。
 ……確かにそうだな、と思って。

 なんかどうしても、笑ってしまう。



 
(2023/11/27)
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