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第2章
「大事」
しおりを挟むだんだん宿に近づくにつれ明るくなってきたので、もう手はとっくに離しているけど、距離はすごく近いまま。のんびり色々話しながら、宿にたどり着いた。
「今日疲れたね」
「せやな、結構もりだくさんやったかもな」
「うんうん、そう思う。朝も遠かったし散歩してー、バーベキューしてー、オレらはバスケしてー、でその後またバスケしてー、でご飯で、また散歩してるもんね」
「暑かったしなー」
「うんうん。バスケも久しぶりだったし。疲れた」
「ほな、もう寝るか?」
「うん、とりあえず、お布団入ってゆっくりしよっかなあ~」
旅館に入り、皆の居る部屋のドアを開ける。
「ただいまー」
「おー、ちょうどいいところに帰ってきたな」
布団に皆転がってるかなーなんて思ったら、結構な人数が立ち上がってて、そんな風に言われる。
「え? 何がちょうどいいの? どこ行くの?」
「カラオケ空いてて、借りてきた。行く?」
「え、マジで?」
わーい、と笑顔で、くる、と啓介を振り返ると、啓介は苦笑い。
「眠いんは?」
「ん、目、覚めた」
「なんやそれ」
ぷ、と笑われて、えへへ、と笑い返す。
「行くでしょ?」
「ああ。行く行く」
啓介が笑いながらそう言ってくれる。
「皆行くの?」
「寝てる奴は置いてく」
「ああ、確かに爆睡してる……」
何人かはもうぐーぐー寝てた。
クスクス笑いながら、電気をひとつ落として、そのまままた部屋を出る。
廊下を皆で進みながら。隣の啓介にちら、と見下ろされる。
「お前、もう布団転がる言わんかった?」
「カラオケ、好きだし。啓介もでしょ?」
「今はどっちでも良かったな」
「オレ歌いたいし。お前の歌も聞きたい」
「はいはい」
啓介はクスクス笑って、頷く。
カラオケルームは、二十人くらいは入れるパーティールームみたいな部屋だった。若菜も来てたから啓介の隣に来るかなーと思ったけど。今回はなんとなく、歩いてたまんま、皆が入った順に座ってったから、オレが、啓介の隣。
啓介の歌、好きだから。隣で聞けるのは嬉しいかも。
オレは密かに、ご機嫌だったりして。
飲み物を頼んでから、皆好きに曲を入れていく。タッチパネルが回ってきて、オレは隣の啓介を見つめた。
「啓介、何歌う?」
「んー……? なんでもええな。好きなの入れて」
「あ、じゃあこれ歌って、すっげーうまかった気がする」
「ハードルあげんなや」
「確かうまかった! これでいい?」
「もう、ええよ。好きにしいや」
苦笑いだけど、頷いてくれるので、タッチパネルで曲を予約。
オレはあれにしよ~と思って、曲を探そうと思っていたら。
「そしたら雅己はあれがええ。貸して」
「え。あ。うん」
ま、なんでもいっか。そう思って、啓介にタッチパネルを渡した。
少しして、ぴぴぴ、と音がして、啓介が入れた曲が画面の上に表示される。
――――……あ。
「これでええ?」
「……ん。ていうか。入れようとしてた」
「え。そうなん?」
「うん。今から探そうとしてた」
言うと、啓介は、ふっと笑う。
「これ歌ってんの、気持ち良さそうで好きやねん」
「オレも。歌いやすくて、好き」
隣に座ってる啓介に、ふ、と笑う。
……めちゃくちゃ何万曲と曲があるし、オレ達一緒にいっぱいカラオケ来て、色んな曲歌ってんのに。
こういうのがぴったり合うのって。すごい。
ずっと一緒に居るからって言ったらそうだけど。でもやっぱり。
……こんな相手、啓介しか居ないんじゃないかなあなんて。
すごーく大事な気がしてしまう。
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