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第2章
「勝てない」
しおりを挟む買ったお土産を部屋に置きに戻って、自分の荷物の上に置く。
皆もそれぞれ、荷物を整理したり、もう敷いてあった布団に、「ここオレでいい?」とか言いながら、転がってたりしてる。
「布団の場所決めた方がええかな」
啓介がそう言うと、なんとなく体育会系の名残りで、先輩達から決めていく。オレは、窓際の荷物のところにいたら、啓介が、雅己はそこ?と聞いてきた。
「オレ、どこでもいいけど……」
そう言うと、寝相悪いから、そこでええやん、と笑う。
むむ、オレ別に寝相悪くないけど、と思ったら。
「ほしたら隣はオレが転がってくの防いでやるか。しゃあないな」
とか言って。
……まんまと、不自然なく、隣に来た。
「雅己、こっちまで転がってくんなよー」
啓介の隣に居た先輩が笑いながら言ってくる。
「そんなとこまで行かないですよー」
苦笑いで答えると、ほんとかー?とか笑われる。
……すっかり寝相悪いキャラにされてしまったけど。
多分、それは、啓介がオレを囲ったんだと理解。
立ったままの啓介を、ちろ、と見上げると、啓介はオレに向けてだけ、ニヤ、と笑ってる。
まあ分かってたけど、ああやっぱり、と思う。こういうとこ。ウマいよなー。なんか感心してしまう。
他の部活との練習場所の取り合いとか。
なんかそういうの、啓介に行かせとけば大体うまくいくって、皆言ってたっけ。うん。勝てる気はしない。
「雅己、散歩行く?」
「あ、中庭?」
「河原も星が見えて綺麗やて言うてたで」
「あ、行く行く行きたい」
立ち上がりながら言うと、啓介がふ、と笑う。
「皆も行く?」
オレの言葉に、先輩たちは全員休むって答えたけど、行くーと立ち上がる奴らも。隣の部屋に居た女子達は、皆出てきた。食べすぎたから散歩したいーとか言ってる。
結局十人位で部屋を出た。廊下を進んで、中庭に出ると、樹々が適度な光でライトアップされてて、すごく綺麗。
「わー、鯉が居るー」
鯉の居る池の周辺も綺麗になってて、なんかすごくイイなーとしゃがんで覗き込んでいると。
「落ちんなや?」
啓介が後ろから笑いながら声をかけてくる。
「押さないでよね?」
「押さなくても、なんかお前、落ちる気がして……」
苦笑いをしながら、啓介がオレの肩を掴んで押さえている。
「え、オレ、そんなアホだと思ってる?」
「んー……どうやろ。まあ……とりあえず立っとけや」
腕を引かれて、立ち上がらせてくれるのだけれど、なんだか納得いかなくて口をとがらせる。
「絶対落ちると思ってるだろ」
「そんなことはないけどな?」
クスクス笑う啓介を、むむーー、と睨んでると。
「雅己、こっちに金魚もいるぞー。鯉と金魚の餌売ってる」
なんて、声がかかる。
「それ子供がやるんじゃねえのー?」
「お前には似合うから、やれば」
「どういう意味だよー」
言いながら、声の方に向かう。後ろで啓介がクスクス笑ってる。
「餌、買うたろか?」
「え。いいの?」
「財布持ってきてないやろ」
「うん。置いてきちゃった」
「やりたそうやもんな。えーよ」
「ありがと」
ちょっとやりたかった。と思いながら、啓介を振り返ると。
啓介は、ぷ、と笑う。
「ほんま、お前は」
「ん?」
「なんでも楽しそうで。感心するわ」
「んー……そう??」
うーん、と考えてから。
「そういうとこが、好き? とか?」
くす、と笑いながら、完全冗談で、こっそりと言ったら。
「ああ、せやな」
と笑まれて、かなり恥ずかしい。
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