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第2章

「バスケにぶつける」

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「……今の、やっぱり無し……」
「……は?」
「今の恥ずかしいから、無しにして」

 オレの言葉に、啓介は苦笑しながら近づいてくる。
 体育館の出入り口を振り返ってから、オレの頬に触れて、出入り口に背を向ける感じで。

「――――……」

 唇が、ゆっくり、重なってきた。

「……けい」

 言いかけたオレの唇に、もう一度啓介がキスしてくる。
 でもそれも、触れてすぐに離れた。

「あー。なんか……抱きたい」
「……っっ……」

 むぎゅ、と抱き締められて、すぐにまた離される。

 抱きたいって……。
 ここ来て、まだお昼食べ終わったところなんですけど。
 どんだけだ。

「……キスの仕方がさー」
「ん?」

「……カッコつけすぎで、恥ずい」
「……はー??」

 啓介は、なんだか面白そうな顔をしながら、床に落としてたボールを拾い上げた。


「腹いっぱいで動けへんか?」
「大丈夫。オレ最後の方食べてなかったし」
「二人でやる?」
「やるやるやる!!」

「オレはもう性欲をバスケにぶつけることにする」
「うわ……」

 ほんと恥ずかしいですね、啓介さん……。
 もう、反応すると続くから、オレは、もうそうしてよ、とだけ返した。



◇ ◇ ◇ ◇


 啓介との一対一。
 ……久しぶりにやったら、めちゃくちゃ疲れた。

「タイムー……水飲みたい……」

 もーだめ、と体育館に倒れた。
 啓介も弾んだ息を抑えながら、オレの近くに来て、倒れてるオレを見下ろす。

「皆が来る前に結構動いたな」

 クスクス笑いながら、啓介は、オレに手を差し伸べてくる。
 その手を取って、立ち上がる。

 汗を、手の甲で拭いながら、オレは啓介を見上げた。めちゃくちゃ楽しかったので、笑顔になってしまう。

「啓介と一対一、すっごい楽しかったー」
「――――……」

 やっぱりオレ、啓介とバスケすんの、好きだなーと言いながら、体育倉庫に足を向ける。

「ボール片付けて、いったん水飲みにいこーよ?」
「……ああ」

 ドリブルしながら、体育倉庫に向かうと、後ろから、ドアを閉める音。
 ん? と振り返ると、啓介が引き戸のドアをぱたん、と閉め終わったところで。

「何で閉めてんの?」

 聞きながらも、体育倉庫にボールをしまってると。後からきた啓介も、自分の持ってたボールを片付けてから。

「?」

 腕を引かれて、え? と見上げたオレは、体育倉庫の壁に背を、とん、と押し付けられた。

「けい……」

 見上げると、唇が奪われて。
 さっきとは全然違って、深く重なる。舌が絡んできて、「ん」と自然と声が漏れた。

「……ン、ん……っ」

 なんか一気に本気モードのキスに、ついていけず、啓介のTシャツを握りしめた。

「……っふ…………ん……ッ……」

 息を求めて、少し引いたら、また塞がれて、後頭部押さえられて、深く重なる。


 ……性欲はバスケにぶつけたんじゃないのかようー!!
 頭ン中は、それがぐるぐる回ってる。

 
 

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