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第2章
「もうもう」
しおりを挟む結局その後、また負けた。
……ていうか、あとから参戦してきた皆は、なんだかんだで早々に離脱して、結局オレと啓介の一騎打ちになって。
オレが外して、啓介は決めたので。啓介の勝ち。
「……明日もやるからなー」
もう疲れ果てて、体育館に大の字になって、転がったままそう言うと、見えないけど皆が笑う声が体育館に反響する。
「今日はもうやめとく?」
啓介が言うと、皆が賛成、と言ってるのが聞こえる。
「雅己」
体育館の天井を見ていたオレの視界に、啓介が入ってきた。
「立てるか?」
「んー……立てる」
言いながら、むく、と体を起こした。
「なんか啓介にはずーっと負けっぱなしな気がする」
「そーか?」
「そうだよ。くそー。悔しいなー」
言うと、啓介はクスクス笑って、手を差し出してきた。
その手を取ると、ぐい、と引いて、立ち上がらせてくれる。
「ありがと」
言いながら、少し近づいた時。
「いっつも負けとるから、こういうんはええんやない?」
ん??
オレは、耳元で囁いた啓介を振り仰いで見つめた。
「何? どういう意味?」
「まあまあ。またあとでな」
そう言った啓介の視線の先を追うと、皆がこっちに向かって歩いてきてて、なんとなく啓介を囲んで集合。
「このあとどーする?」
「食事十八時からやし、風呂済ませといた方がええかなーと」
先輩達を見ながらそう言う啓介。そうだな。じゃあ体育館片付けようぜーと先輩達が言うので、皆頷いて、バラバラと散って片付け開始。
「片付けたとこから、モップかけてやー」
啓介の指示してるのをなんとなく聞きながら、ボールを拾って片付けていると。
沙希が寄ってきて、笑った。
「啓介先輩との一騎打ち、久しぶりで楽しかったです」
「はは。楽しい?」
「はい。うちの名物って感じだったじゃないですか」
「え、そう? 名物だった?」
「はい」
クスクス笑いながら、沙希は頷いて、オレの抱えてたボールを受け取って一緒に片付けていく。
「先輩達が卒業しちゃって、ほんと寂しかったですもん」
「はは。それは、ちょっと嬉しいけど」
「なんか静かになっちゃった感が。やっぱり、啓介先輩の関西弁って、盛り上げ要素ありますよねー。でもって、雅己先輩もすぐ乗るから」
「……漫才みたいだったってこと?」
ん?と思いつつ、そう聞いたら、沙希は、えーと、と言った後。
「そうですねっ」
ニコニコ笑顔で可愛く笑って、思い切り頷く。
「そんなことしてたつもりはないんだけど」
苦笑いで答えると、「つもりがないから面白いんですよ」と言って、クスクス笑われてしまう。
「面白がられてたんだ。知らなかった」
そう言うと沙希はまたクスクス笑った。
……啓介がよく冗談言ったりしてたのは知ってるけど。
オレそれに乗ってたっけ?
ボールを片付け終えて、余ってたモップで床を掃除しながら、高校時代を思い出すけど。そういうのはあんまりよく覚えてない。
多分何も考えずに、ぽんぽん、啓介の言葉に合わせて喋ってたんだろうなあ。
うん。楽しかったことだけは、すごく覚えてる。
何言ってたかは、あんまり覚えてないけど。
覚えてなさすぎて、ちょっと笑ってしまいそうになっていると、啓介が近づいてきた。
「もうええよ、モップ。しまって来いや」
「ん、分かった」
「あ、雅己」
「ん?」
呼ばれて、振り返ると。
「風呂、一緒に行くからな?」
「……??」
オレにしか聞こえないような声で言われて、首を傾げると。
「あんま他の奴の前で真っ裸晒して歩くなや?」
「な……っ」
「分かった?」
「……っっっ……! 馬鹿!!」
叫んで、ダッシュでモップを片付けに行くと、オレの、かなり響いた「馬鹿」の声に、同じくモップを片付けてた皆が「喧嘩したの?」と笑う。
「喧嘩……じゃないけど」
もー。
啓介の馬鹿。なんかそんなの改めて言われると、恥ずかしいっつの!!
お前以外の誰も、オレの裸なんて見ないっつーの!
もうもう。ほんとに。馬鹿。
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