211 / 249
第2章
「勝てない」
しおりを挟む買ったお土産を部屋に置きに戻って、自分の荷物の上に置く。
皆もそれぞれ、荷物を整理したり、もう敷いてあった布団に、「ここオレでいい?」とか言いながら、転がってたりしてる。
「布団の場所決めた方がええかな」
啓介がそう言うと、なんとなく体育会系の名残りで、先輩達から決めていく。オレは、窓際の荷物のところにいたら、啓介が、雅己はそこ?と聞いてきた。
「オレ、どこでもいいけど……」
そう言うと、寝相悪いから、そこでええやん、と笑う。
むむ、オレ別に寝相悪くないけど、と思ったら。
「ほしたら隣はオレが転がってくの防いでやるか。しゃあないな」
とか言って。
……まんまと、不自然なく、隣に来た。
「雅己、こっちまで転がってくんなよー」
啓介の隣に居た先輩が笑いながら言ってくる。
「そんなとこまで行かないですよー」
苦笑いで答えると、ほんとかー?とか笑われる。
……すっかり寝相悪いキャラにされてしまったけど。
多分、それは、啓介がオレを囲ったんだと理解。
立ったままの啓介を、ちろ、と見上げると、啓介はオレに向けてだけ、ニヤ、と笑ってる。
まあ分かってたけど、ああやっぱり、と思う。こういうとこ。ウマいよなー。なんか感心してしまう。
他の部活との練習場所の取り合いとか。
なんかそういうの、啓介に行かせとけば大体うまくいくって、皆言ってたっけ。うん。勝てる気はしない。
「雅己、散歩行く?」
「あ、中庭?」
「河原も星が見えて綺麗やて言うてたで」
「あ、行く行く行きたい」
立ち上がりながら言うと、啓介がふ、と笑う。
「皆も行く?」
オレの言葉に、先輩たちは全員休むって答えたけど、行くーと立ち上がる奴らも。隣の部屋に居た女子達は、皆出てきた。食べすぎたから散歩したいーとか言ってる。
結局十人位で部屋を出た。廊下を進んで、中庭に出ると、樹々が適度な光でライトアップされてて、すごく綺麗。
「わー、鯉が居るー」
鯉の居る池の周辺も綺麗になってて、なんかすごくイイなーとしゃがんで覗き込んでいると。
「落ちんなや?」
啓介が後ろから笑いながら声をかけてくる。
「押さないでよね?」
「押さなくても、なんかお前、落ちる気がして……」
苦笑いをしながら、啓介がオレの肩を掴んで押さえている。
「え、オレ、そんなアホだと思ってる?」
「んー……どうやろ。まあ……とりあえず立っとけや」
腕を引かれて、立ち上がらせてくれるのだけれど、なんだか納得いかなくて口をとがらせる。
「絶対落ちると思ってるだろ」
「そんなことはないけどな?」
クスクス笑う啓介を、むむーー、と睨んでると。
「雅己、こっちに金魚もいるぞー。鯉と金魚の餌売ってる」
なんて、声がかかる。
「それ子供がやるんじゃねえのー?」
「お前には似合うから、やれば」
「どういう意味だよー」
言いながら、声の方に向かう。後ろで啓介がクスクス笑ってる。
「餌、買うたろか?」
「え。いいの?」
「財布持ってきてないやろ」
「うん。置いてきちゃった」
「やりたそうやもんな。えーよ」
「ありがと」
ちょっとやりたかった。と思いながら、啓介を振り返ると。
啓介は、ぷ、と笑う。
「ほんま、お前は」
「ん?」
「なんでも楽しそうで。感心するわ」
「んー……そう??」
うーん、と考えてから。
「そういうとこが、好き? とか?」
くす、と笑いながら、完全冗談で、こっそりと言ったら。
「ああ、せやな」
と笑まれて、かなり恥ずかしい。
69
お気に入りに追加
1,872
あなたにおすすめの小説
コンビニごと異世界転生したフリーター、魔法学園で今日もみんなに溺愛されます
はるはう
BL
コンビニで働く渚は、ある日バイト中に奇妙なめまいに襲われる。
睡眠不足か?そう思い仕事を続けていると、さらに奇妙なことに、品出しを終えたはずの唐揚げ弁当が増えているのである。
驚いた渚は慌ててコンビニの外へ駆け出すと、そこはなんと異世界の魔法学園だった!
そしてコンビニごと異世界へ転生してしまった渚は、知らぬ間に魔法学園のコンビニ店員として働くことになってしまい・・・
フリーター男子は今日もイケメンたちに甘やかされ、異世界でもバイト三昧の日々です!
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・不定期
琥珀いろの夏 〜偽装レンアイはじめました〜
桐山アリヲ
BL
大学2年生の玉根千年は、同じ高校出身の葛西麟太郎に3年越しの片想いをしている。麟太郎は筋金入りの女好き。同性の自分に望みはないと、千年は、半ばあきらめの境地で小説家の深山悟との関係を深めていく。そんなある日、麟太郎から「女よけのために恋人のふりをしてほしい」と頼まれた千年は、断りきれず、周囲をあざむく日々を送る羽目に。不満を募らせた千年は、初めて麟太郎と大喧嘩してしまい、それをきっかけに、2人の関係は思わぬ方向へ転がりはじめる。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる