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第2章
「いつか」
しおりを挟む「夜、雰囲気違うなー?」
皆でゆっくり河原を進む。
暗くて、足元も見にくいので、なんとなくゆっくりになってるんだけど。
「すごい静か」
水の流れる音だけが聞こえて、風が吹くと、涼しい。
「見てみて、上」
ふと見上げた夜空は、星がたくさん。
あんまり見た記憶がない位の星空に、皆に一言告げたまま、ぼーと見つめる。
すっげー綺麗。
なんかこれだけでも、来て良かったかも……。
あの三角ってなんて星座だっけー。夏のなんとか……。
全然覚えてないなー、何か習った気がするんだけど。
まいっか。とにかく、綺麗。
「首、おかしくしそうやな」
隣で、石を踏む音がして、啓介の笑いを含んだ声。
「うん。……めちゃくちゃ綺麗だよなー」
「せやな」
「……これでさぁ、いつもの街はさ、いつも通り、明かりがぴかぴかしてるのかと思うと、すげー不思議だよな?」
「せやなー……」
「向こうも星がもっと見えたらいいのにな?」
「ん。せやな」
「そしたらいっつも夜空、見るのになー?」
「せやな」
「つか、せやな、ばっかり」
クスクス笑いながら啓介を見ると、啓介も星空からオレに視線を戻した。
「せやかて、おんなじ風に思うから。そうなっただけやし」
「……まあそうなんだろうけど」
ぷ、と笑ってると。
前で同じように星を見ていた要が、振り返って、笑う。
「お前らの会話ってさー」
「ん?」
「なんていうか……夫婦みたいんなってきた?」
クスクス笑われて、啓介と顔を見合わせる。
「そう? どこが?」
「んー。分かんないならいいけど」
なんか追及する気もしないし、啓介の顔を見たら、にこ、と笑って何も言わないので、もうそれでいっか、と思ったら。要がもう一度オレ達を振り返った。
「んー、なんかさ、ずっと一緒に居るのが前提みたいな感じってこと」
「ん?」
「夜空見るのになーとかさ。まあ一緒に暮らしてるからそうなんだろうけどさ」
「うん。……そだね」
確かに。普通に、啓介は一緒に見る前提で話してた。
「まあ、オレら夜一緒やからな。自然とそうなるな」
啓介が、ほんとに普通のことみたいに、言って、だよな、と要が応えてる。
世には、多分友達同士で一緒に住む人たちだって、居るだろうから、別に変なことではない。
オレ達が仲がいいのは、皆知ってるし。
なんなら、オレが押しかけてて。啓介に彼女出来たら追い出される、とか、先輩達、あれきっとマジで心配してたみたいだし。
……だから、多分、誰も、オレ達の仲を疑ってるとかは、無い。
要は今、夫婦みたいとか言ったけど、多分それも言っただけ。
オレ達が付き合ってると思ってる奴は、今のとこ居ないと思う。
「今度遊びに行って良い?」
「あぁ、えーよ。な?」
「うん。もちろん。酒盛りしよ酒盛り!」
「おーいいな」
要との話を聞きつけた皆も、飲めるようになったら飲み会しような、みたいな話になって、静かな河原に、オレ達の声だけが、すごく響く。
いつか。
……要とか。ほんとに仲良い奴だけでもいいから。
ほんとのこと言えるようになったらいいなあ。
その時。啓介のこと、ほんと好きだからって、言えるようになってたらいいな。
楽しく騒いでる皆に、笑いながら。
啓介と目が合うと。ふ、と笑んでくれる。
皆と居る時、一瞬だけ、笑ってくれるの。
ちょっと……というか、かなり嬉しいということに、ここに来て気づいた。
思うと、ずっと前から。そうだったかも。
啓介とはよく目が合って、そうすると笑ってくれて、オレも笑い返して。
そんなのを、ずっとやってきてた気がする。
――――……今でも、ほんとに好きだからって、言えるかもだけど。
もうちょっと長く暮らして、オレ達大丈夫、て、もっと思えたら。
いつかちゃんと、話せるかな。
なんて。
綺麗な星空見上げながら。
ちょっと思った。
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