206 / 249
第2章
「そーゆーとこ?」
しおりを挟む「あっつー……」
風呂から出て、脱衣所の隣にある、休憩室。
からかってくる先輩達となんだかんだ、長話、しすぎた。少しのぼせたような感覚。
マッサージチェアみたいな、背中をすっぽり預けられる椅子に座って、天井を仰いだ。
「きもちー……」
目を閉じてると。
隣の椅子に座った啓介が、少し笑う。
「なんやそのまま寝そうやな、お前」
「……んー。このまま寝たら気持ちーなー……」
「夕飯食べんで寝てええの?」
「それは嫌」
即答すると、啓介はクスクス笑う。
「啓介、夕飯て何?」
「バイキング」
「わー、楽しみー」
「そう言うと思た」
言われて、そこで目を開けて、隣の啓介を見つめた。
「バイキング好き、なんて言ったっけ?」
「言うてへんけど、好きそうやなーて思うて」
「あ。予想?」
「せやな」
「バイキング好きそうって、どういうイメージ?」
クスクス笑いながらそう聞くと、なんとなくな、と啓介が笑う。
「なんや、楽しんで選んでそうなイメージがあるてことやな」
「そう?」
「ん。……まあ雅己は、いつでも楽しそうやから」
「そう?」
「ん。そうやで?」
啓介がすごくのんびりした声を出してて、なんか珍しーなーと思う。
やっぱり旅っていいよね。普段とは少し違う。
「なんか、良い気分で寝たくなっちゃうかも……」
「ええよ。少しなら。起こしたるから」
「いーの?」
「ええよ」
優しい声に、なんか本気でウトウトしてくる。
きもちー……。
「あれ、雅己寝てんの?」
……要の声かな。
どーしよ。眠いな……。
「少し寝かせといてやって」
啓介の、ひそひそ声がする。
……いっか。啓介に任せて、このまま少し寝よう。
そのまま、すぅ、と寝に入った。
◇ ◇ ◇ ◇
「……み……雅己……?」
「――――……ン」
ふに、と頬をつままれて。
でも、そのまままだ起きたくなくて、ウトウトしていたら。
「――――……」
ふわ、と唇に優しい感触。
……キスされてる……。と、そこで、はっと気が付いた。
がば、と起き上がると、目の前に啓介の苦笑。
「よう寝とったな」
「……っば、か、おま……」
「へいき、今誰も居らんから」
「……っほんとに?」
「ほんまほんま」
クスクス笑われながら、周りを見ると、確かに誰も居ない。
「もうすぐバイキングの開始時間やから、今風呂入る奴おらんのやと思うで」
「あ、もう、夕食?」
「そ」
「皆は?」
「一回部屋に戻ってる。オレらも戻ろや」
「あ、うん」
頷きながら立ち上がったところで。
「今ここ、誰もいない?」
「ん? ああ、そやで? さっき最後のおっちゃん、出てったし」
一応確認してから、啓介をくいくいと引っ張って、脱衣所の端っこの方にひっぱる。
「どした?」
「けーすけ」
胸元の服を、くい、と引いて、近づいてきた啓介に、オレは、キスをした。
「――――……めずらし。どした?」
クス、と笑って、啓介がオレを見つめる。
「……んー。あの。……なんか、皆さ、知らないから、色んなこと色々言ってくるけど……」
「ん」
「皆が言うのも分かるから、なんとも思ってないし……でもって、オレ、なんだけど」
「ん」
「……皆が今更、当たり前のこと言ったからって、そんな、ぐらぐらしないから」
「――――……」
「大丈夫、だからな?」
さっきからずっと、なんとなく言っておこうと思ったことを、告げると。
啓介は、少し黙った後、ふ、と微笑んだ。
「……オレ、お前のそーゆーとこ、めっちゃ好きや」
ちゅ、と唇にキスされて、そのまま、頬や額にもキスされて、そのまま、ぎゅ、と抱き締められる。
「……そーゆーとこって……??」
「まあ……色んなとこ好きやけど。まっすぐなとこ。ほんま好き」
ちゅ、と頬にキスされて。
まっすぐ?と思いながらも、なんか嬉しくて、ふ、と笑ってしまう。
67
お気に入りに追加
1,862
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【Rain】-溺愛の攻め×ツンツン&素直じゃない受け-
悠里
BL
雨の日の静かな幸せ♡がRainのテーマです。ほっこりしたい時にぜひ♡
本編は完結済み。
この2人のなれそめを書いた番外編を、不定期で続けています(^^)
こちらは、ツンツンした素直じゃない、人間不信な類に、どうやって浩人が近づいていったか。出逢い編です♡
書き始めたら楽しくなってしまい、本編より長くなりそうです(^-^;
こんな高校時代を過ぎたら、Rainみたいになるのね♡と、楽しんで頂けたら。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる