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第2章
「要、すごい」
しおりを挟む「オレさあ、雅己のそういうとこ。すごくいいな―と思う」
「そういうとこ、って?」
聞くと、ふ、と微笑んで、要がオレを見つめる。
「なんだろ。自然っていうか。思うことにまっすぐな感じ? っつーのかな」
「……そう??」
「そのまま、奪うとかでも諦めるとかでもなく、好きで居れば、みたいなさ」
「……だって、好きなもんは好きでしょ」
「まあ、そうなんだけどね」
クスクス笑う要は、そのまままた星に目を向ける。
「多分、啓介もそういうのが好きなんだろうなーって勝手に思ってる」
どき。
啓介も好きって。
「昼間も言ったけど。皆はさ、雅己が啓介を好きだからみたいに思ってる感じがあるじゃん。確かに高校の時のイメージだと、雅己が啓介んとこによく行ってた気はするから」
「……皆そのイメージ?」
「だって、行ってたじゃん。クラス違うのに、啓介んとこ。部活ん時も、いっつも啓介とわーわー言ってたし」
思い出すかのように言いながら、可笑しそうに笑われて、昔のオレって、とちょっと苦笑い。
「でも啓介は、啓介が好きじゃないと、受け入れないよなーて思うんだよね」
「……そう?」
「皆と仲良い奴だけどさ、一緒に暮らすとかは、誘われたからってしないと思うんだよな。……ていうか、雅己のことがすごく好きなのは啓介の方だよな?」
「……そ、うか、な」
……どきどき。
今言ってる、好きって。
友達、の好きだよね??
なんか要って、人をよく見てるから、ドキドキしてしまう。
「雅己と居ると楽だなーと思うもん、オレ」
「……それは、ありがと。てか、オレも、要と居るの楽。黙ってても、全然苦にならないっていうか。落ち着くし」
「そっか」
はは、と笑って要が、それはオレもそう、と言う。
「他の友達にもこの話してさ、それなりに考えてくれて、色々言ってくれたんだけど」
「うん」
「雅己の言ったのが、一番オレにあってるかも。まあまだ気になる、くらいだし。普通に仲良くしてみる」
「ん。頑張れ」
「ああ」
にっこり頷く要に、オレもうんうん、と頷いて見せる。
「いこっか、皆のところ」
要がゆっくり歩きだすので、オレも並んだ。
「久しぶりに、部活の皆でこんなにゆっくり居るとさ、昔に戻ったみたいでいいよな」
「うんうん。だね」
「高校、楽しかったよな」
「うんうん。また、こういうのしようね。ずっと出来たらいいよなー?」
「そうだな。……つか、雅己と啓介って、いつまで一緒に暮らしてるんだろうな?」
クスクス笑って、要が言う。
「いつまでって?」
「大学の間は続きそうだけどさ。就職して……も続くか。どっちかが結婚とか考えた時にやめるのかな」
「あー……そう、だね。どうだろ」
この質問ってことは、まだ要にも、バレてないってことかな。
ふむ。結婚かぁ。……啓介としてたりして。
ふふ、と笑ってしまいそうなのをこらえていると。
はは、と要が笑い出した。
「ん? 何で笑ったの?」
「あ、いや……」
口元押さえながら、要がオレを見て、クスクス笑う。
「雅己と啓介が結婚しますって言っても、ふーん、て感じだなーって思ったら、ちょっと笑っちゃった」
「――――……」
ちーん。
なんか同時に考えてること同じってすごい。
とは言えずに固まってると。
「ああ、嘘嘘、固まんなって。ちょっとふっと考えちゃっただけ」
オレが固まってる理由を勝手に解釈してくれた要がクスクス笑って、オレの背中をポンポンとたたく。
「いこ、ほら、啓介、こっち振り返ってるし」
確かに、すごく先で、待ってる啓介が見える。
一緒に少し早く歩き出しながら。
要って、やっぱ、すごいな。
と笑ってしまった。
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