【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

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第2章

「一日目終了」

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 皆とカラオケ、久々。
 人のに合わせて皆で歌ったり、時たま喋ったりで、大騒ぎ。
 楽しすぎる。

「次誰―?」

 歌い終わった奴が言うので画面を見ると。

「あ、次啓介ー」
 オレが言うと、マイクが啓介に回ってくる。

「あっちに立って歌えば?」

 先輩が言ったけど、「えー、ここで歌ってよ」とオレが言うと、ちら、と啓介に見られて。啓介は座ったまま歌ってくれることになった。

 カッコいい曲。
 啓介の声にぴったり。……大好きだなー歌う声。
 歌もうまいって何なの、って昔思ったよなぁ……。

 一曲たっぷり楽しんで。しかも真隣の席で、ナイス。
 なんて思って、歌が終わると同時に大拍手をしていたら。

 一緒に皆も拍手してたんだけど。
 なんか若菜がすっかり、「先輩カッコいい」みたいな顔になってるのを目撃。

 あ。……このカッコいい歌、歌わせなきゃよかったかなぁ。
 めちゃくちゃ、好きって気持ちを上向かせてしまったかもとか思いつつ。

 なんか分かる、若菜。
 今の歌ってた啓介、カッコいいよな……すっごい分かる。
 なんだか、ちょっと同士みたいな気分が芽生えてしまいそうだけど、なんかそれも違うよなぁ。オレ多分、若菜にとったら、恋敵みたいな立ち位置だし。

 でも、啓介のこと好きな気持ちは、語り合いたいくらい。
 お互い片思いとかだったら、めちゃくちゃ話したかなぁ。……ってないか。
 オレ男だし。そんな女子たちみたいなことは出来ないか。

 啓介の次、自分の歌を歌いながら、頭の中は、そんなあほな感じのことばかり。歌い終わると、啓介が、ふ、と笑う。

「めっちゃええな」

 そんな言葉に、ん、と嬉しくて、笑い返す。マイクを次の奴に回して、しばらくは歌ったり話したり、していたのだけど。

 その内、なんだか、大きなカラオケの曲と歌すら、子守歌に聞こえきた。

「――――……雅己?」
 すぐ近くで呼びかけられて、ん、と見上げると。近くに啓介の顔。
 うわ、びっくりした。と思ったけど、すぐに、自分が啓介に寄りかかって、ウトウトしてたことに気づいた。

「寝とった?」
「あ、うん。今寝てた」
「こんな音デカいとこで、よぉ眠れんなぁ?」
 クスクス笑われて、苦笑い。

「何かいま、指の先まで眠い感じする……」

 ぼー、と啓介を見ると、ぽんぽん、と頭をなでながら、啓介が立ち上がる。

「オレら先帰るわ」
「どしたー?」

「雅己がもうダウン。ほら、立てや?」

 啓介がオレの腕を掴んで、引く。立ち上がって、啓介と一緒に、皆の前を抜けて、ドアのところで振り返った。

「おやすみー」

 言うと、皆、「死ぬほど眠そうじゃん」と笑うけど。
 ……確かに超眠い。

「明日試合するかもやし、皆も早めになぁ?」
 啓介が言って、皆がわーと何か返事をしてて、そのままドアが閉まった。

「あれは寝ないやろな……」
 
 苦笑いの啓介が、オレの背中に手を当てる。

「こっちはすぐ寝そう」
 クスクス笑ってる啓介の声が優しい。

「ごめん……啓介まだ居たかった?」
「お前が行く言うたから来たんやし。もうお前歌うの聞いたから、ええよ」
「……はは。何それ」
「オレお前の歌う声、好きやから」

 ……まったく同じことさっき思ってたような。
 ふ、と笑ってしまう。

「オレも好き。啓介の歌」
「……そか」
「うん」
「……楽しい? 旅」
「うん。すごく」

 応えると、啓介は、笑いながら、オレの頭を撫でてくる。

 なんか。ほこほこしながら、部屋に戻り。
 さっき寝てて、目が覚めて話してた人達に、すげー眠そうと笑われながら迎えられる。

 あくびを繰り返しながら歯を磨き終えると、布団に吸い込まれた。
 隣の布団に入った啓介をうとうと見ながら、あっという間に眠りについていた。


 旅、一日目、終了。
 


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