197 / 248
第2章
「見た目」
しおりを挟む「まあよう言うてるかもやけど……雅己が思うてるよりもずっと前から、オレは雅己を見てたと思うんよ」
「……ふうん」
「まあ最初の頃は、友達として、やったかもしれんけど……」
「……うん」
頷きながら、オレは啓介にボールをパスした。
「啓介もシュートして」
「ん」
啓介が何度かボールをついて、それから、ゴールに向けて、ボールを放った。すとん、と綺麗にゴール。
「……啓介のさ、シュートがカッコよかったからさ、オレ、スリーポイント、めちゃくちゃ練習したんだよ」
「そうなん?」
「言わなかったっけ? 悔しいから言わなかったのかなあ」
「聞いてへんと思う」
「そっか……」
啓介が返してきたボールを受け取って、弾ませる。
「啓介が転校してきて、初めてバスケ部に連れてった日にさ、スリーポイントのシュート、打ってみろって先輩たちに言われて、皆打ったけどさ。緊張したのもあって、皆外しちゃっててさ。オレも外して……最後に、啓介が打ったんだけど。……覚えてる?」
「覚えとらん……」
「……啓介だけが、入ったの。しかも、超綺麗なシュートでさ」
もう一度、ゴールに向けて、シュートを放つと、綺麗な弧を描いて、ゴールに吸い込まれる。
「なんか悔しくて。……だって、緊張するのとか、転校してきたばっかりの啓介が一番じゃん? なのにさ、啓介だけが入るとかさ。悔しいの分かるでしょ」
「……まあ、分かる」
「悔しいからオレ、すごく覚えてるしね。啓介は、ただ一本シュートが入っただけだし。覚えてないんだろうけどさ」
ボールを拾って、緩くドリブルしながら、啓介の近くに歩く。
「……だから、めっちゃ練習してたのは、お前のせいっていうか、お前のおかげっていうか?」
「そうやったんか」
啓介はクスクス笑って、オレを見つめる。
「そうでした~。まあ……悔しかったけど、あの頃から……カッコいいなとは、思ってたよ?」
ふふ、と笑いながらそう言うと、啓介は少し笑う。
「……てか、雅己は……」
「ん?」
「オレのこと、カッコいいとか思うてんの?」
「え?……まあ。……カッコいいは、カッコいい……でしょ」
……そういえば、そんなに言ったことはないかもだけど。
「あんま聞いた記憶ない気がする」
「そう? ……何回かは言った気がするけどなあ?」
「モテていいよなあ、とか。そんなんは聞いた記憶はあるけど」
「そうだったけ?」
ちょっと思い起こしてみるけど。
「……悔しいから言わなかったのかも。カッコイイーとか、オレがうっとりするのも変でしょ?」
「……まあ、確かに……な、雅己?」
「ん?」
「オレの見た目、好みなん?」
「え。……何その今更過ぎる質問……」
「……今更やけどあんま聞いたこと無かったから」
はは、と啓介が笑う。
「……んー……」
「……別に正直に言うてええけど」
「…………特に今は……」
「ん、今は?」
「…………啓介よりカッコいい奴居ないんじゃないかと……」
「――――……」
つい正直に言ってしまったら、え、というびっくりした顔をされて、なんか突然、めちゃくちゃ恥ずかしくなる。
49
お気に入りに追加
1,832
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる