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第2章
「悔しいけど」
しおりを挟むボールを持ってドリブルしながら、啓介の前に立つ。
抜くか。パスするか。一瞬で考える。
……ドリブルで抜ける気がしないんだよな。ムカつく。
さっき一対一やってた時も、なかなか抜けなかったし。
だったら。パス。点を取れたらチームは勝ちになる。
そう、思うんだけど。やっぱり、自分で抜きたい。
フェイントを使って抜こうと思った瞬間。するっ、とボールが奪われた。
あ、と思った瞬間、パスされて、速攻で攻められて失点。
ちくしょー、と思うのだけれど。
今のはなんだか鮮やかにとられすぎて、ちょっとカッコイイなと思ってしまう位。
余計に燃えて、今度は絶対抜くと決めて、啓介を抜けて点を決められた時はめちゃくちゃ嬉しい。
攻めて守って、奪って奪われて。
啓介だけと戦ってた訳ではもちろんないけれど、オレの中でのメインの相手は、啓介。
啓介にこだわってたのは、昔からだなぁ。なんて、バスケすればするほど、思いだしてくる。
……啓介に告られなければ、今みたいな関係にはならず、大好きな友達のままだったと、思うけど。
大好きでこだわってたのは、昔からだ。
めちゃくちゃ必死で戦った末。
一点差、あと一本とれたら勝ち、のところでタイムアップの笛が鳴った。
「え、もうおわり?」
がーん。
あと一本だったのにー!
めちゃくちゃショックで立ち尽くしていると、啓介が笑いながら近寄ってきて、お疲れ、と肩に触れた。
「もー、すげー悔しいー」
思い切り面と向かってそう言うと、ぷ、と啓介が笑う。
「はいはい」
ぽんぽん、と肩をたたかれて、なんだか余計悔しい。
周りの皆は笑ってるし。啓介も楽しそうだけど。
オレはめちゃくちゃ悔しい。
「けーすけ、シュート勝負しようよ。スリーポイントの」
「ん? 今?」
「うん。皆もやろー。打ち続けてのサドンデスー」
「今―?」
「オレ、も―疲れたー」
皆、コートの外で飲み物を持って、座り込む。
「何もう皆、じいちゃんか!!」
何なんだよもうー!と、ツッコミ入れてると、少しして後ろから、「雅己、やろうや」と声をかけられる。振り返ると、啓介がボールをクルクル回してた。
「うん!」
啓介に駆け寄りかけたところで、「あ」と手で制される。
「なに?」
「その前に水飲んでこいや」
「啓介は?」
「も、飲んだ」
「わかったー」
言われてすぐコートから外れて水分補給をしていると、「ほんとお前ら、元気なー」と笑われる。
「オレも、もう少し休んだら、付き合いますね」
良が言うと、他も何人かそう言う。
「ていうか、良たち、現役じゃん。ちょっとなまってんじゃないの?」
「……雅己先輩たちと比べないでくださいよ。前からスタミナすごすぎだったし」
「え、そう? オレはそんなことないけど。むしろ、けいす――――……」
話してる後ろで、タンッと小気味の良いボールを突く音がして、ふ、と振り返った瞬間。
啓介が、めちゃくちゃ綺麗にシュートを放って、それがゴールに吸い込まれた。皆見てたみたいで、ワッと体育館が沸いた。
「相変わらずめちゃくちゃ綺麗ですね」
「……うん」
良の言葉に頷きながら、水筒を置いてすぐ駆けだした。
「ずるい、啓介! オレもやる!」
言うと、ゴールから落ちてきたボールを捕まえながら、オレを振り返って、おかしそうに笑う。
「ずるいって何やねん」
「だってずるいし!」
あんまり綺麗で、ずるい。
すごく綺麗なシュートを見て、死ぬほど練習したけど、結局追いつけなかった気がするし。むかつくー。
「やろ、雅己」
「絶対負けないー!」
「はいはい」
苦笑いの啓介に、詰め寄ると、ますます笑われる。
「どっちからがええ?」
「オレから!」
「おっけ」
ほら、とボールを渡される。
ボールを受け取った瞬間から、わくわくが倍増。
ああもう。
やっぱ、啓介とバスケすんの。悔しいことも多いけど、すっげー楽しい。
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