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第2章
「好きな気持ちとか」
しおりを挟むその後。皆が帰るといって、土産屋を通って帰ろうと動き出した時。
「雅己」
啓介に呼ばれた。
「ん?」
「向こうから帰ろ」
「川の方? ん、いいよ……二人で?」
「ん」
頷く啓介に、オレは頷いて、少し先を歩き出してた要に近づいた。
「ちょっと河原の方から帰る。皆と先に帰ってて?」
「んー、了解」
要が笑って頷く。
オレは、啓介の側に戻って、見上げる。
「いこ」
ふ、と微笑む啓介に、頷いて歩き出す。
「ていうか、二人きりにならないって言いながらさ、結構なってるけど」
「まあ。別にええんやない? オレらが仲良えのは、皆知ってる」
「そうだけど。どしたの? 何か話したいことある?」
そう言うと、啓介はちらっとオレを見て、クスッと笑う。
「沙希に迫られてたって聞いたし? オレもずっと若菜が居ったし。帰りくらいは一緒でええかなーと思うた」
「ああ……」
さっきの沙希の話。迫られたっていうのかなあ?
何だか笑ってしまいながら、さっきの沙希に言われたことを、啓介に言ってみる。
「あれって、迫られたっていうのかなぁ?」
「まあ、沙希がほんまにお前のこと好きなんは分かるな」
啓介は、ふ、と笑う。
「なんでも一生懸命で、楽しそうなとこって。めっちゃ分かる」
「そう? ……ていうか、皆も一生懸命だし、楽しそうだよね?」
「まあそうかもやけど……雅己はそれがなんや可愛いからな」
「――――可愛いって……」
苦笑い。
「沙希とオレが、お前を見る視点が同じちゅーのがちょっと笑えるけど」
「……うん、そーだね。なんか可笑しいなって思うのは分かる」
ふふ、と笑ってしまうと。
啓介は、んー、とちょっと考える素振り。
歩いている河原は、真っ暗で。
近くにいるから顔が見えるって感じ。静かだから、オレと啓介の声も、すごく小さくて済むし、なんだか自然とゆっくりになる。
「でもな。そうなると、沙希がお前を好きなんは、本気やろなーて思う」
「それは、啓介と同じ視点だから?」
「ん。ちゅーか……明るくて楽しそうなお前と、一緒に居たいって思うんやろうなーって。側に居たいとかそういうん、強いんやろうな」
「そうなのかな……。まあでも、オレ、好きな人がいるとは言っといたからね。来年の三月の時に、告白するかは決めるって。オレが好きな人を好きなままなら、断るからねって言っといたよ」
「沙希はなんて?」
「沙希の返事は……オレを好きなら告白するけど、他に好きな人が出来たらしないってさ。まだ半年も先だから、分かんないって」
そう言うと、啓介は、ぷ、と笑う。
「沙希、ほんまおもろいな」
「うん。面白いよね」
何だかクスクス笑ってしまう。
「まあでも三月ってそんな先やないし。別れる訳ないから、沙希には悪いけど。諦めてもらわんと」
「そのセリフ、若菜にもだよ。……若菜が啓介好きなのは、真剣だと思うし」
「――――……せやな。断らんとな」
「……可愛い後輩たち、だけどねー」
なんとなく、ちょっと黙る。
好きって言ってくれるのを断るのって、やっぱり、ちょっと、辛いよなあ……。
「……まあでも、オレら、彼女居ないて言うてたら、この先も多分、こういうんは、あるよなぁ? 結構モテるし。オレら」
「自分で言うなよなー。オレはそこまでモテないし。啓介と一緒にすんなー?」
クスクス笑って言うと、「気づかんだけやんか」と啓介は苦笑い。
「つか、オレ、そんな鈍くないしー」
べー、と舌を見せると、啓介は何か言いかけて、笑いながら首を振った。
「ま、ええわ。気付かんのは、それはそれで都合ええし。って前もこれ言うたな」
啓介はクッと笑いながら、オレを見つめる。
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