【やさしいケダモノ】-大好きな親友の告白を断れなくてOKしたら、溺愛されてほんとの恋になっていくお話-

悠里

文字の大きさ
上 下
207 / 249
第2章

「浴衣」

しおりを挟む


 そーゆーとこ好き。
 なんかたまに啓介に言われる気がする。……なんか嬉しい。
 でもオレも言ってるかもなぁ。こういうとこ、好き、とか。良く思う気がする。そんなことを思いながら、二人で大浴場を出て歩き出すと、廊下の大きな窓から中庭が見えた。

「すげー綺麗。ライトアップされてるー」
「後で行くか?」
「うん、行こー行こ―」
「食後の散歩、な」
「うん。皆も行くかな」
「聞いてみよ」
「うん」

 頷きながら、啓介を見上げる。
 ふ、と気づく。

「ん?」
「……なんか浴衣ってあんま着ない、よな」
「せやな」
「……なんかいつもと違って、見えるかも」
「ふぅん?」

 啓介は面白そうにオレを見て、クスッと笑った後。

「惚れなおす、とか? そんな感じ?」
「……べ。別に。そういうんじゃ、ないけど」
「ないけど? なんや?」

 ニヤニヤ笑う啓介に、むむ、と口を閉じてから。

「ちょっとなんか……大人っぽく見えるかも、て話」
「ふぅん……」
「Tシャツとか着てるよりっていう……そんだけだから」
「ふーん……?」

 ああ、なんか顔が、熱くなっていく。
 なんかオレ、またハズイこと、言ってるのでは。

「……大人っぽく見えて、好きなん?」
「…………っっ」

 ああもう、やっぱりそっちにつながってるのバレバレだよな。
 くー。言うんじゃなかった。

 恥ずかしさを隠したくて、ちょっと膨らんでそっぽを向いていると、啓介がクスクス笑いながら、オレの腕を掴んだ。
 優しいそれだったけど、自然と、啓介を振り仰いでしまう。

 ……あーなんか……。
 オレ、いつの間に、こんなに啓介のこと、好きになってるんだろう。

 浴衣、着てるくらいで。ちょっといつもと違う位で。
 なんか。
 ドキドキ、して。
 なんだこれ。乙女か、オレ。

「あー。あかん」

 そうつぶやいた啓介に、ぱ、と手を離される。
 ん?
 今度は不思議に思って、振り仰ぐと。

「……お前のこと、からかってる余裕はないんかも」
「??」
「……めーちゃ、可愛く見える」
「――――……」
「……首筋とか、なんや、色っぽいし」
「…………っ」

 啓介が、はー、とため息をつきながら、口元を片手で覆って、ちょっと視線をあらぬ方向に向ける。
 なんかものすごく、恥ずかしいことを言い合っているのだけど。

「……啓介、もしかして、照れてる?」
 
 自分はめちゃくちゃ照れてたのを棚上げして、聞いてみる。

「照れてるっちゅうか……あんま見てると、収まんなくなりそうでヤバい」

 そんなこと言われると、なんか、めちゃくちゃいろんなことが、頭によぎってしまう。
 自分のそれを抑えるために「……けーすけのすけべ」とからかってみたら。

「はー? ちゅーか、もとはと言えば、お前が顔赤くして見上げてきたせいやろが」
「そ、そ、そんなことしてないもんね」
 ……したかもだけど。

「したわ。……キスしてほしいなーとか思うた?」
 ちょっとうろたえたら、あっという間にまた形勢逆転。

「し、してないし」
 何で分かったんだ。
 思った。抱き付いて、抱き締められたら、なんかいつもより、肌が触れそう、とか。裸で抱き合うのとかとはちょっと違うかも。とか。なんか色々ぱーーっとよぎって、恥ずかしくなったっていうのはあるけど。

「はー。……後でどっかで二人んなれるとえーけど」
「なれないだろ」
「なれそうなとこ探そ」
「無理だろ。ていうか、そういうの我慢するって言ったじゃんー」

「せやけど……浴衣って、ヤバない?」
「……ちょっと分かるけど」
「分かるんやな」

 ぷ、と啓介が笑う。むーー!乗せられたー!と思った時。廊下の奥から、皆が歩いてきた。

「居た居たー! 食事行くぞー」
「何してんだよ、風呂長すぎだろー」

 そんな事言いながら近寄ってきた皆に、「ごめん、オレ寝てた」と言うと、皆が呆れたように笑う。

 皆に混ざって歩きながら、視線を感じて啓介を見ると。
 何人か越しに、べ、と舌を出されて、にや、と笑われる。

 あっかんべーで返して。なんか楽しくて。
 はは、と笑った。



しおりを挟む
****
読んでくださってありがとうございます♡
気に入って下さったら、お気に入り登録 & 感想など聞かせて頂けると、嬉しいです(^^)

感想 71

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...