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第2章

「いますぐ」

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「雅己が浮気する気がない、いうんはなんとなく分かった」
「うん」

 キスが離れて、くしゃくしゃと髪を撫でられる。
 オレはクスクス笑いながら。

「分かってくれてよかったよかった」

 二人で並んで、また河原をゆっくり歩きだす。

「せやけど、そういうハードルが高い低いで言うたら、オレのが高いと思うんやけどな?」
「えー。何でー?」

 啓介は別に初めてでもないし、オレよりはハードル低そうだけど。と思いながらも、何も言わずに啓介を見つめ返すと。
 啓介は、ぷに、とオレの頬を潰して、手を離した。

「お前を裏切って、オレが浮気した場合で、最大にやばいンは、まっすぐ向かい合っていられなくなることやと思うんよ」
「――――……」

 啓介の言葉にちょっとびっくりして、オレが動けなくなってると。
 
「意味分からん?」
 と啓介が笑う。

 意味が分からないんじゃなくて。
 ちょっと。なんか感動しそうで黙ってるだけなんだけど。

「お前騙して嘘ついて、お前のその目、まっすぐ見れなくなるなんて、 絶対嫌やから。せえへんよ」

 うわー。……なんか啓介って。
 …………ほんと好きかも。

「お前とすんのがいっちゃん可愛ぇと思うてるし。なんでわざわざ他の奴とするんか意味もわからんし。雅己みたいに全部可愛ぇ奴、オレにとっては他には居る訳ないと思うから」
「――――……」

「知り合うてから、ずっと、何してても可愛ぇと思うてるし。この先も、そう思わなくなることはないと思う。大事やなーていうんが、重なってくだけや。そんな奴、中々居らんと思うんよなぁ」

 ……なんだかなもう。
 啓介の方が、よっぽど直球っていうか、ど真ん中っていうか。恥ずかしいぞ。と思うのだけど。


「……けーすけ」

 とことこ近づいて、ちゅ、と口づけた。

「……もうオレ……今抱いてほしいかも」
「は?」

「……て思うくらい、好きだったかも。今」
「残念やけど……ここではちょお無理やな」

 クスクス笑って言う啓介に、「……は? ちげーし!! 言っただけだし! ここでなんて言ってねーし!!」なんかすごく、恥ずかしくなって、叫ぶと。

「分かっとるよ」
 啓介も笑って、オレの頭をポンポンとたたく。

「……にしても、珍しいこと言うたな、雅己」

 クスクス笑う啓介に。

「だってなんか、オレをまっすぐ見れなくなるから嫌、なんて。そんなこと言われるとは思わなかったし」
「せやかて、いっつもお前、オレをまっすぐ見るやろ。会うた時からせやった」
「……そう??」
「まっすぐ見てくんのほんま好きやから。嘘ついたら、そらすことになるやろ、絶対」
「そうかもね……」

「まあ、さ」
「ん?」

「んなこと言うてても、浮気する奴は居るんかも、しれへんけど」
「そうだねぇ……誓ったら守られるなら、誰だって結婚式で神様の前で誓うもんねぇ」

 二人で、苦笑いで見つめ合う。


「でもなんか。オレは平気だと思う」
「オレも平気やと思う」

「根拠ないじゃんー」
「んなこと言うたら雅己もやろ?」

 クスクス笑い合って、見つめ合う。
 

「オレは、ずっとこんな風に居たいから、っていうのが根拠かな……」

 んー、と考えながら言ってたら。
 また、ちゅ、とキスされる。


「それも一緒やなー」

 ふ、と笑って、啓介がオレの手を引いて歩き出す。


「暗いとこだけこーして歩いて帰ろ」
「暗いとこだけな?」


 クスクス笑いながら、啓介の隣に並んだ。




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